アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622087755

作品紹介・あらすじ

中国ではいまや生活のあらゆるシーンにモバイル決済が浸透している。「アリペイ」を開けば、オン/オフラインの決済はもちろん、診察予約や海外ショッピングの税還付までスマホ1つでできてしまう。このアリペイを運営するのがアント・フィナンシャルだ。本書では、その発展を決済、資産運用、小口融資、信用評価等のサービスを解析することで辿り、アントの掲げる「インクルーシブ・ファイナンス」というヴィジョンの把握を試みる。

感想・レビュー・書評

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  • 難読書 やっと一読できました 見慣れない中国企業名、わかったようでわかっていなかった金融用語、そして、IT用語。加えて、箇条書きの改行をとって一文につめこんだような、凝縮された各ページ。要所で、用語を調べるために、何度もスマホに打ち込んでいました。

    恐るべき中国金融のテックフィン(アリババはフィンテックではないと言っている)、日本の金融システムとは異質だが、解放感がある。

    要点
    ・アントフィナンシャルは、アリババの金融部門ではなく、金融プラットフォームである
    ・アリババは、既存の金融機関とはすみわけをする。(これをインクルーシブ・ファイナンスといっています)
    ・既存の金融機関が上記20%を対象とするならば、インクルーシブ・ファイナンスは、のこりの80%を対象とする。だからアント⇒蟻。ロングテールで稼ぐ。

    スマホ決済、しかもスマホカメラで対応できる安価なQRコードを使う

    信用市場がなかった中国に新しいマーケットを作った。裁判所での対応も与信に組み込んでいる。

    ・アリペイ 決済
    ・余額宝  資産運用
    ・保険
    ・花唄、仮唄 マイクロクレジット
    ・芝麻信用 信用情報

    膨大なビッグデータと、AIを背景に金融クラウド
    セキュリティ(生体認証)、リスク管理(個人ごとに金融商品の金額を算定)

    DX:単なる言葉ではなく、たくさんの入力項目を必要とする金融商品の申し込みを、口座名とパスワードだけで実現
    融資は、4分で完結
    すぐ借りられて、すぐ返せるしくみ 等

    目次は以下

    はじめに

    第1部 ゲームチェンジャー・アリペイ
     第1章 アリペイの誕生
     第2章 アリペイの野心

    第2部 アリが夢見るインクルーシブファイナンス
     第3章 余額宝がもたらす資産運用革命
     第4章 インターネット時代の零細企業融資
     第5章 信用を財産に

    第3部 金融の勢力図を塗り替える
     第6章 1匹のアリが作る新金融エコシステム
     第7章 グローバルな発展の未来図
     第8章 農村金融の荒野を開墾する
     第9章 オープンプラットフォーム

    あとがき

  • まず書籍としての品質が高い。調査して、正しく書籍として書かれている印象を受ける。アメリカのバスワード一発なワイヤードな感じの書籍より数倍情報量があり、読み応えがある。また、途中のエピソードで、squareに学びに行って学びが何もなかったと言うものがあるけれど、その通り、ファイナンス分野で、グラミンのように包摂的で、その上でテクノロジーに結びつき、明らかに世界の最先端を走っている企業の話としてよく書かれている。プラットフォーム企業としてのあり方も、アメリカの先行企業に対して一つレベルの高い哲学を持っているように感じられる。中国だから、と言うことで、多分政府に情報を全て持って行かれているだろうと言うような印象操作だけでこの企業の物語を見逃すと大変まずい。まあ実際にどうなのか?はわからないけれど。

  • 結構、ボリューミーな一冊。アントの中核事業である信用部門のビジョン・ミッションが「信用の空白を埋めるということが芝間信用の役割」であることが良く分か。同社が個人情報保護のSIOも取得していたことを知らなかった。意味不明な理由で中国叩きをする人にこうしたChina Digitalの側面を知ってほしい。

  • アリババグループが率いるアント・フィナンシャルの事業については、信用評価サービス「ジーマ・クレジット」が取りざたされることが多い。しかし、最初期の金融サービスである決済の「アリペイ」を始めとして、様々な金融領域に拡大した彼らの事業について、なかなか全貌をつかむのは難しい。本書は、北京大学のデジタル金融研究センターに所属する研究者集団によるアント・フィナンシャルの新金融エコシステムについてまとめた論考集であり、恐らく日本語で読める類書の中では、既に多くの評者が指摘しているように最高の一冊である。

    高い経済成長を誇っているとはいえ、都市部と農村の経済格差が大きい中国においては、全ての国民が等しく金融サービスへのアクセスを持てているわけではない。そうした環境下で、融資や投資などの金融サービスを等しく全てのユーザに対して提供するアント・フィナンシャルの事業は、いわゆるファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)の典型例として理解することができる。特にその一例として脅威深かったのは地方における農業従事者をターゲットとしたサプライチェーンファイナンスや融資などの一連の金融サービスである。日本においても、農業ビジネスの大規模化・高度化を図るにあたって金融×農業の意味合いは非常に大きいのではないかという仮説を考えていた自身にとって、その仮説を既にビジネスとして成立させている中国の取組は極めて示唆深かった。

  • 小樽商科大学附属図書館蔵書検索OPAC
    https://webopac.ih.otaru-uc.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB10293465

    「財布を持たずに外出」を中国人の新たな習慣とさせたアントフィナンシャル。アリペイは銀行に取って代わるのだろうか?アントフィナンシャルのサービスや、そこに至るまでの背景や経緯が書かれている本。

  • おそらく世界一のFintech企業であるアントフィナンシャル(アリババの金融関連会社)躍進の秘密。ビジネスモデルやスピード感がすごいことは当たり前ですが、日本のようにすでにいろいろな仕組みができている国よりも、未発達な国の方が強力なプラットフォームが生まれやすいんだなと思いました。まさにLeapFrogですね。
    続きはこちら↓
    https://flying-bookjunkie.blogspot.com/2020/11/blog-post_7.html
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  • アリババ集団について、学べる

  • アリババの決済部門を担うアントフィナンシャルの立ち上げから現在に至るまでを詳細に解説した本。

    独身の日における凄まじい量の決済データをクリアするため、OSやデータベースソフトまで自前で作り出してしまうパワーは今の日本企業に無いものです。

    企業が歩んできた事実を中核メンバー1人ひとりの個性も絡めて著しているので、迫力のある企業小説のように読むことができます。

  • 「アマゾン銀行が誕生する日」関連本。

  • 技術後進国がイノベーションによって一気に技術立国になることがある。レガシーのジレンマがなく最新技術をフル活用できるからだ。アントフィナンシャルの躍進はまさにそれであろう。本書で描かれる蟻たちの集合体は世界最先端の金融エコシステムであり、農村金融のようにテクノロジーで裾野まで拾い上げる様はこれまで金融が挑戦して成し得なかった領域をも開拓しつつある。

    中国というとどうしても国家統制の計画経済を思い描いてしまい、アリババもアントも膨大な中国内需があるから成長できており国家擁護のもと成長した企業と勝手に思っていたが、本書で描かれるアントは規制と果敢に向かい合いユーザーファーストで泥臭くトライ&エラーを繰り返すスタートアップそのものだ。彼女らの凄まじいアジャイルに驚かされる。

    IT/AIの業界ではシリコンバレーではなく深圳のほうが進んでいる領域が幾つもあるが、金融もそのうちのひとつだろう。TechFin企業としてのアントフィナンシャルの凄さはもとより、米国が中国を恐れる理由、中国の底力を理解できる良著である。

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著者プロフィール

中国金融40人論壇(CF40)編集部主任。北京大学文学学士、経済学学士、中国人民大学経済学修士。CF40の成果の報告・発表および内部刊行物、書籍、ウェブサイト、ニューメディア等の編集業務を担当。著書『アントフィナンシャル』(共著、永井麻生子訳、みすず書房、2019)。

「2019年 『アントフィナンシャル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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