一枚の切符――あるハンセン病者のいのちの綴り方

著者 :
  • みすず書房
3.80
  • (0)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 25
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622086017

作品紹介・あらすじ

ハンセン病患者の強制収容、隔離、撲滅政策が始まって百年。「国家によって、生きる価値がないとされた者がなぜ無理して生きているかと問われれば、そこに抵抗があるからだ」。「いま、百年の間、いえなかったことをいいのこしておかねばならない」
太平洋戦争直前に瀬戸内海の国立療養所邑久(おく)光明園に収容され、いまもそこで暮らす在日韓国人二世の魂と生活の記録。
収容時に歩かされたのは消毒液まみれの黒い道だったが、譲られた「一枚の切符」で家に帰りながらまた療養所に戻ったのは自ら選んだ道だった。この切符をともしびとして暗闇を生きぬき、書きつづけてきた癩(らい)の語り部が、視力を失ったいまもなお、瀬戸内海の孤島から現代社会へと投げかける人生の光芒。
国民年金からの排除、隔離法廷、指紋押なつ、胎児標本問題などで独自の立場をつらぬき、病と民族による二重の差別と闘ってきた記録であると同時に、療養所の歴史的な実態と生活を詳細に語りのこす貴重な証言でもある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • どのような経緯で療養所にはいったのか。
    療養所での患者作業などについて。
    長島から橋まで歩いた時、とても長い道のりだった。
    農作業の手伝いで夜に歩いて戻ったことについての回想、あの道のり(今は整備されている)を?と思った。

    「差別というのは力の差、優劣から生まれ、人によって作られていく。そらをなくそうとして人びとは声をあげ、運動を起こし、被差別者は支援者たちといっしょになることで力をつける。自分が弱い立場であれば、ひとつ強くなってその上に立ったのだから、差別を克服した気持ちになるだろう。しかし、本当にそうだろうか力の競争を繰り返し、かえって差別される人を生み出してしまうのではないだろうか」(140-141ページ)

    「注射を打ってもらっているのは生身の人間であるから、それだけでもつらいのに、病人の感情までも傷つけないで欲しい」(256ページ)

  • 『一枚の切符――あるハンセン病者のいのちの綴り方』
    著者:崔南龍(1931-)


    【書誌情報】
    四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/312頁
    定価 2,808円(本体2,600円)
    ISBN 978-4-622-08601-7 C0036
    2017年5月10日発行

    ハンセン病患者の強制収容、隔離、撲滅政策が始まって百年。「国家によって、生きる価値がないとされた者がなぜ無理して生きているかと問われれば、そこに抵抗があるからだ」。「いま、百年の間、いえなかったことをいいのこしておかねばならない」
    太平洋戦争直前に瀬戸内海の国立療養所邑久〔おく〕光明園に収容され、いまもそこで暮らす在日韓国人二世の魂と生活の記録。
    収容時に歩かされたのは消毒液まみれの黒い道だったが、譲られた「一枚の切符」で家に帰りながらまた療養所に戻ったのは自ら選んだ道だった。この切符をともしびとして暗闇を生きぬき、書きつづけてきた癩の語り部が、視力を失ったいまもなお、瀬戸内海の孤島から現代社会へと投げかける人生の光芒。
    国民年金からの排除、隔離法廷、指紋押なつ、胎児標本問題などで独自の立場をつらぬき、病と民族による二重の差別と闘ってきた記録であると同時に、療養所の歴史的な実態と生活を詳細に語りのこす貴重な証言でもある。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08601.html


    【目次】
    目次 [001-004]
    地図 [006-007]
    はじめに(畑野研太郎) [009-012]
    謝辞(二〇一七年三月 崔南龍) [013-014]
    著者・崔南龍が歩んできた道(二〇一七年三月四日 孫和代) [015-024]
      略歴
      私と崔さん
      著書『一枚の切符』
    付記/掲載機関紙/参考資料 [025-026]

    序章 療養所への黒い道 027
      黴 028
      一九四一年七月十四日 034

    第一部
    療養所の暮らし 043
      お召列車 040
      光明学園 044
      面会所 053
      礼拝堂 062
      監房 067
      患者作業 076
      園内語 092
      園内通貨 105
    孤島の闘い 
      識字学級 アジュモニたちの日本語 116
      出張裁判 「らい」を裁く 122
      出頭不能 年金問題から指紋押なつまで 133
      胎児標本 いのちの証を見極める 142
    木尾湾物語り 151
      木尾湾というところ 152
      しんちゃんのラッパ 159
      ベッドの泣き笑い 165
      九反田 金潤任オンニの思い出 171
      島のカラスと町のカラス 181
      空飛ぶ自転車 185
      けものみち 191
      野辺の送りの今昔 195
      二つ岩 203
      木尾湾の生きものたち 208

    第二部
    幼い日の祖国 
      チギと黄色いマックワ 216
      布にくるまれた妹 222
      幼い「三重連」 227
    ひなたひかげ 初期作品集 235
      助けてやった犬/ひなたひかげ/私の顔/寝台の凹〔くぼ〕み/眼/トロツコ/ガラス戸から/五十銭銀貨/花火/金魚/影/私の財産
    春想秋忘 随想集 249
      身近にいるもの/病室/他人の不幸/注射/闇の世界と光の世界/双葉寮/錆びた心/素顔/見送り/南京豆

    終章 一枚の切符 269
      大和高田から天安へ 恨〔ハン〕百年 270

    解説(花崎皋平) [297-304]
      受け身を選びにひるがえす
      ‎その作品世界
      ‎いのちのつながり
      ‎暮らしてきた場所の物語
      ‎幼い日の記憶 青年期の苦しみ
      ‎天安望郷の丘で

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1931年、神戸市に生まれる。10歳の時、国立療養所邑久光明園入所。園内の双葉寮での療養生活と同時に園内の小学校4年に編入、今日にいたる。著書に『猫を食った話—ハンセン病を生きて』2002年、『崔南龍写真帖 島の65年─ハンセン病療養所邑久光明園から』2006年、いずれも解放出版社。

「2007年 『孤島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

崔南龍の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×