イエスの意味はイエス、それから…

  • みすず書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622089469

作品紹介・あらすじ

暴力と、暴力があったことを黙らせる力は一緒になっている。セクハラの被害にあったとき、その場で何も言えなくさせ、その後に沈黙させ、言えば非難にさらされる、その力はどう働いているのだろう。私たちはなぜ「たいしたことではない」と、その場を丸くおさめてしまうのだろう。#metooで語られた多くの声は、変化するための新たな知覚をみせてくれる。私たちのものの見方、言葉、その共有のしかたを考え、小さな声で世界を変えていくエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • Carolin Emcke, Publicist
    https://carolin-emcke.de/en/

    イエスの意味はイエス、それから… | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08946/

  • 旧西ドイツに生まれた著者、カロリン・エムケは、日本ではまだメジャーではないジャーナリストだ。
    現在は議論の場を設けたり、幅広いテーマで著作活動を行なっており、精力的な活動を行なっているという。
    彼女、そして本書に出会えたことは、大変良い出会いであった。

    日々、私には何ができるのだろう、とか、なんとなくの違和感とか、不快とは言えないけれど、モヤっとすることがある。
    それは会社での会話だったり、新聞の投書だったり色々なのだが、こんなことが一例としてあげられる。
    ある日の新聞のオピニオン欄で、女性の生理用品を買えないことについて、識者や読者の意見が載っていた。
    読者である年配の男性は、たかが数百円のものが買えないなんておかしい、生活を見直せ、という意見を述べた。
    その意見は、この事を矮小化しているように感じた。
    そんな意見を読んで感じたモヤモヤを、本書の一節が私の思いを端的に言い表した。
    「他者の体験に耳を傾けること。彼らの話を、自身では一度も体験したことがないというだけの理由で、即座に「あり得ない」と否定しないこと。」(62~63頁)
    例の投書の男性を責めるつもりはないが、どうか即座に否定せず、想像力と、聴く姿勢は持って欲しい。

    著者はこうも述べる。
    「多様な関係性を常に自覚」することを大切にし(68頁)、「尊重は、誰にも与えられてしかるべきもの」(91頁)だと。
    私たちは互いに尊重しあい、自分自身の事も尊重していい。
    誰かの価値観で自分を縛らなくていい。
    私の価値をなぜ、他人が決めるのか?
    相手の思い込みで「私」を取るに足らないもの、なんて思う必要はないのだ。

    じわりじわりと響いてくる著者の言葉は、地下水脈のように私を潤す。

  • 東2法経図・6F開架:367.9A/E52i//K

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1967年生まれ。ロンドン、フランクフルト、ハーヴァードの各大学にて哲学、政治、歴史を専攻。哲学博士。『シュピーゲル』『ツァイト』の記者として、世界各地の紛争地を取材。2014年よりフリージャーナリストとして多方面で活躍。著書に『憎しみに抗って』『なぜならそれは言葉にできるから』『イエスの意味はイエス、それから…』(以上みすず書房)、『Stumme Gewalt(もの言わぬ暴力)』『Wie wir begehren(わたしたちの欲望のあり方)』ほか多数。『メディウム・マガジン』にて2010年年間最優秀ジャーナリストに選ばれたほか、レッシング賞(2015年)、ドイツ図書流通連盟平和賞(2016年)をはじめ受賞多数。

「2020年 『イエスの意味はイエス、それから…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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