- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622074229
作品紹介・あらすじ
本書では、東京裁判の通訳について誤解を正す意味で、いったい誰がどのように通訳業務を遂行したかについて、さまざまな事実を掘り起こすことを第一の目的とした。日米両国で入手した資料やインタビューを基に通訳作業の全体像に光をあてるとともに、通訳体制の三層構造、通訳手順成立の過程、二世モニターの複雑な立場といった、東京裁判通訳における際立った特徴に焦点を当てた考察を行う。本書の第二の目的は、東京裁判通訳に関する事象を、通訳・翻訳学における理論や概念を基に分析・解説することである。通訳学とは、通訳の認知的プロセス、コミュニケーションの仲介者としての通訳者の役割、通訳史、通訳教授法など、通訳のさまざまな側面を研究する学問で、ここ数十年ほどで急速に発展した。ここでは、今日の通訳学の新潮流である社会科学的アプローチを適用し、東京裁判の歴史的・政治的文脈のみならず、裁判関係者間の力関係、通訳作業に関わった人々の社会的・文化的背景に目を向けながら、通訳事象の説明を試みる。新しい次元に進む精緻な東京裁判研究の嚆矢として贈る書。
感想・レビュー・書評
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(mixi日記より転載、09年8月30日リーラボ紹介書籍)
すごく面白かった。
去年の冬だったかな?東京裁判(極東軍事裁判)の閉廷60周年にあたるから、関連書籍がたくさん出版されたけど、これもその一つ。
通訳に焦点を当てるなんて、さすがはみすず書房、テーマがいいよね。
東京裁判の通訳のキーワードは、3重構想!不信感いっぱいの、チェック、チェック、またチェック!
戦勝国のアメリカが敗戦国の日本を裁く裁判だから、主に英日、日英の通訳者、翻訳者が必要なのね。
でもさ、日本人で英語の出来る人はいても、アメリカ人で日本語の出来る人なんていないのよ。(今でもどっちが多いって言ったら、そりゃ前者でしょ?)
そりゃ戦時中、米軍が日本語学校作ったりしたけど、そんな一時勉強しただけで裁判で日本語話せる人材なんかできゃしないじゃん?
だからさ、通訳や翻訳は皆日本人がやることになっちゃったのよ。外務省のエリートとか、留学経験のある学者とかね。
でもさ、アメリカにとっては面白くないじゃん?わけ分かんない言語の通訳と翻訳を、敵国の、敗戦国の人にやらせるなんてさ、もしかしたら相手の都合の良いようにやられちゃうかもしれないじゃん。
そこでさ、監視役を付けるのよ。モニターと言語裁定官っていう。
モニターは、通訳の訳し漏れをチェックする立場なんだけど、これは日系人が務めたの。日本人よりはアメリカの息がかかってるからね。
でもね、日系人は日系人でも、帰米二世という特殊な人達なんだ。
帰米二世というのは、アメリカで生まれた後、日本の教育を受けさせたいという親の方針などで日本へ渡って、その後アメリカへ帰ってきた人のことを言うのね。
普通の二世はアメリカナイズされちゃって、日本語が全然出来ないけど、この帰米の人達なら比較的日本語が出来るから、モニターを務めることが出来るってわけ。
でも、その立場は複雑だよね。自分の親や友人は国(アメリカ)によって強制収容所に入れられてるのに、その当の国のために、自分を差別して米軍の正規兵にしてくれない国のために奉仕しなくちゃいけないんだから。しかも、裁くのは自分が育った国(日本)だし。
アメリカとしては、日本語が出来るからなくなく使うだけで、アメリカ生まれ、アメリカ育ちの日系人よりもさらに信用が置けないから、モニターを監視したいのよ。
そこで、モニターの上に置いたのが、言語裁定官。
言語裁定官は、白人の米軍の士官。
日本語出来ないくせに、一番偉い位置につきやがるw
だって、「この裁判は俺たちGHQが取り仕切ってんだぜ」ってアピールしたいから。
でも通訳は全部アメリカ(白)人以外が握るという、たんたる矛盾!
ああ、通訳はツライよ!詳細をみるコメント0件をすべて表示