生存する意識――植物状態の患者と対話する

  • みすず書房
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622087359

作品紹介・あらすじ

“バスタイムにこの本を読み始め、三時間後、すっかり冷たくなった風呂水の中で読み終わった。……宇宙に放り出された宇宙飛行士よりも他人と深く隔絶された人々とオーウェンとのコミュニケーションにあまりにも引き込まれ、バスタブから出られなかった。”
──クリストフ・コッホ(神経科学者)【原著書評より】

■「植物状態」と診断された患者たちが、fMRIを通じた問いかけにYesとNoで答えた──意識があるかないかの二分法では捉えきれない「グレイ・ゾーン」の意識を探る、緊迫の脳研究レポート。
■植物状態の患者にじつは十全な知覚や認識能力があるとしたら、それをどうすれば証明できるだろう? 本書の著者はfMRIなどの脳スキャン技術を用いた驚くべきマインドリーディングの手法を開発した。そこで明らかになったのは、「意識がない」はずの患者たちの中に、「痛みはありますか?」といった質問の数々に答えるなど、紛れもない認知活動をやってのける人々が少なからずいるという事実だった。
■患者が応答できるとわかったとき、「あなたは死にたいか?」と聞くべきだろうか? 著者の研究は、脳損傷患者のケア、診断、医療倫理、法医学的判断といった幅広い領域に影響する。また、意識の存在証明に迫れば迫るほど、「意識」概念の輪郭は崩れ、認知科学的・倫理的・哲学的疑問がいくつも湧き上がる。意識とは何かをめぐる既存の枠組み自体が揺らぎはじめるのだ。
■検出限界未満の意識が生み出す計り知れない生命力や、家族に支えられた患者たちの回復力にも圧倒される。脳と意識の謎の奥深さにあらためて衝撃を受ける一冊。

感想・レビュー・書評

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  • いわゆる植物状態の患者の脳内はどうなっているのか?

    学術書のようでありながら、まるで小説のように読みやすく、興味をひかれる場面も多く、感動もする。
    植物状態にある人は、ドラマで見るようにあんなにきれいに眠ったままの姿なのか?少しは反射的に動いたりするのではないかな…というか実際に仕事で意識障害に陥った患者さんを何度も見かけるので、でもずっと看護したりしているわけでもなくチラッと見かける程度なので、きちんと知りたいな…という気持ちから手にとった書籍だったけど、多くのことを学べたし、考えさせられることも多く、繰り返して読みたいと感じた。
    延命するかどうかという選択、そこに意識の有無が深く関わっている。意識とは、その人をその人たらしめるもの。さらに、他人とも共有しうる集合意識と著者の考えが展開されるにつれ、なんだか泣きそうになった。感動した。読み応えのある一冊。
    それにしても、意識を確認するために様々な取り組みをして発見を重ねていくのは、すごいですね。

  • 2018年出版の本なので、今現在ともなると、もっと研究は進んでいるだろう。けれども、グレイゾーンは残り続けるのではないか。そもそも科学で切り分けることができるのか。意識の有無、発生と消失などは、倫理的、法的問題も絡んでくるだろう。グレイゾーンでの、死ぬ権利、治療拒否、自殺、ほう助自殺、放置死は法的な違い。個人的には、意識が自分の体に閉じ込められるのが恐怖。

  • 植物状態の患者に意識があるのかどうか、あるとすればどうやってコミュニケーションできるのか?身体からのアウトプットが全くできなくなった状態の人とのコミュニケーションの手法を開発した脳科学者の感動的な著作。

  • この本に出会ったのは、日本経済新聞の毎週土曜日に掲載される「リーダーの本棚」で日本医療研究開発機構センター長の浜口道成氏が取り上げておられたことがキッカケでした。

    fMRIという機器を使って脳の画像を検証することで、いわゆる植物状態にある人にもさまざまなレベルの意識があることを明らかにした画期的な本です。植物状態=脳死=人間の死だと勝手に思い込んでいた私にとってはまさに目から鱗の衝撃でした。

    テクノロジーの進化と新たな実験方法の開発により、生と死の狭間のいわゆるグレイの領域にいる植物状態の患者とのコミュニケーションが可能となり、そこに意識が存在することが明らかにされた。このことは人間にとって新たな希望をもたらすものではあるが、同時にとても重たい課題をも突きつけるものだと思う。AIや遺伝子、宇宙などの大変革時代の中にあって、この人間の意識についての新たな知見は最も根本的で重要なものだと思う。

  • この本と同じくグレイゾーンになった身内をどうにかしたいと思いつつ何もできなかった経験から手にとる。同じ症状になる患者の例が次々に出てきて当時を思い出して本当に辛かったけど、ゆっくりとだが最後まで読んで本当によかった。閉じ込められていても、それを表に出せなくても、幸せに感じていたならそれはうれしいこと。こういう研究がさらに進むことを望む。

  • 植物状態と診断された患者の中には実は意識を持っている、それを表現する術がないにすぎない、という人が少なからず存在する。この衝撃的な事実を明らかにした一冊。
    と言っても、医学書・科学書チックな本ではない。その大きな理由は二つ。ひとつは、かつてのパートナーが植物状態になってしまったという著者の私情がそこかしこに表出すること。そして、もうひとつは「意識とは何か?」を問う極めて哲学的な領域に踏み込んでいること。
    意識が芽生えるのはいつなのか。物心がついたとき?まさか。受精した時?それも違う。とすると、その間のどこか。一歳?生まれた瞬間?意識の概念を形作る輪郭がグラグラ揺らぐ。

  • 植物状態と診断される人の15~20%は、どんな形の外部刺激にもまったく応答しないにもかかわらず、完全に意識がある、と発見した博士の論文的ノンフィクション。
    脳神経を見るという技術の発達もさることながら、意識があるということをどう証明するかという問いの立て方、そしてそのアイデアの面白さに唸る。
    ある特定のシーンを想像させることで、イエス、ノーを答えてもらう実験など思わず涙ぐんでしまう。
    日々介護に接しておられるご家族などが、医者には信じてもらえなくても「この子(人)にはちゃんと意識あります。」と断言される様子をときどき見聞きすることがあると思うが、やはり本当だったのだ。びっくりというか、やっぱりね、という気分もある。人は理由はわからなくとも「わかる」のだ。ただ、それを“科学的に”証明することの何と時間のかかることか。
    意識がない反応がないと一見できる状態でも、何をしようとしているのか、それが何のために必要なのか、あるいは日々の普通のことなど普段どおり声をかけてあげるのはとても重要と改めて思った。

  • 2022I220 493.73/O
    配架書架:A4

  • 植物状態と診断され、意識がないはずの患者の中に、十分な知覚や認識能力がある人々がいる-fMRIを用いたマインド・リーディングの手法で、意識があるかないかの二分法では捉えきれない「グレイゾーン」があることを、本書の著者で神経科学者のオーウェンは明らかにした。脳と意識の奥深さに圧倒され、人間とは何だろうか、どう生きるべきかと考えさせられる。さらに、一人の研究者が家族や恋人とともに生き、目の前の患者やテクノロジーと格闘し、研究の使命に向かって走り続ける様子に勇気づけられる。
    (選定年度:2023~)

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著者プロフィール

1966年生まれ。神経科学者。ウェスタン大学脳神経研究所 認知神経科学・イメージング研究部門のカナダ・エクセレンス・リサーチ・チェアー。博士号をロンドン大学精神医学研究所(現在はキングス・カレッジの一部)で取得後、マギル大学モントリオール神経科学研究所、ケンブリッジ大学ウルフソン脳画像センターを経て、2005年に医学研究協議会(Medical Research Council)のケンブリッジ応用心理学研究ユニット(現・認知脳科学ユニット MRC CBU)の副ユニット長に就任。2010年より現職。特に植物状態の患者に関する研究により、脳損傷患者のケア、診断、医療倫理、法医学的判断といった幅広い分野に新たな観点をもたらした。イギリスBBCのTVドキュメンタリーシリーズ『パノラマ』の『マインド・リーダー──私の声を解き放つ』(The Mind Reader: Unlocking My Voice)をはじめ、アメリカ、イギリス、カナダの各種メディアでも研究が大きく特集され、反響を呼んでいる。

「2018年 『生存する意識 植物状態の患者と対話する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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