われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596551481

感想・レビュー・書評

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  • ー コロモジラミのDNAの突然変異の数からは、我々の先祖が少なくとも7万年前には裸で走り回るのをやめていたと結論できる。

    ー ストロンチウムはカルシウムと同じように体内に取り込まれる金属で、主に骨や歯の中に蓄積する。古代人の歯のストロンチウム比が、その地域の岩盤の比率と一致すれば、歯の持ち主は、歯が見つかった地域で育ったことが断定できる。すると、大きめの歯はその場所の地質と一致したが、小さめの歯は一致しないことがわかった。一般的に男性の方が女性よりも大きな歯を持つため、近親交配を避けるため、集団が離れたのは女性である可能性が高いことがわかる。

    …という風に色んな証拠を辿りながら人類を解き明かしていく。サピエンス全史を含む、他の著書と重なる部分も多いが、こうした話は繰り返し読んでも楽しい。人類の「今」ある特性を分析し、その由来を探るのだから。その特性こそ、タイトルにあるような、自信過剰、嘘つき、お人好しという内容。勿論、お人好しじゃない人もいるが、平均的に、という話だ。

    一つ、本の中から引く。自信過剰の人々が成功しやすい理由は、競争の中でより威圧的であり、周りの人が直接対決を避けようとする傾向があるからだと。競争戦略上、自信過剰の方が得をするらしい。何だか実感に合わず、日本人には、でしゃばるような自信家は少ないように思う。感覚的には、自分より比較的劣る人と長期間共にした人は自信家になりやすい。そして、日本の偏差値教育システムにおいて、時々その典型例に遭遇する。イキり特性と共に。

    本書で語られる、人類の幸せについて。
    「共同体の一員になり、新しいことを学ぶこと」
    斯様に、共同体に寄りけりではありはするが。

  • 昨日電車の中で飛ばし読みして三田図書館に返却した
    「われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか」のレビュー

    最終章の第3部の、過去から未来への跳躍で
    楽しい人生にたどり着くための「10の簡単なステップ」が良かった。
    1.現在を生きる
    人間は将来を生きようとする傾向があって、それが現在を楽しむことを妨げる。

    2.心地よいひとときを探す
    3.幸せを護って健康を保つ

    4.モノではなく経験を蓄積する
    経験は肉体の一部となり、所有した素晴らしいモノはゴミとなる

    5.食べもの、友だち、性的関係を優先する
    お金や自由より大事なもの

    6.協力する
    7.共同体の一員となる
    8.新しいことを学ぶ
    9.強みを生かす
    10.幸せの原型を探す
    家族や友だちと一緒にくつろいで過ごす時間、それは人間という種の確認リストのいちばん上にある項目であり、幸せになるための最良のレシピだ。


    以下Amazonより-------------------
    炎上、フェイクニュース、格差社会…
    ヒトの残念な習性は太古から備わる生存戦略が理由だった!?

    数百万年前から続く人類の「心の進化」をひもとき、現代人の幸せのヒントを提示する話題の書!

    人類は、絶望に突き動かされ発展した。

    われわれの進化した心理は、幸せとそれを追い求めることと密接に絡み合っている。
    つまり豊かな暮らしを送るということは主として、進化の命令にしたがうということなのだ。
    ――本文より

    気鋭の心理学者が明かす人間の「進化と幸せ」の知られざる関係――

    進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
    ○ホモ・サピエンスの生き方に現代で一番近いのは、マフィアや麻薬カルテルである。
    ○心の機能が生まれてからほどなく、人類がはじめて嘘をついた日が訪れた。
    ○暴力レベルの高い文化では、礼儀正しさのレベルも高いことが多い。
    ○われわれが遠くの人より近しい人の成功を妬む理由と?
    ○ IQの高さは必ずしも仕事の成功につながらない。
    ○多く人が自分のルックスを「実際より20%増し」で考えている。
    ○自信過剰は対人関係に大きな利益をもたらす。
    ○情報収集が偏っていればいるほど、人は説得力を増す。
    ○偉大なイノベーションを起こす人ほど〝非リア充〝である。
    ○ヒトは未来に目を向けて現在を無視する傾向がある。
    ○なぜわれわれは「いつも」幸せでないのか?
    ○高齢になってからの孤独は喫煙よりもはるかに危険である。
    ○「モノよりコト」が理にかなっている理由とは?
    ○過度の幸せは経済的な危機につながることがある。
    ○男子はなぜリスクを冒すのか?
    ○危険な男は女子にもてる?
    ○出会い系サイトで出会ったほうが離婚しない?
    進化心理学とは、進化がどのように人間の遺伝子を作り上げ、それが我々の心をどう形作って
    きたのかについての物語である。

    ◆目次より

    はじめに
    遠い祖先の考えや行動について知る方法/氏(うじ)か育ちか?
    第1部 われわれはどのようにヒトになったのか]
    第1章 エデンからの追放
    ディクディク・ヒヒ戦略/ライオンに石を投げつける/集団行動の心理学/集団行動がもたらした認知革命/わたしたちをヒトにした社会的跳躍(ソーシャル・リープ)

    第2章 出アフリカ
    直立歩行/ホモ・エレクトスからホモ・サピエンスへ/複雑な社会的関係のために必要な大きな脳/心の理論/教育と学習のための心の理論/心の理論と社会的操作

    第3章 作物、都市、王様――農業シフトがうながした心の進化
    農民の心理/私有財産/私有財産と男女不平等/政府だけでなく、階級、搾取、奴隷を生み出した農業/村から都市へ/インターネットによる回帰

    第4章 性淘汰と社会的比較
    性淘汰/セクシーであることの意味とは/ (社会の)相対性理論

    [第2部 過去に隠された進化の手がかり]
    第5章 ホモ・ソシアリス――社会的なヒト
    社会的知性/自制心の進化/自制心を超えて――大きな脳の社会的利益/自信過剰の社会的利益/自己欺瞞は自信過剰のためだけにあらず/自己欺瞞の効果

    第6章 ホモ・イノバティオ――革新するヒト
    社会革新(ソーシャルイノベーション)とは何か?/社会革新仮説

    第7章 ゾウとヒヒ――道徳的・非道徳的なリーダーシップの進化
    ゾウとヒヒ/ゾウ型・ヒヒ型のリーダーシップ/事例研究――ハッザ族とヤノマミ族/ヒヒ型リーダーの出現と不平等/小規模な社会から大規模な企業へ/道徳的リーダーシップを生みだす方法

    第8章 部族と試練――進化心理学と世界の平和
    集団間ではなく集団内で協力するように進化したヒト/集団同士の関係をぶち壊す相対性/自己欺瞞的な偽善者に進化した人間

    [第3部 過去から未来への跳躍(リープ)]
    第9章 進化はなぜ人間に幸せをもたらしたのか
    なぜ人間はいつも幸せではないのか?/幸せと健康

    第10章 進化の命令のなかに幸せを見つける
    幸せへの進化的ガイド/幸せと生き残り/協力と競争/幸せと学び/幸福、性格、成長/現代世界の落とし穴/楽しい人生にたどり着くための「10の簡単なステップ」

    おわりに

  • ヒトの進化と生存戦略を社会心理学・進化心理学観点から述べている。
    暴論でまとめると、ヒトに永遠の幸せは訪れないらしい。
    本が厚揚げくらい分厚い。
    男女の違いにも触れており、特に好きなものが
    男性はひどいセックスをしたことよりも機会を逃したことを後悔するが女性は逆である という一文です。
    男性は繁殖に対するエネルギーは少ないが女性はすごく大きいから(出すだけと約一年お腹の中で育てる)

    人類は協力することで知能が発達し繁栄してきたと述べられている。(狩猟農耕など) 以前読んだ他の本でも人類が進化してきたのは、依存し合う(得意な人に任せる)ことで、脳にキャパができ、クリエイティブな発想が出来たからと書いてあった。つまり、何でも自分でやっちゃう人(できちゃう人)は進化が遅れている。

  • 我々の脳が進化の賜物であるならば、我々の心理もまた進化の結果である。

    我々が嫉妬しやすく、心配性で悩みが多く、承認欲求を満たしたがる(いいね、が欲しい!)のは、進化の過程で種の維持に有利に働く形質だったからだろう。
    という進化心理学者の書いた本。

    重要なのが、「種の保存に有利である事と、個人の幸不幸は別物」という事。
    進化の過程で残った我々の心理状態を受け入れるだけでは個人としては幸せになれない。いや、むしろ不幸になるだろう。
    我々が幸せになるには、種としての心理傾向を理解しつつ、発達した脳で意図的に幸福を得られるように考え方や行動を改善する努力をする事が肝要だ。

    そんな考え方に根拠を与えてくれる本書。

    僕は好きです。
    (というわけで、いいね、下さい!)

  • 読了。進化心理学の、とくに人間の社会的な面に焦点を当てた本という感じ。

  • ちょっと分厚くて引くけど冒頭のシラミ3種から始まる実験・データ・解釈は人に話したくなるようなものばかり。文中紹介される本も読みたくなるものばかり。本筋自体はこの手の本(進化心理学)が好きな人にとって目新しくは無いかもだけど他の本との親和性もあって楽しくスラスラ読める本。10の提言も素直で終わり方もすっきり。テーマの難解さに関わらず読む側の敷居が低いのは本文のみならず翻訳の質も高いと感じた。

  • 進化心理学の見地から、人類の進化を通して獲得としたヒトの知性、心理を検証していく。
    チンパンジーとの枝分かれ、森からサバンナへの移動から詳細に説明されていて、興味深く読める。すべての考察が様々な検証や心理実験から導かれているので、納得しながら読み進められる。
    やはり社会心理学より、進化心理学の方がどうしても納得できるかな。

  • 『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』のような人類学系の本。そういうジャンルの好きな人は面白く読めると思う。
    表紙や帯に書かれているような内容だが、今回面白いと思ったのは「赤道に近づくほど宗教、言語が増え、自民族中心主義になる」理由。熱帯地方ほど病原体の密度が高く、病原体への脅威こそが象徴的偏見の根本となるという。確かにそれはそうだと納得した。簡単にいうと、小さな集団を作り、他の部族との交流を最小化することで病気をもらわず生存確率を上げることができ、自然と言語や宗教も局所化する。
    日本は島国であった上に温帯だが湿気も多く病原菌が繁殖しやすいので村社会を形成しやすい民族を進化させたのだろう。
    他にもこんな話がたくさんあって楽しいですよ。しかし、『サピエンス全史』もまだ読んでない人はそっちも読んでくださいね!

  • 74

  • 進化心理学に基づく知見をわかりやすく説明している。
    性淘汰により進化した私たちが無意識に縛られている思考方法、行動原理は、知っておくべき基礎的な素養であると受け止めました。
    第3部は特におすすめ。
    進化心理学の知見から、永続的的な幸福感を得にくいように人間はできていること、幸福や真の満足感を得るための生きた方が説かれている。
    乱暴に要約すると、性淘汰の観点から有利な立場にあること、有利な結果を得ていることが、真の満足感を得やすい状態ということ、と理解しました。

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