ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番――世界トップ1%の資産防衛
- みすず書房 (2018年2月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622086802
作品紹介・あらすじ
「法律や政治、巨大な国際的資本フローにウェルス・マネジャーが与える影響を考えれば、彼らがすでに広く認められた研究文献の主題になっていてもおかしくない、と思われるかもしれない。ところが、最近発表された数件の記事と、20年以上前に刊行された書籍の一部で紹介されている以外、この職業は学者の間でほとんど知られていない。関心が持たれなかったからではなく、情報の入手が困難なせいである」(本文)
そこで著者は2年間のウェルス・マネジメント研修プログラムに参加し、世界標準規格として認められている資格であるTEPを取得する。
「優秀な成績でプログラムを修了したおかげで、この職業に近づきがたくしていた手強い障壁を乗り越えられるほどの内部者になることができた」(本文)
そこから明らかになったのは、大富豪の懐に入り、世界規模でマネーを操る、資産管理のプロたちの姿だった。格差拡大の原因ともなっている「富豪の執事」たちの実態を初めて学術的に分析する。
感想・レビュー・書評
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【受託者の役割が封建国家に応じて登場したように、ウェルス・マネジメントは、世界の最富裕層が創造して住まう超国家的な空間の副産物なのである】(文中より引用)
オフショア国家や現代の金融技術を駆使しながら、富裕層の金庫番を務めるウェルス・マネジャー。これまであまり光が当てられてこなかった彼/彼女らの世界の内側に入り込み、どのように資産の防衛がなされているかを詳述した作品です。著者は、本書のためにウェルス・マネジャーの資格まで取得したブルック・ハリントン。訳者は、優れたノンフィクションを多数訳している庭田よう子。原題は、『Capital Without Borders: Wealth Managers and the One Percent』。
税を課す側・課される側の地球規模でのいたちごっこを描いた意欲作。中世の倫理観と現代の金融技術で武装した者たちが繰り広げる未知のドラマが広がっていました。殊更にウェルス・マネジャーばかりを批難するものではなく、研究所としてのバランス感覚も見事だったと思います。
期せずして読んだら思いのほか素晴らしかった☆5つ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
超富裕層を相手にするウェルスマネージャーの生態、仕事、イシューが長年の経験からよくわかる本。
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国境に囚われないマネーを扱うプライベートバンカーの実情を、筆者自らがSTEPに加わって解き明かした本。資産保全に関わるプロフェッショナルたちの物語。
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考え方は参考になった。
途中で読むのをやめた。 -
世界の超トップ富裕層の財産を扱う職の実態。
歴史があり、食となりグローバリゼーションで加速しているが、信託の視点。
あまりにも遠い世界だが、実経済には実体としてあることは認識したいこと。 -
この仕事の目を惹くところ
1. 国家の資産から自由
2. 資格認定が確立したこと
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富裕層の資産管理をしている人はどういう人かについて書かれている本。
著者自身は学者でしかないのだけれど、実際に資産管理をしている人の信用を得るために資格を取ってインタビューしていたりととっても実学的な内容。
興味深かったのは、富裕層の資産管理に最も重要なのは運用成績なんかよりも依頼者のとの信頼関係で、資産防衛の相手は国が一番なんだけれど、家族や友人も多くの場合対象になって、だからこそ金庫番は家族以上の信頼がおける人が望まれるみたい。ひたすら金儲けに走るんじゃなくて信用が重視される状況を中世の騎士の関係になぞられて話がなされるさまは、時代が変わっても基本は変わらないのだなぁって思わされた。
富裕層けしからんと思って読むと印象が大きく覆されるような内容だった。 -
富裕層の税・相続を一手に引き受けるウェルスマナジャーの実態を解説した書籍。このために著者はウェルスマネジャー研修プログラムSTEP(Socierty of Trust and Estate Practitioners) を2年間受講し、世界標準資格まで得ている。内容は超資産家の知られざる脱税の手口(合法なので租税回避と言うべきだが、庶民から見れば明らかに脱税)となぜそれが可能かを記す。要は金持ちは国際法の隙間を縫ってオフショアと呼ばれる小国(ケイマン島、ヴァージン諸島、マン島、ジャージー島等)の法律を捻じ曲げて、インチキを合法にしてしまうということだ。インチキの内容は信託・財団などをつかった租税回避・債務回避・相続対応等である。特に信託は受益者の名前を開示する必要がなく、だれが財をもっているかをわからなくするとんでもない仕組みだ。庶民が知ってもどうすることもできないが、金持ちであれば財産を放蕩息子の3代目でつぶさないようにする恰好の方法である。今や超富裕層は国家の縛りをうけず、自身も財産も自由に海外に移動できる時代であり、自分に都合の良い法律がある国に適宜移住(書類上で)すれば良い。これを取り締まる試みはウェルスマネジャーの固い守りのため失敗の連続であり、著者の提言は、富豪対策にはウェルスマネジャーを味方にする方策を考えるべきというものである。
金持ちだけが得する恐ろしい仕組みをわかりやすく表にだしたセンセーショナルな本であり、もっと話題になって然るべきである。 -
論文であるが、社会学的にインタビューを積み重ねたもので読みやすい。ウルトラハイネットワースにサービスを提供する表題のプロフェッショナルがどう活動しているのか。オフショアにて信託、財団、法人を無数に形成し、財産の匿名性、オンショア法律からの超越性を享受するUHNW。主な目的は財産の増大ではなく、隠匿、保守であるという。先進国住人は、税金特に相続税。エマージングは政府や誘拐などからの秘匿。またそのニーズに応えるように、英領ジャージー島のように、先進国側なのだが、その怪しいタックスヘイブンが成長している。
具体的なマクロ数字はなく、左寄りではあるが、実態はわかる。