生理用品の社会史: タブーから一大ビジネスへ

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623066919

感想・レビュー・書評

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  • この本を通勤電車で読もうとすると、「日本では生理用品を話題にすることがタブー視されていた」という話が、すごくよくわかります。実感です。
    もう何十年も有経女性としてキャリアを積んでますが、有経女性という言葉も知りませんでした。そして知らない(写真を見ても使い方がわからない)生理用品が紹介されていて、今更ながら情報の少なさを実感しました。
    テレビCMは派手に流れるようになったけど、もっと他に知らされていないことがあるよーと、有経女性に呼び掛けたい気持ちです。

  • いままで知りたかったことがやっと明確になった貴重な本です。アンネ社の功績は素晴らしいです。広告も斬新で生理のイメージがガラッと変わりました。女性の社会進出やいつでもやりたいことができると言う女性に自信を持たせてくれる手助けをしてくれたんだなあと強く感じました。
    多くの方々に読んでもらいたい一冊です。

  • 田中ひかる『生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ』ミネルヴァ書房、読了。古代から現代まで…経血処置の社会史を概観する。類書が少ないから貴重な一冊。生理回数もその社会の外的規範に規定されるから回数も異なることに驚く。http://www.minervashobo.co.jp/book/b115592.html

    副題「タブーから一大ビジネスへ」の通り本書の星は使い捨てナプキンの登場だ女性の社会進出を後押しするだけでなく、普及は生理用品を最高水準に高めることになった。医学史として貴重な記録であることに留まらず創意工夫の記録としても読み応えがある

    先日、使い捨てナプキンを介助することがあったので手に取った。「まじかよ」と思ったことが少し恥ずかしくなる訳ですが、次は、村上靖彦『摘便とお花見 看護の語りの現象学』を紐解くことにします。メルロ=ポンティと看護に関して示唆をうけたので https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=86144

  • 自らのための備忘録

     私は若い頃から「経血の処理方法」について興味があり、祖母やそのまた昔の女性はアンネナプキンもない時代にどのように毎月の経血を処理してきたのだろうかと常々疑問に思っていました。たまたま見かけたので、図書館で検索して借りました。
     本書を読みながら、私もこういう研究がしたかった、研究者としての人生を歩みたかったと思いました。若い頃には、研究者として生きていく生き方があるなんて思いもよらないことでした。しかし「あとがき」を読んで、私は著者よりひとまわりほど年齢が上なので、若い時に研究者の道を選んでいたら、明治生まれのおばあさん達に聞き取り調査できたのにと悔やむ思いです。大正時代や、特に物のない戦中戦後はどうなさっていたのか聞くことができたのにと思いました。

     本書は、私の興味ど真ん中なのですが、残念ながら、案の定「推定される」ことばかりで、しかもこれは私が「推測していた」こととほぼ変わりないということがわかりました。それでも研究者が、古事記や魏志倭人伝まで当たって調べてくれたお陰で、民衆史というのは、権力者の歴史と違って、毎月の経血処理についても殆ど一切の文献がないことを改めて確認させられました。それはそれで貴重なことです。

     女性の穢れ、不浄について参考になる書物がいくつか紹介されています。特に次の2冊は是非読んでみたいと思いました。
    ◇ 成清弘和『女性の穢れの歴史』塙書房2003年
    ◇ 宮本登『ケガレの民俗誌——差別の文化的要因』人文書院1996年
     また、アンネナプキンのスタートアップ期の興味深い書物もあります。
    ◇ 渡紀彦『アンネナプキン課長』日本事務能率協会1963年(都立多摩図書館にあることを発見!)
    ◇ 片柳忠男『アンネの秘密——考えるとき成功がはじまる』オリオン社1964年

     それにしても、アンネ株式会社設立の経緯に、私は胸打たれました。本当に感銘を受けました。それまで「月経小屋」に閉じ込められたり、「月の穢れ」「血の穢れ」と、食事も家の外で取らねばならず、《このように軒下や玄関先で食事をしている彼女達の前を、小学校から帰る子供達が通っていく。その子供達には経血を不浄と見なす言説が自然と浸透しており、特に男児は、指を差したり、蔑んだ言葉を投げて通っていくのである》(p.81)というような時代を変えた功績は、言葉にできないほど大きいものでした。
     初代社長の坂井泰子、夫の秀彌、ミツミ電機社長の森部一、元産経新聞社の広告部員だった初代PR課長だった渡紀彦。できるものならば、おひとりおひとりを訪ねて行ってお礼を言いたいほどです。皆様のおかげで、《長い間月経に付されてきた「恥ずべきもの」「隠すべきもの」というネガティブなイメージ》(p.152)が払拭されたのです。おかげで、1959年生まれの私は、随分と生きやすい日々を送ることができました。私は、小学生の頃、小田急線に乗って小田原に向かって走っていると、伊勢原辺りにアンネの大きな工場と看板があったことをよく覚えてます。
     それでも月経へのタブー視感は、私が生理用品を使っていた1970年代から2010年頃までもまだまだ残っていました。そもそも「タブー」という言葉の語源は、18世紀後半にキャプテン・クックが訪れたポリネシア語で「月経」を意味するtabu or tapuだったと本書で初めて知りました(p.55)。
     本書には、渡辺圭が1980年に書いた「生理用品国際比較」という記事によればフランスには大正時代(1912〜26年)から「レンタルナプキン」という制度があり、それは「業者から定期的に送られてくるナプキン(布ナプキン)を必要に応じて使い、それらを汚れたままためておき、月経が終ったら油紙にくるんで送り返す」というサービスが紹介されています。(p.227) 著者は、日本では「生理は不浄で、人に見せるべきものでもないものを、業者に託すなどという発想が浮かぶはずもない」と述べていますが、私自身、1990年代にドイツ人の同僚と初対面の時に、トイレに案内したら「お待たせしてごめんなさい。今日は月経の2日目だからちょっと時間がかかっちゃったわ」と言われ、日本人同士では、よほど親しい友人でもこういう会話はしないと思った記憶があります。

     生理用品のCMについても興味深く読みました。市販の生理用品史と自分の人生が重なる世代ですが、CMの話題に笑福亭鶴瓶が触れられていなかったことには意外な感じがありました。男性を初めて起用したCMは当時大いに話題になりました。

     全体を通じて大変興味深く、面白く読みました。またとても刺激を受けました。

  • タブー視されるようになる前の時代からの考察。
    私の世代ではタブーというよりは不浄視の方が近いか。
    生理的な現象ではあるが、やはり他の人の目につかせないようにとは思ってしまう。気づかせない、口にしないというところまではいかないので、タブーとは違うし、完全な不浄視ともいえないかもしれない。過渡期かもしれない。
    最後の方で触れられていた、月経カップはこれから経産婦中心にメインになっていく可能性はあるのではないかと思う。


  • 勉強になりました。

    洗濯物日光NG 物置に干す

    フランスのレンタルナプキン
    月経吸引法ー唯一の中絶法な地域も

    アンネナプキン文具店NG PTA苦情
    ユニチャーム スーパーで売る

    月経小屋 一部地域、戦後ー1970頃まで続いていた
     家の外で食べるが食事は作る
     子供に蔑まれる
     生理中の人に話しかけられるのタブー?
     月経期間中の労働軽減はなし
      舟を使えないため(海の神)、山越え

  • 身体

  • とても面白かった。忌屋みたいな小屋に集められていた時代があったというのと,お馬さんをあてていた時代があったのは知っていたけれど,今の使い捨てナプキンがいつ頃からのものなのかとかは全然知らなかったので,一通りの歴史・事情が網羅されていて,読んでいていろいろな事情がわかってきたし,とても面白かった。
    リンクを貼ったレビューでも書かれていたけれども,もしこれ関係の他の本を出してる人がいるのだとしても,そこまでは読まなくてもこの本で十分だな,と思った。一通りの歴史・事情が網羅されていることはもちろんのこと,布ナプキンと使い捨てナプキンをめぐる様々な立場に対して,どれかに偏る,というわけではなく,あくまでもそれぞれをまとめる立場から書かれていたので。

  • 生理がタブーとされている歴史、生理の女性が隔離されている話など生理そのものの話も、アンネナプキンが現代の生理用品の原型であったこと、そのアンネナプキンを作るまでの話も面白かった。

    社長が発明センターなるものを作り、脱脂綿が流れないようにするためにトイレに張るネットの発明からナプキンを作るまでの過程の話も面白かった。また広告や開発のために男性社員自らゴム引きをつけて生活してみたりなど、問題解決のために自分がまず体験してみるなど徹底した仕事への姿勢は真面目であり、時に変態でもあると感じた。またユニチャームの社長が自らライバル会社であるアンネナプキンの向上に来た話も面白かった。

    また使い捨てナプキンのゴミ処理による環境問題、布ナプキンの効用について疑問を呈している点も良かったです。

  • 面白かった。先人の大変さとアンネ社の功績の素晴らしさがよくわかった。アンネ社その後のところで最大の功労者に向けられた言葉に少しがっかり。成功した人を揶揄するところ、日本にはあるのかも。

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著者プロフィール

田中ひかる(たなか・ひかる)
1965 年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。明治大学法学部教授。著書に『ドイツ・アナーキズムの成立――『フライハイト』派とその思想』(御茶の水書房、2002 年)、編著書に『社会運動のグローバル・ヒストリー――共鳴する人と思想』(ミネルヴァ書房、2018年)、『アナキズムを読む――〈自由〉を生きるためのブックガイド』(皓星社、2021 年)など。

「2023年 『社会運動のグローバルな拡散』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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