日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

著者 :
  • 毎日新聞出版
4.04
  • (22)
  • (19)
  • (11)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 273
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620324814

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本がメインプレーヤーでなかったが故に、日本人に馴染みの薄い第一次世界大戦。本書は、第一次世界大戦が生まれた背景や複雑な各国状況、近代兵器の進歩、刻々と変わる戦況等を分かりやすく解説した書。

    虫けらのように兵士が大量に死んでいく西部戦線。毎日がまるで二百三高地状態ではないか! そういえば、高校の時に「西部戦線異状なし」を読んで虚しく感じたことを微かに思い出した。

    様々な禍根を残した第一次世界の幕引きが、第二次世界大戦の原因になった。戦勝国が様々な思惑から敗戦国ドイツに過酷なペナルティを課してしまったため、(無力化するはずがかえって)ナチスドイツという怪物を生んでしまったという。両戦争は深く繋がっているんだな。

    日本について言えば、日中戦争や第二次世界大戦に向けて軍部の暴走ばかりが取り上げられるが、マスコミや世論が果たした役割が大きかったことを再認識した。マスコミに煽られて過熱した世論が、過剰で強欲な対中要求(対華二十一カ条要求)を生み、その結果、中国の反日感情や国際社会からの不信感を煽ってしまった。これが日中戦争、ひいては日米開戦の端緒になったという。大衆を煽るマスコミ(及びそれに安易に踊らされる大衆)という構図は、今も昔も変わらない。悲しいけど、゛ひたすら大衆ウケを狙う低俗なワイドショー゛こそマスコミの本質なんだな、きっと。

    マスコミといえば、第一次大戦中、イギリスやアメリカは、マスコミを上手に使って、ドイツの悪逆非道振りを喧伝したという。中国の知識層も立ち回りが上手かったようだ。その点、日本は昔も今も国際社会へのアピールが下手。当時からあまり進歩してないな。

    あとがきに、「ウィルソン大統領の民族自決の理想主義が抑圧されてきた諸民族を覚醒させた時代、まさにあからさまな帝国主義が終わりを告げたとき、日本は周回遅れで、ようやく帝国主義のスタートラインに立ち帝国の形成を目指して」しまい、日中戦争へと突き進んでしまったと書かれている。読んでいて悲しかった。

  • 最も印象に残ったことは、
    『これだけ緊密に経済と人材が関係しているから、どこかで誰かが手打ちするだろう。全面戦争になると思っていなかった』
    という点。

    まさに、現代と同じではないか。

    経済が絡みついていても、思惑が食い違って戦争に発展する様は、充分に起こりうる。

  • 日清→日露→第一次世界大戦→第二次世界大戦と繋がっているのだが、第一次世界大戦はどうしても馴染みが薄く、私の中でポッカリと期間が空いていた。この本はヨーロッパ、アメリカ、日本、中国などそれぞれの視点で、総括的に解説してくれているのでとてもわかりやすく、第一次世界大戦のみならず日露・第二次世界大戦についても自ずと解像度が上がった。

  • 銃後って戦後のことと思ってた。反省。
    あとオーストラリアをハプスブルク帝国と考えると分かりやすい。

  • コテンラジオ本編で珍しく書籍名を挙げておすすめしていたので、手に取ってみました。確かに前半の第一次大戦勃発までの通信技術や戦艦の発展、鉄道網の整備による兵站の充実といったバックグラウンドは、高校歴史の授業ではあまり触れられない点。だけど、俯瞰的にこの大戦の成り立ちを理解する上では、非常に大切なトピックだと感じましたね。

    そもそも、第一次より第二次が世界大戦といった感覚は、日本的なもので欧州ではむしろ逆といったコメントですが、主戦場が欧州でこの総力戦の被害規模を考えるとさもありあん。塹壕戦の悲惨さだとか、潜水艦無差別作戦での海上封鎖による民間人の食料難→飢餓など、第二次大戦のホロコーストとはまた違った残酷さがありありと浮かんでくる。

    今の世は本当に平和なのか、米中関係やアフガニスタンの情勢、コロナ禍からの物資高騰、中国のバブル崩壊など一歩どこかが崩れれば化けの皮が剝がれてしまうのでは、といった焦燥感もある一方、このような歴史は繰り返すべきではなくどういったマインドが今後の現代人たる私に求めれれるのかを予測、定義していく糧できるよう思索にふけってみたりする。

    非常に丁寧に各要素を解説してくれ、その時日本はどうだったかの説明も随所に盛り込んでくれており、その点は日本人にとっての第一次世界大戦を理解するのにエッセンスとして効いております、勝戦国は三国同盟?あれ?連合どっちだっけといった私レベルでも楽しく読めたので、一からの復讐したいといった方にもぜひおすすめです。

  • 第一次世界大戦に至る国際関係とテクノロジーの関係性、対戦中の流れが1冊に整理されている。
    第一次世界大戦の全体像に、初めて触れようと思って手に取って、ちょうど良かった。

  • 第一次世界大戦本だが連載が元らしく、内容が広いが浅い

  • 世界史的に見て第一次世界大戦はどう位置付けることができるのか、全13章73話から成る本書は、大戦前のグローバリゼーションの進展、国民国家意識の高まり、兵器産業をはじめとする新しい産業の勃興、第0次世界大戦としての「日露戦争」などの前半の叙述を経て、後半は第一次世界大戦勃発から終戦後までが詳細に記述される。

    第一次世界大戦はとにかく長い戦争であり、その間にいくつもの有名な戦闘などがあり、それらが全体の流れのなかでどのように位置付けられるかはなかなか難しいところがある(もちろん、第二次世界大戦も同様の面がある)。しかし、本書はそうした個々の戦闘などもやや詳細に叙述し、全体像がイメージしやすいように書かれている。また筆者の専門分野である金融史の角度から当時の国際的な金融市場の動向なども加えられ、立体的な大戦像を浮かび上がらせることに成功しているだろう。

    第一次世界大戦が現代の諸課題に直結する面を多く含んでいることも重要だ。普通、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期を「戦間期」と呼ぶのだが、両大戦を一括りに考えれば、現代という時代は長い「戦後」であり、もしかすると次の大戦との「戦間期」なのかもしれない。


    *基本「ですます」で書かれているが、時々「である」調がはさまるのは何かの効果を狙ったものだろうか? 違和感を感じた。また誤植も目立つ。『エコノミスト』連載原稿が元であれば、単行本にする際に校正はもっとしっかりとして欲しいと思う。

    **映画の話の挿入がしばしばある。第一次世界大戦のイメージをつかむために有益だろう。

  • 200422第一次世界大戦史☆☆☆読了
    1.歴史は「事実の羅列」ではなく、「必然の解明」「なぜ?」に応える
    英雄個人の物語だけではなく、「組織の論理・決定・実行」のプロセスを問う。
    2.数字のdataが不可欠 証明  特に「おカネ」は本質
    exケインズ「平和の経済的帰結」債権債務のリアル(378)
    2.当時の政治キーパーソンに「戦争への確信」はない
     意図せざる世界戦争へ 戦争準備は開戦を必然にする
    3.技術革新が戦争を大規模化した  戦死者・軍事費の巨大化→世界大戦へ
     「イノベーションの塊」それが戦争の規模を拡大し、犠牲者を増やした
     ヨーロッパは第二次世界大戦より犠牲が多かった!
     輸送 鉄道と船舶 情報 電信 
     プロシア参謀本部
     大モルトケの軍事革命(49) 一般兵役義務 
    4「大きなミス」は致命傷 局地戦ではなく、戦略のミスで国家は滅ぶ
     組織はみな同じ トップのミス 
    (1)戦線の膠着 新兵器 決断なき戦争継続 誰も終戦を提起できなかった
    (2)「ドイツの賠償金」ケインズ 「連合国の債権債務」Data(378)
      平和の経済的帰結 感情論ではなく、Dataに基づく「経済合理性」
      ヒトラーナチスの擡頭・第二次世界大戦という高過ぎる代償を払った
    (3)制度の欠陥は戦時に現れる 統帥権独立
    (4)世論=大衆・マスコミの暴走
    5.日本参戦 1915年「対華21ヵ条要求」が日本を誤らせ、滅亡へ
     「戦略の誤り」は取り返しが効かない 満洲・華北・日中戦争
     大隈重信首相 加藤高明外相 →袁世凱へ強気の通告
     マル秘条項 第五項 米英の反発
     ⇒山縣有朋元老が反発 取り下げを命じた、時既に遅し
     「失敗の本質」として分析されるべき
       失敗の本質には「個人」が紐付いている 日本のリーダーは責任なし無答責
    日本の国家統治はガラパゴス 世界標準の意識が欠落 現代も同じ
    6.ツキュディデスの罠 覇権国←勃興国①利益②名誉

  • 日本では馴染みの薄い第一次大戦についての貴重な入門書。外交や戦略・戦術だけではなく、兵器産業、経済、ケインズ、スペイン風邪など関連することが、19世紀後半にまで遡って網羅されている。出口治明氏が「読み物としても楽しめる『広辞苑』のような入門書」と評していて、まさにその通りだった。手許において、気になった時に気になった箇所を再読したい。
    https://www.weekly-economist.com/20171205pickup1/

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1955年、兵庫県西宮市生まれ。作家・コラムニスト。関西学院大学経済学部卒業後、石川島播磨重工業入社。その後、日興証券に入社し、ニューヨーク駐在員・国内外の大手証券会社幹部を経て、2006年にヘッジファンドを設立。著書に『日露戦争、資金調達の戦い 高橋是清と欧米バンカーたち』『金融の世界史 バブルと戦争と株式市場』(ともに新潮選書)。

「2020年 『日本人のための第一次世界大戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

板谷敏彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
劉 慈欣
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×