蔵〈上〉

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 198
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620104843

作品紹介・あらすじ

失明という運命と闘い、ひたむきに、華麗に、愛と情熱をつらぬいた女、烈。雪ふかき新潟の酒造家を舞台に、生きる哀しみと喜びを全身全霊で描きつくした宮尾文学畢生の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • この小説は、新潟の酒蔵の夫婦に主人公の女の子の話です。

    その夫婦に念願の子供が出来て、出産したが奥さんの方が産後の具合が悪くなり、万が一があると悪いので妹を後妻にしてほしいと言って亡くなったが、その間にもひと悶着起きたが、その後で遺言通りにした。

  • きのね、に続いて読んだ本。これもまた懸命に生きる女性の話。

  • 丁度20年前に読んだこの本を作者が亡くなった事もあり、読み返してみる事に。当時も主人公の生き様や、理不尽な運命、人間関係の中まっすぐ生きていく姿に胸を熱くして読んだものだが、再読してもそれは変わりなかった。

  • 映画のDVDの表紙が日活ロマンポルのっぽいのでびっくりしたが、原作は別段色艶ものではない(いまのところ)。

    新潟の大地主にして酒造の蔵元に生を受けた女性の一代記。幼いながらに病弱の母を失い、理解のある祖母も逝き、目を患ったため、少々きかん気に育ってしまった烈。

    烈の育ての親というべき叔母(母の妹)の献身ぶりが目を引く。当主としての父の懊悩も察せられるものがあるが、後家に若い嫁を娶ったあとにどうもきな臭い雰囲気が…。

  • 久々に読んで、やはりいいお話だと思いました。
    お話の序盤はそれほどでもなかったけど、読み進める内にすっかり物語に入り込んでしまいました。

    「蔵」は越後の蔵元に生を受けた盲目の女性のお話です。
    姑に強く望まれて蔵元を営む家に嫁いだ賀穂。
    優しい夫、意造との間に8人の子をもうけるも、次々と流産などにより子供が亡くなってしまう。
    そんな二人がやっと授かったのがこの物語の主人公、烈。
    その名前には強い子に育つようにとの両親の思いがこめられていた。
    所が周囲に大切に育てられ、美しく利発な少女に育った烈に、小学校入学を控え、夜盲症で何れは失明するという残酷な診断が下される。
    そんな烈の面倒を、体の弱い賀穂に替わり、賀穂の妹の佐穂がみるようになる。
    やがて意造に密かな恋心を抱くようになる佐穂。
    そんな妹の思いを察し、賀穂は自分が亡くなる前に「佐穂を後添いにしてほしい」と夫と姑に遺言を遺し、先立ってしまう。
    しかし、意造が後添に迎えたのはまだ18歳の花街の娘だった-。

    このお話の主人公は烈ですが、烈がまだ幼い頃は彼女の母親、そして叔母が話の中心になっています。
    それらの登場人物の人となりがしっかり描かれていて、鮮明にどんな人なのか浮かびました。
    宮尾登美子さんの女性描写は素晴らしい!

    それにしても人の心はままないものだと思います。
    意造が妻亡き後、佐穂と結婚していたら何もかもが万事うまくまとまっていたのに・・・。
    だけど、若い後添をという男性の気持ちも責められないし、妻とした、せきが父親以上に歳の離れた男を心から愛せないという気持ちも責められないし・・・。
    ただ意造が後添にしたせきが蔵元の奥さんになる器量がないのは明らかだし、性根もあまりよろしくないのは確かで、それをいち早く感じていた烈に比べ、女性をみる目が意造にはなかったと思います。

    それにしても、このお話で登場人物が話す北国の言葉はなんて可愛いんだろうと思いました。
    語尾に「らも」「あん」「すけ」をつける言葉。
    温かくて、何とも言えない情緒があって・・・。
    あまりにお話に入り込んだために、思わず使いそうになりました。
    この言葉がこのお話の雰囲気を盛り上げるひとつにもなっていると思います。

    とてもいいお話で、一語一語を大切に読もうと思える作品です。
    引き続き下巻も読んでいきます。

  • 上下巻の長編小説だが、一気読み。
    烈、賀穂、左穂、むら、それぞれの女性の強さ、愛が印象的。烈が成長し、盲目でありながら自らの意思と行動力で運命を切り開く姿が、周りの空気も変え、ストーリーを進めてゆく。
    最後は足早に終結してしまい、烈と涼太についてあまり描かれていないのが残念。
    読みながら泣いていたら、主人に大爆笑され、心外!

  • 主題ではない「家」というものをここまで書くのかと。
    良い悪い、外聞、ゴタゴタ、つながり、親戚。
    圧巻。

  • 大正から昭和の酒蔵でのお話。方言がやや取っつき辛いものの、読み進むうちに味わいが増します。ストーリーとしてはこれでもかってくらいに父上乱心。この時代の地主が跡継ぎを残すというのは、ここまで固執しなければいけないものだったのかな、と思いつつ、どろどろな展開。酒蔵を舞台にはおいているが、ストーリーにおいて、酒造りの細やかさが絡むことはありません、あくまで人間群像。肩透かしはくらうものの、筋立て、人物描写、方言からなる文体はやっぱりいいなというのが上下巻通しての感想でした。

  • 全編、セリフは方言。読み始めた時読みにくさにビックリした。昔の地方の様子や考え方などがよくわかる。女性の強さが印象的。

  • 次第に視力を失っていく少女が、やがて完全に盲目となり、揺れ動きながらも懸命に生きていく物語。

    宮尾登美子氏の著書は、どれを読んでも文章が上手く、安定しているので読んでいて落ち着きます。
    物語の展開や登場人物も魅力的で、読み始めると時間を忘れてのめりこんでしまうのもいつものこと。
    忙しいときには手に取ってはいけない本。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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