斎藤氏四代:人天を守護し、仏想を伝えず (ミネルヴァ日本評伝選 205)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
4.17
  • (1)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 30
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623088089

作品紹介・あらすじ

長井新左衛門尉(?から1533年?)・斎藤道三(1504年から56年)・義龍(1529から61年)・龍興(1547年から73年) 美濃国の戦国大名。

僧侶から土岐氏重臣に上り詰めた長井新左衛門尉。下剋上により美濃国主となった斎藤道三。父親を倒して国威を増した義龍。織田信長の攻勢により敗れた龍興。稲葉山城を舞台に勃興し没落していった四代の軌跡を描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 義龍後室と濃姫の話が印象深い。信長に壺を召し上げられそうになった義龍後室が「無くした。取り調べを受けるぐらいなら死ぬ」と言い出し、濃姫やその兄弟も後に続くと大騒ぎ。流石の信長も妻らにここまで迫られたら、ギブアップ。
    「斎藤義龍」「斎藤龍興」に関してはその名で呼ばれた事がないのが意外であった。信長との対比(龍興はそれに加え竹中半兵衛との対比も)で評価が低い義龍であるが、独力で政権運営していた父と違い、六人衆を用い安定した政権を作り上げた。それだけに早死が痛い。

  • 美濃の戦国大名斎藤氏の評伝。従来の評価を一旦置き、信頼性の高い史料により勃興から滅亡までの実像を検討する内容。代ごとの事績や近世以降の評価との相違が分かりやすく整理されており、同氏の理解を助ける良書だと思う。

  • 天野忠幸「三好一族」(中公新書)の参考文献にあげられていたことから手に取り。国盗り物語のまむしの道三のイメージから離れて、史料を仔細にながめると、最後の戦い以外はほとんど勝ってきた戦上手、統治機構は未整備、嫡子義龍への評価を見誤り、その弟たちを偏愛するが、最後の戦いで見せた義龍の隙のない采配ぶりを素直に称賛するなど、人間くさい面も見られ、下克上といっても父と二代にわたるもので、策謀渦巻く野心家というよりは、有力家臣が転がり込んできた好機にそって主君を追い出しただけ、とも言えるのではと。義龍については、周辺諸大名や幕府、朝廷に働きかける外交手腕、六人の重臣に合議で運営させる統治機構の精緻さ、信長の侵攻に対し、逆に調略、謀略でかなりの度合いのダメージを与えたことなど、かなり有能な面がうかがえる。ただ最晩年の宗教政策の失敗と、下克上上等の当時でも父子相克で父を討ったという例はめずらしく(追放・隠居へ追い込む等はあっても)、かなりのマイナスイメージを負ったことは足かせになったのでは。龍興に関しても、若年なのに、父と重臣2人を失った直後でも信長の侵攻をふせぎ、その後6-7年美濃の国主の座をまもったのは評価に値するのでは。政務を放棄し、遊蕩にふけったというが、政務は義龍の遺産で重臣たちが運営したとも言えるし、連年の信長の侵攻によるなか遊蕩する余裕などあったのか、と。ただ、後年、8か月にわたり竹中半兵衛、その義父稲葉一鉄に本城稲葉山を占領されたことは、美濃国内に「頼りない国主」像を広め、のちに次々と離反される要因になったのでは、と。「斎藤義龍」「斎藤龍興」はいなかった、という論点も興味深く。本人が家格の上昇をめざして、幕府公認で改姓したり、何らかの思いをこめて改名ても、敵対する信長側の史書や書状では、蔑視してみとめず、変わらず「斎藤」と呼び続けたことで、後年「斎藤義龍」「斎藤龍興」という呼び名が残ったと。四代について、新たに得た知見やイメージの更新があり非常に興味深いといった思いを抱く。

  •  戦国時代を象徴する美濃の斎藤氏四代の勃興から没落をたんねんに調べて描いた書である。巷間知られた話は正誤さまざまで、この本で初めて知った話が多くあるし、それによって今までの印象が大きく変わったこともある。
     一国の大名に成り上がったのは道三ひとりの仕事ではなく父親と2代で成し遂げたとか、その子の斎藤高政は一色義龍へ名前を変えていて自分で斎藤義龍と名乗ったことはないとか、側近6人衆に政務を補佐させる制度を採用したとか、快川和尚が美濃にいて宗教政策でもめたとか、竜興の美濃を落ち延びたその後とか、などなどである。
     研究者による最新の研究結果は、本当におもしろい。

  • これまでのイメージをかなり変えてくれる話ばかり。それにしても、敗者の歴史はこうも「謎」に包まれてしまうものなのか。

  • 東2法経図・6F開架:289/Mi43/205/K

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1976年生まれ。2007年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部日本史学研究室助教。博士(文学)。著書:『中世武家官位の研究』吉川弘文館、2011ほか

「2023年 『戦国遺文 土岐・斎藤氏編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木下聡の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×