医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード
- みすず書房 (2013年7月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622077688
作品紹介・あらすじ
手洗いの徹底で院内感染をゼロにできるか? 兵器は進歩しているのに、なぜイラク戦争では負傷兵の死亡率が第二次世界大戦時の3分の1にまで下がったのか? 新生児の死亡率を30分の1から500分の1まで激減させたある麻酔医の工夫とは? 医師の仕事とは正確な診断をつけたり、手術の技術的な腕前を磨いたりすることだけではない。臨床現場のなにげない習慣や姿勢によって可能になる医療の「改善」を描くノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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医者の本音が語られるが、アメリカの事情なので日本とは少し異なるか。給料や裁判、医療訴訟に対する保険、手術室の確保などの問題。最前を尽くしても、医療過誤は起こり得るという。それは日本でも変わらないだろう。宗教上、ブルカを着用した相手への診療の仕方、など。
乳がん患者の話。放射性トレーサーが8時間以上前に注射されている、これは時間が経てば消えてしまう。救急の患者が割り込む。手術室の空きがない。それだけの理由で彼女に再度トレーサーを注射し、被爆を2倍にするのは契約違反だ。さあ、どうしたものか。
軍医についても。アメリカの負傷兵は多剤耐性バクテリアであるアシネトバクターバウマニによる感染症の流行をイラクからアメリカに持ち込んできた。軍部は、ファッションにも気を使い、ワイリー社のクールなフォルムの防弾サングラスに切り替えたことによって、目の外傷が見事に減少した。正しい事が、承認欲求により歪む。マスク着用文化にも通じそうだ。
運不運、技量や関係性によるトリアージ。人間の命に関わる現場は案外に手作りである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
医学部分館2階書架 : W 021/GAW : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169801
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当たり前のようだが、手洗いがどれほど大切か伝わってくる。どんな時代でも。
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感染症を防止するには医師の手洗いがとても大切
コンプライアンス(規則遵守)が大切
勤勉さ、真面目さはもっと評価されるべき
99.95%の生存率と99.5%の生存率。
一年たつと83%と16%になる。
0.01%の改善が全てを変える。医療に関してはそこに命がかかっている。
有効な解決に達するためには、のろのろとして困難な過程をのりこえるしかない。勤勉さこそが必要で、創意工夫が必要で、やってみようと言う意志が必要だ。 -
・手洗いは重要。爪は短く切る。爪のお化粧はしない。
・細部にわたる調査、データ収集が改善に寄与
・戦況、兵士の負傷の傾向が変わっても、データの重要性は変わらない
・ヴァージニア・アプガー。アプガースコア
・正しいことを行え、しかも、今すぐ
・書く行為は、仕事から一歩引き、問題を見通す機会を与える。 -
どのエピソードも興味深く、深い洞察とこれからの指針になりうるものばかりだった。
勤勉であること、たゆまぬ努力を続けること、客観的相対的に自分を評価することなど、非常に地味で継続的な改善の積み重ねがいかに大切かを、どちらかと言うと淡々と描いている。
99.5%の成功を99.95%に引き上げようとする努力が、卓越したパフォーマンスとなる、というのは一つの結論ではあるが、それだけではない考察がまた好ましい。
あとがきに医学生に向けた5つのアドバイスがあるが、どんな人にも役に立つものだと思う。 -
当時、産褥熱の原因は瘴気(しょうき)と信じられていた。日本だと疫病の原因は「鬼」(き)と考えられてきた。節分の「鬼は外」も感染症の原因を祓(はら)う目的があった。鬼に関しては面白い話がたくさんあるのだが以下のページを紹介するにとどめておく。
https://sessendo.blogspot.com/2020/08/11.html -
[目次]
第1部 勤勉さ
手洗い / 掃討作戦 / 戦傷者
第2部 正しく行う
裸 / 医師が尽くす相手 / 医師の給料 / 死刑執行室の医師 / 戦い
第3部 工夫
スコア / ベルカーブ / パフォーマンス
あとがき――ポジティブな逸脱をするための提案
引用文献 / 謝辞 / 訳者あとがき -
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB13152986 -
医師であり、「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者が、困難な状況でもより良い医療を目指して奮闘する医師たちの姿を記している。
感染症を予防するには
野戦病院での治療
ポリオ掃討作戦
出産
原題は『BETTER』。
絶対に正しい選択などない。だけれども、われわれの選び方を今よりもよくする方法は必ずある。
『BEST』ではないかもしれない。けれど、より『BEST』に近い医療を、医師たちは目指しているのだ。