- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622089001
作品紹介・あらすじ
障害をもつ人びとを、精神科病棟のベッドから、医師や看護師のコントロール下から地域の中に戻すこと。グループホームで生活することで自分たちの苦労を取り戻し、そのことが、町も、健常者の側も、そして精神科医療そのものも変えてゆくこと……「治したくない」医師と「治りませんように」と願う当事者たちが織りなす浦河の四季。べてるの家の、さらにその先へ歩き出す。最新ルポルタージュ。
感想・レビュー・書評
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北海道の浦河でひがし町診療所を運営する川村敏明先生が、精神科の患者にどのように対応しているかを克明に記述した本だが、出てくるエピソードが全てユニークで非常に考えさせられた.所謂、統合失調症の患者が入院しないで普通の生活を営めるように支援することを実践しているのだが、医者とスタッフの連携が素晴らしく、余裕を持って対応して環境を維持しているのが特筆ものだ.様々な症状が出る患者を薬で抑えるのではなく、人間として対応することで自尊心を復活させるものだと理解した.大変なことだが、それを続けていることは敬服に値すると思う.
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「くらしと教育をつなぐ We」2022年12・1月号の「日々、手話、楽し。」という明晴学園の事務職員で手話通訳者で学園の写真を撮っている清水愛さんのインタビューを読んだ→この学園の校長だった斉藤道雄さんというジャーナリストを知った→著作を読みたいなと思った
北海道の浦河というところで、日赤病院の精神科医だった川村敏明先生が開いた小さな診療所の記録。 -
何が普通で 何がそうでないのか
何が健常で 何がそうでないのか
斉藤道雄さんの本を読むたびに
深く考えさせられる
「べてるの家」に関する著作の時にも
たっぷり考えさせてもらいましたが、
今回は そのより発展した形での
「今」ということで
より思考をほぐしてもらえた気がします
「治したくない」
よくも 名付けたり
見事な 書名ですね -
2階書架 : WM075/SAI : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410168791
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みすず書房
斉藤道雄 「治したくない」
総合失調症患者を 薬やベットから解放し、医療から生活ケアに 治療の重点を置いた「ひがし町診療所」のドキュメンタリー
「診療所の日々のありようは〜答えはない けれど 意味はある」という言葉から、治らない病気に向き合う無力感、そんな中で自分が何を求められているのか問い続ける探究心が 伝わってくる
当事者研究(患者が自分の病気を見直そうとする試み)としての様々なミーティングは 、解決を求めるのでなく、語る場を設け、たっぷりムダな話をしながら、まわり道と脱線を重ねて、少しずつ改善していく様子が読みとれる
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読む前の書名からのイメージ。治ったら診療所を出ていくからそうしたくない。
読んだら違った。
治すことを目標にしなくなった、と書いたら誤解だろうか。
先生やスタッフの方の具体的な対応も学べるが、方向性や心の持ちようが印象に残った。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50202195
精神科疾患を有する方が地域で生活するための支援やあり方について参考になります。 -
おもに医療やコミュニティのお話なのだけど、哲学や芸術のこととしても読むことができる。「社会/個人」などといった二項対立の間にある「/」についてもっと考えていこうぜっていう提言。とても良い本。
ただ、これはこれとして非常に存在意義のある本なのだけれど、ひがし町診療所の取り組みをもう少し簡便に伝えるような本もあればなおよいかと。 -
「べてるの家」について書いてきた著者であるが、これまでは当事者と彼らを支える向谷地さんの話が主であった。今回は、浦河日赤精神科がなくなり、「ひがし町診療所」が立ち上がり、そこでの経緯ややり取りを通じて、川村医師の人となりを伝え、精神障害者が地域でいかに生きているかを述べられた本である。今回は川村医師と彼を取り巻く当事者とスタッフのやり取りが中心であるが、当事者と援助者だけでの関係ではなく、ヒトとヒトがいかに関わっていくかを考えていくのにたくさんのヒントが詰まった本である。そのヒントの文として、「『しっかりしてない』たくさんの人たちがかかわるという援助のあり方は、じつは地域を作る上での核となる考え方ではないだろうか」「考えながら問題を引き受け、その時々に右往左往しつつさらに考え悩むとき、私達は自分自身の苦労を担い、自分自身の生き方を取り戻すことになるからだ」「なぜ失敗し、なぜ自分にはできないのかと悩みなげくとき、そしてまたその悩みを仲間とともに語るとき、そこには再生の契機がある」など。最後の章は、「出会い」。オープンダイアログ(OD)との共通性も感じるし、現在、当事者研究はODとも共同している。
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