田中角栄:同心円でいこう (ミネルヴァ日本評伝選)

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623084258

作品紹介・あらすじ

日中国交正常化や日本列島改造論などの政策への再評価が進む一方、ロッキード事件等で金権政治の権化とも批判される。昭和という時代を駆け抜けた田中が目指した政治とは何だったのか。本書は、田中政治の軌跡を辿りながら、戦後民主主義を再考する。

感想・レビュー・書評

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  • 田中角栄評伝の中では出色ではないか。
    生い立ちと、その後の人生への影響、選挙の強さとその背景、出世と総裁選、金脈問題、選挙での敗北と退陣、ロッキード事件、派閥拡大と闇将軍、派閥を乗っ取られて、落日、死去、後継者達の顛末、その後の政界
    様々なエピソードとともに角栄とは何だったのか?の考察としては一級。

  • 【新着図書ピックアップ!】元総理大臣(1972年~1974年)。〈日本列島改造論〉を唱え、〈コンピューター付きブルドーザー〉と云われた実行力を発揮したが、〈金権政治〉を追及されて辞職に追い込まれた。その後、〈ロッキード事件〉で逮捕されるも〈闇将軍〉として政界に大きな影響力を持ち続ける。こんな人物の伝記です。面白くない訳がない。

    【New Book!】Kakuei Tanaka was a prime minister from 1972 to 1974. He proposed the Plan for remodeling the Japanese Archipelago during his administration but forced to resign due to a political scandal.
    This book tells the origin of his nickname “computerized bulldozer” or “the shadow Shogun.”

  • 田中角栄の評伝。
    作者が新川敏光先生というのが、また面白い。
    田中角栄の独創性は、いままで政策として考えられはしてきたがそれを実現させたという点で非常に独創的。

    しかし、同心円でいこうとあるように、あくまでも同心円の中心であった。

  •  
    ── 新川 敏光《田中 角栄:同心円でいこう 20180912 ミネルヴァ書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4623084256
     
    ── 米倉 誠一郎《松下 幸之助:きみならできる、必ずできる 20180912 ミネルヴァ書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4623084264
     
    (ミネルヴァ日本評伝選)
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20181007
     夜に鳴く鳥 ~ ミネルヴァのこうもり ~
     
    (20181014)
     

  • 田中角栄についてはたくさんの本があるが、好意的だが中立的にうまくまとめられている。特に興隆期の地元の政治基盤の作り方、政策構想が面白い。戦前のエリートの福田と対比して、生活重視からの日本改造論というのは注目すべき視点。自らの生活の守護者だから、庶民からの支持が強いのか。

    本筋ではないが三木や福田、大平との関わり、そして後藤田や金丸、二階堂との絡みも角栄が衰退の中で、面白く読めた。

    疑問なのは総理になってからの急激な能力の低下だが、秀吉と同じく目標達成して弛緩したのか。
    むしろ先に福田赳夫が総理になっていたほうが角栄にも日本にも良かったのかもしれない。

  • 現在、田中角栄に関する本は多く出版されており、空前の角栄ブームと言って良い。日本型政治の元凶として非難され続けた角栄を今では多くの人が称賛し、もはや神格化の領域にまで達している。本書では、田中角栄を通して、戦後民主主義とは何だったのかを改めて問い直されている。

    第2章から第5章までは、角栄が初当選から総理に駆け上がる姿が描かれている。角栄の政治家としての能力の全盛期は、高度成長期に、郵政、大蔵、通産大臣と党三役を務めていた時期だ。岸内閣では郵政大臣として初入閣した。この時にテレビ放送免許の大量発行に踏み切り、後の民放の基礎を築いている。池田内閣下では大蔵大臣として入閣、ガリオア・エロア資金の返済問題を解決した。また65年には、山一証券に対していち早く日銀特融を成立させて、証券不況を短期間で終結させている。佐藤内閣では、当時の日米繊維摩擦問題を解決した。さまざまな政治問題を解決するなかで、角栄は敢えて各省の課長補佐級や若手官僚といった将来の幹部候補生に教えを請い、各省内に強力なネットワークを築いたという。さすが戦後最大の人たらしの政治家といったところか。

    若手政治家のホープとして大活躍していた時期と比べて、総理大臣としてあまりぱっとしないのが実情だ。日中国交正常化という大仕事は成し遂げたが、目玉である「日本列島改造論」は石油危機によるインフレ亢進で実行する前に頓挫してしまった。第6章では、辞任後に「目白の闇将軍」として、政界で暗躍する姿が描かれている。この章では中曽根康弘と金丸信にスポットが当てられている。田中、中曽根、金丸を通して70年後半から80年代後半までの日本政治が生き生きと書かれており、面白かった。

    本書の白眉は、角栄伝説に関して検証が行われている第七章だ。今日の悲劇の人としての田中角栄像を創り上げたのは、秘書だった早坂茂三である。早坂は、しばしば誇張や歪曲を加えながら、田中角栄という政治家を魅力溢れる人物として描いた。早坂の創り上げた田中伝説は、その他の秘書、かつての番記者たちなどによる角栄本によって補強され、世間に定着するようになったようである。(P.218~P.220) 資源外交によりアメリカの逆鱗に触れ、ロッキード事件によって角栄が失脚したとするロッキード謀略説は田原総一朗が76年に中央公論に載せた論考が元ネタだ。田原の論考は、角栄の子飼いだった渡部恒三や小長啓一からの聞き取りの結果であり、角栄側が意図的に流したものとも考えられるようである。(P.230-231) 資源外交に関しては、決して角栄が独走したわけでなく、閣内で一致した考えであった。中曽根もアラブ寄りの姿勢を鮮明にしており、石油危機の後にはアラビア石油社長の水野惣平にファイサル国王への親書を託すなど、積極的に原油確保に関わっている。(P.141)  本書では、謀略で田中を追い落としたとすれば、アメリカはなぜ田中が闇将軍として君臨することを許したのかと疑問が投げかけられており、もっともな話である。

    本書の文体はややジャーナリスティックだが読みやすい。文体が「危機の宰相」を書いた沢木耕太郎に似ており、沢木からかなり影響を受けていると思われる。本書は、番記者だった早野透の角栄の評伝と違い、田中角栄という人物の魔力に取り込まれることなく、適度な距離感が保たれて書かれた評伝であり、田中角栄を知る最初の一冊としてオススメである。

  • 東2法経図・6F開架 289/Mi43/186/K

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著者プロフィール

2022年11月現在
法政大学法学部教授,京都大学名誉教授

「2022年 『政治学 概念・理論・歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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