わたしの全てのわたしたち (ハーパーコリンズ・フィクション)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596552112

感想・レビュー・書評

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  • 両親と妹と暮らす結合双生児のグレースとティッピは、経済的な理由から高校2年生で初めて学校に通うことになった。好奇の目の中、友人になったのは、ヤスミンとジョン。グレースはジョンにほのかな恋心を抱く。嬉しいことも傷つくこともある学校生活だったが、二人は体に不調を感じ始める。唯一の稼ぎ手だったママが失業した。家計を助けるために二人は今まで拒んでいたドキュメンタリーへの出演を受ける決心をする。

    結合双生児として生まれ育った少女が、日常生活で経験し感じたことをグレースの言葉で語る物語。








    *******ここからはネタバレ*******

    片時も離れることのない相手がいる「双子」という状況は、双子の母としてある程度は想像できますが、自分の病気が治っても片方の調子が悪ければ付き合うしかないとか、嘘や隠し事(いずれも心の中のことだけになりますが)も見破られてしまうとか、相手が摂った不適切なモノ(タバコやお酒)さえも共有してしまうとか、片方だけ行きたいところややりたいことも、もう片方が付き合わないといけないとか、おばあちゃんだってできる恋愛や結婚も制限されてしまうとか、最終的には、どちらかの体調不良がもう一方の生死にすら関わってくるとか、こうやって話を読んでみると、見た目以外にも大変なことが多いのだと気付かされます。
    そしてそれ以上に驚いたのが、二人が一緒にいることを望んでいること。生まれたときから一緒だから、もうそれを受け入れてしまっているんだと思いますが、一卵性双生児の絆の強さを見せられた思いです(我が家のは二卵性)。

    分離手術の結果は、やってみなくてはわからなかったことなんでしょうけど、生き残ると思っていたティッピが逝ってしまってとても悲しい。思うようにはならないということなんでしょうか……。
    しなくてはふたりとも生きることができなかったとしても、それでも悲しいですよね。


    米国の雇用制度にもびっくり。今日解雇通告されたら、もうすぐに出ていかないといけないんですね。




    翻訳のせいなのか、詩の形で書かれているせいか、読みにくいところや違和感を感じるところもありました。

    特にグレースがジョンを思い浮かべるところ。世間なれしていない女の子が、男の子を「きみ」と呼びかけるのはいかがなものか?直接会っている時は「あなた」って言っているのに。

    102頁、更衣室でのヴェロニカとヤスミンの会話。
    「チャイム……もう鳴らなかった?」
    「ううん、次の授業は、5分後だね」
    どっちなの?

    169頁。句点がおかしくないですか?
    シルバーの、うさぎ足のペンダント。10歳の頃、ママにもらってからずっと身につけている。「幸運のペンダント」ジョンは、ペンダントをひっくり返す。

    336頁、ドラゴンが持ち帰ったマトリョーシカについての場面。それのどこが彼女たちを表しているのか?私にはわかりませんでした。


    読みにくいところは多々ありましたが、彼女たちの気持ちが等身大で描かれているお話で、しっかりした高学年以上からの読書をおすすめします。

  • 言葉の“音”に合わせてフォントを変える。祖父江慎が解説『わたしの全てのわたしたち』装丁 | J-WAVE NEWS
    J-WAVEで放送中の番組『CREADIO』(ナビゲーター:佐藤オオキ・クリス智子)。「デザインを音で楽しむ」をテーマにお届けしている。7月3日(金)のオンエアでは、グラフィックデザイナー・祖父江慎がゲストに登場。60歳を迎えて変化したことや、音を意識した書籍の装丁について語った。
    https://news.j-wave.fm/news/2020/07/post-6286.html

    わたしの全てのわたしたち|ハーパーコリンズ
    https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/13057

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆思春期の過敏な自意識[評]岡本啓(詩人)
      わたしの全てのわたしたち サラ・クロッサン著:東京新聞 TOKYO Web
      https://ww...
      ◆思春期の過敏な自意識[評]岡本啓(詩人)
      わたしの全てのわたしたち サラ・クロッサン著:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/39818

      【第104回】間室道子の本棚『わたしの全てのわたしたち』サラ・クロッサン 最果タヒ 金原瑞人訳/ハーパーコリンズ・ジャパン | 特集・記事 | 代官山 T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
      https://store.tsite.jp/daikanyama/blog/humanities/15289-1141010806.html
      2021/10/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      詩で綴られた青春小説を、最果タヒと金原瑞人の翻訳で。|Culture|madameFIGARO.jp(2020.08.30)
      https:/...
      詩で綴られた青春小説を、最果タヒと金原瑞人の翻訳で。|Culture|madameFIGARO.jp(2020.08.30)
      https://madamefigaro.jp/culture/200830-livre-01.html
      2023/02/25
  • 結合性双生児で、上半身はそれぞれの体、腰から下はひとつの体を持つグレースとティッピ。

    グレースの視点からつづられる日々は、生まれてから常にふたりが一緒にいるしかないことの幸福と苦しみ、もちろん心は別々の個性を持つこと、普通に接してくれる友人との出会い、家族への思い、そして恋、治療、不安…などが連なっている。
    そして辛い決断、さらに辛い辛い結末。


    彼女の生きていることそのままが、想像したこともないような日々の困難に立ち向かう物語。
    ティッピを失って“ひとり”になったグレースの喪失とはどういうものなのか、わかったとか感じたとかも、とても言えない。
    正直なところ、まだよくわからないまま。
    それでも、読んで良かった、と思う。

    凝った装丁、選び抜いた言葉、数ページごとに交互に変わる紙の色。分かち難いふたりの結びつきを本の形であらわしているようだった。


    図書館あきよしうたさんのレビューで、手に取った本です。
    ありがとうございました。

    • 図書館あきよしうたさん
      うわぁ、yo-5h1nさん、これ、無っ茶嬉しいです。

      私レビューの後半に、ちょっと辛口コメント載せてしまいましたが、お邪魔になっていなけれ...
      うわぁ、yo-5h1nさん、これ、無っ茶嬉しいです。

      私レビューの後半に、ちょっと辛口コメント載せてしまいましたが、お邪魔になっていなければと祈ります。

      でも私、この「詩」と「本」全体をちゃんと味わう感性がなかったんだなぁと、yo-5h1nさんのレビューを読んで思いました。

      もう一度手にとってみようと思います。

      私こそ、ありがとうございました。
      2020/11/03
    • yo-5h1nさん
      コメントいただきありがとうございます。
      辛口コメントとは全く思わず、図書館あきよしうたさんが星を4つ付けてるなら、と気になって読みました。...
      コメントいただきありがとうございます。
      辛口コメントとは全く思わず、図書館あきよしうたさんが星を4つ付けてるなら、と気になって読みました。
      邪魔だなんてとんでもない!
      これからもすてきな、正直な思いのままのレビューを楽しみに読ませていただきます!
      2020/11/05
    • 図書館あきよしうたさん
      レビュアー冥利に尽きるコメント、本当ありがとうございます。

      これから更にレビュー書くのが楽しみになりました。

      これからもよろしく...
      レビュアー冥利に尽きるコメント、本当ありがとうございます。

      これから更にレビュー書くのが楽しみになりました。

      これからもよろしくお願いしますね。

      2020/11/07
  • フィクションで詩的表現で構成されているにもかかわらず、リアリティが突き刺さってくる。自分にはとてもじゃないが、受け入れられない日常をどう生きるか、考えさせられた。

    普通になりたくて、1人の人間になりたくて、でも失うことになり気づく本当に大切なこと。

    あぁ、自分はいかに満たされていて、この当たり前に生きている毎日を最悪な毎日と思っているけれど、本当はきっとすごい幸せな毎日を過ごしているのではないかと、心からそう思うことはできないけれど、認められないけど、そんなことを少しふと思ったりした。

    結構堕ちたと思っていたが、どうやらまだまだ堕ちきれていないようだ。やはり生きるということはそう容易くはない。

  • 実際に結合双生児のエピソードを参考にして書かれたフィクション。

    結合双生児のティッピとグレースは高校2年から家計の事情により高校に通うことになる。おとなしいグレースの語り(詩)により物語は進んでいく。体がくっついている以外は性格は違うけれど2人とも普通のティーンの女の子。

    学校に通うようになり人の好奇の芽に晒されながらも数少ない友人ができ、恋もする。教習所にも通う。

    両親、祖母、妹との関係、家族の困難に対する姉妹の決断、消える命。

    詩でなければ表せなかったこの物語は、金原瑞人さんの翻訳から最果タヒさんが書き直すという贅沢な行程を経て発行されています。

  • 詩の形式の小説というのはどんなものかと思ったけど、意外にも読みやすく、内容にもあっているように感じた。
    題は原題の「One」のほうが好き。

  • 性暴力を受けた女性のノンフィクションと思って読み始めたら、結合双生児の話だった。そっちは『私の中のわたしたち』。似てる。『中の』の原題は知らないが、解離性同一性障害の人の話だから、タイトルとしてそのままだと思う。こちらのタイトルは原題はOneだから、意訳という感じ。読み終わるとこのタイトルも悪くないとは思うが、そのままOneで、サブタイトルをこのタイトルにしたら良かったかも、と思った。
    結合双生児の物語というとホラーやミステリーに出てくるものは別として(誰でも、生まれた姿がどうであろうとその体で生きなければならないのだから、ホラー扱いは見世物小屋みたいなもので、現代では許されないと思う。)、萩尾望都の「半神」を思い出すが、あの結合双生児はメタファ的なところがあり、身近な人にコンプレックスを抱いている人なら共感しやすい物語だった。
    こちらはリアルな結合双生児の片方が主人公であるので、作者はかなり取材と研究をしたようだ。
    もっとリアルに書けたかもしれないが、障害の様子などはあまり細かく描写せず、意外に普遍的な青春小説として成り立っている。
    グレースとティッピ(グレース・ケリーとティッピ・ヘドレンからつけた名前)の双子の語り手はグレース。身体は共有していても、アイデンティティは別。でも、どんな人より近しい存在。そんな気持ちが、分かる気がする。母子感染でエイズとなったヤスミンとの友情、母に捨てられ、母の再婚相手に育てられているジョンへの恋、姉達の代わりにいろいろなことを引き受けている妹ドラゴン(本名ニコラ)への思いなども。
    それにしても、やはり普通の生活は難しいし、医療費ももちろんかかるのに、何の保障も手当もないの?両親が双子の医療費を出すために、他の全てを犠牲にしているのは、読んでいて辛い。アメリカの医療費はとても高いとは聞くけど、障害のある人にかかる費用はそれこそ公助で何とかできないのかと思う。
    結合双生児と聞くと、素人は分離手術を考えるけど、それを選択しないで生きている人達もいて、それを念頭に置いて書かれている。誰よりも理解し合えるソウルメイトが、いつも隣にいるって意味では羨ましくもある。孤独という感覚がきっと全く違うだろう。
    難しい設定を上手く生かした、いい物語だった。

  • 金原瑞人さんの訳を、最果タヒさんが散文詩にするという発想が天才。
    ティッピと、語り手のグレース。
    二人はひとつのからだを共有するシャム双生児と呼ばれる17歳だ。
    二人だけど一人。

    〈これ以外の体を知らない。
     これ以外の人生を知らない。
     たった一人で生まれて、
     たった一人で生きるなんて、
     リアリティがなさすぎる。〉

    私はひとつのからだで生まれてきた一人。
    たった一人で生まれて、たった一人で生きてきた。
    だからティッピとグレースの人生を想像することなんてできるのだろうかと思ったのだけれど、詩の言葉でこのように語られていくことで、気づけばするすると二人の物語を感じられるようになった気がする。

    ティッピとグレースは性格だって違うし、食事の量だってちがうし、眠るタイミングだってちがう。
    入学したホーンビーコン高校で出会ったヤスミンとジョンと送る高校生活は、とても刺激に満ちていて楽しそう。

    ティッピとグレースをめぐる運命について、なんだか最後まで読んで感想をうまくまとめられないのがもどかしいけど、タイトル「わたしの全てのわたしたち」という言葉について、じっと考えた。
    わたしが、わたしたちであること。
    広義の"私たち"ではなく、ただ本当に"わたしたち"であることの意味について。心強くて、あたたかさに包まれるような感覚だった。

  • 参加している読書会の課題本だったので読んだ。著者初読み。
    翻訳が最果タヒさんと金原瑞人さんというゴールデンコンビなので「これはもう間違いないでしょう」と思って読んだけど、じっさい間違いなかった。

    座骨結合体双生児で上半身は2人だけど下半身はひとりという生まれつきの障害を持つグレースとティッピ、2人のティーンエージャーの女の子が主人公だ。

    重いテーマなはずなのに、流れるような翻訳と、活字や用紙の色や手触りにもこだわって作られた装幀が相まって、結末は悲しいのに生きることの素晴らしさを考えさせられた不思議な一冊だった。

    2人の治療費がかさむために一家は経済的に追い込まれる。
    イラつく両親や我慢を強いられる妹ドラゴンの姿はリアルである。
    ようやく学校に行くことになったものの、好奇の目に囲まれる。でも普通に友達として付き合ってくれたヤスミンと、そしてグレースが恋心をいだいたジョンもいた。2人はよくある高校生の経験にも付き合ってくれた。

    しかし家庭はいよいよ経済的に困り、自分たちのことをマスコミで取材してもらうことにしたり、医師の功績としての手術でもあるのだと気が付きながらも、成功率の低い分離手術を受ける決断もすることに。
    普通のティーンエージャーの女の子でもあり、特別な境遇だからこその生き方も描かれている。フィクションとは思えないような自然さだ。

    テーマが結合体双生児ということで、自然と調べてみたくなり調べてみた。
    まず思い出したのが、ベトナム戦争でのアメリカ軍枯葉作戦が原因と言われるベトちゃん、ドクちゃんの兄弟のことである。
    彼らもたしか上半身が2人で下半身が1人だった。日本にも縁が深く、その後分離手術をしたものの一人は亡くなってしまった。生き残ったベトちゃんはその後結婚も就職もして健在のようである。彼らは戦争の犠牲者でもあった。

    結合体双生児のことをシャム双生児と言うけれど、その語源ともなったタイ(シャム)のブンカ―兄弟のことも調べてみたら、この兄弟は亡くなるまで分離せずそれぞれが結婚し、それぞれが子どもを設けて幸せな生涯だったという驚きのポジティブ人生だった。

    でも、このような例はまれで、本の中でも紹介されているが幼くして亡くなったり見世物小屋に売られたりした人たちも多かったようだ。

    この本をきっかけに結合体双生児についてあらためて考える機会をもらったと思う。
    物語を追いながら、この境遇の人たちについて自然と知りたくなり調べ考えた。こんな本はめずらしい。

    「結合しているから不幸」でもないんだなと改めて思ったし、分離する道もある一方で結合しているからこその得難いすばらしい、結合したまま生きる関係もあるんだとわかった。

  • 人の幸せは他人が決めつけて良いものではないと思いました。わたしの物語をみんなそれぞれ生きているだけなんです。

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