繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学 クレイトン・M・クリステンセン
- ハーパーコリンズ・ ジャパン (2019年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596551450
感想・レビュー・書評
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イノベーション論の大家による、貧困を抱えた国々に対する経済的援助の多くが陥る失敗を避け、持続的な繁栄をもたらすためには、インフラや法制度の整備よりも市場創造型のイノベーションが先決であることを説いた一冊。
著者によれば、経済的貧困とは人々が「解決すべきこと(ジョブ)」があるのに入手可能なサービスやプロダクトが存在しない「無消費経済」(=可能性)であり、そこにソリューションをもたらすビジネスが新たな市場を作り、利益や雇用が生まれ、更なる事業拡大のために必要なインフラや法制度が整備されることによって、社会全体に持続可能な繁栄をもたらすシステムが構築されるという。
今日の先進国においても、インフラが先にあったわけではない。著者はフォードによる自動車のイノベーションが米国の道路整備や郊外の開発を導いたことなどを例示しつつ、貧困地域の実態を無視した西欧型のインフラの押付けではなく、地域に根差したイノベーションを呼び水にしたインフラ開発の重要性を主張する。著者がこれまで積み上げてきたイノベーション理論を土台に、単なる経営論の枠組みを超えて、より良い社会のために我々ができることは何かを問う良書。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
持続的イノベーション(既存のものの改良)
効率化イノベーション
市場創造型イノベーション(無消費にチャンスを見出す、不便、苦痛、プッシュでなくプル、だからODAは成功しない、インフラ構築から始めたインドのトララム・ヌードルの大成功)、
ドラッガーだな -
繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学
序文
第1部 市場創造型イノベーションのパワー
第1章 繁栄のパラドクスとは
繁栄のパラドクスを知る
見落とされている道
4つのセクション
第2章 イノベーションの種類
持続型イノベーション
トヨタカムリの持続型イノベーション
サービスの持続型イノベーション
効率化イノベーション
市場創造型イノベーション
ローカル雇用とグローバル雇用
市場創造型イノベーションを成功させる5つのカギ
モデルT効果
「利益」と「雇用」と「文化的変容」
資本の好循環
第3章 苦痛に潜む機会
2つの経済の物語
バリアを特定する
現実の苦痛
保険を買おうと思って、朝、目覚める人はいない
世界を席巻した中国の電子レンジメーカー
無消費はどこにでもある
見えないものを「見る」
第4章 プル対プッシュ 2つの戦略
プッシュ戦略とプル戦略
驚異のインスタント麺
17年連続で前年比36%の成長
トララムがナイジェリア経済に与えた影響
トララムがナイジェリア経済に引き入れたものの明細
プルの力と必要性
自社のインフラから自国のインフラへ
公衆衛生経済
銀行はなくてもバンキング、テレビはなくてもノリウッド
井戸をつくってクビになる者はいない
第2部 イノベーションと社会の繁栄
第5章 アメリカを変えたイノベーション物語
新たな産業の誕生
コダック 未来を撮る
フォードのモデルT
バンク・オブ・イタリアからバンク・オブ・アメリカへ
歴史に残るイノベーターたち
イノベーションの文化
第6章 アジアの繁栄
ソニー 市場創造マシン
トヨタ 無消費から世界へ
片づいていないジョブから生まれたカローラ
小さなバイク、大きな発展
韓国 繁栄への道
第7章 メキシコに見る効率化イノベーションの罠
メキシコの効率化イノベーションの難点
効率化への過剰依存のリスク
15万人の無消費者を掘り起こす
焼き立てパンとイノベーション
第3部 障壁を乗り越える
第8章 イノベーションと制度の関係
問題を解決しない方法
制度は文化に追随する
リスクを民主化する
制度改革の失敗例
3つの教訓
卵が先か、鶏が先か
接着剤としてのイノベーション
グレーマーケットから公式経済へ
第9章 なぜ腐敗は「雇用」されつづけるのか
腐敗を理解する
なぜ腐敗を「雇用」するのか
第一段階:予測不能であからさまな腐敗
第二段階:予測可能で潜在的な腐敗
第三段階:透明な社会
腐敗大国だったアメリカ
領主と領民
透明性の浸透
「腐敗と闘う」のをやめる
アフガニスタンの例
海賊版からサブスクリプションへ
第10章 インフラのジレンマ
イノベーションはインフラに先行する
インフラの分類
学校と教育は同義ではない
コストを負担するのは誰か
開発コストを内部化する
政府の役割
コストセンターからプロフィットセンターへ
正しい方程式
第4部 イノベーションにできること
第11章 繁栄のパラドクスから繁栄のプロセスへ
プロセスの力
市場創造型イノベーションの5つの原則
繁栄のパラドクスへの解決策
巻末付記 新しいレンズで見る世界
部外者の力
インドのポータブル洗濯機
ナイジェリアの低価格薬品
カンボジアの安眠
ガーナの廃棄物発電
メキシコ人のための電気自動車
ナイジェリアのトマト・ペースト
デトロイトのディズニー・ワールド
ルワンダとサブサハラ・アフリカの床材
バングラデシュの発電
ガーナの奇跡の木
現場の開発者たち
IDP財団
ハランベ起業家連合
1エーカー・ファンド
安全な水ネットワーク
政府機関
ナイジェリア 雇用を創出する仕事
フィリピン 水ビジネス
ルワンダ 開業のワンストップ窓口
シンガポール イノベーションによる雇用
メキシコ ゴミを食料に
インド フィンテック
おわりに
Harper Business「The Prosperity Paradox : How Innovation Can Lift Nations Out of Poverty」 2019年1月
日本語版解説 津田真吾
「破壊的」イノベーションは市場を拡大させる
グローバルな雇用は危険を孕んでいる
市場がないことはチャンスである
製品であれサービスであれ、解決策を押しつけても機能しない
ハーパーコリンズ・ジャパン「繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学」 2019年6月 -
やはりこの人の本は面白い。
イノベーションのジレンマのような震えはないが、繁栄とイノベーションの関係というのは国の発展のみならず新しいサービスを社内展開するときにも使えそうな考え方だと感じた。
無消費者へのアプローチ…なるほど。。 -
イノベーションにも3類型があり、その中で経済成長に貢献するのは市場創造型イノベーションであると力説している。
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・toppointで読む
・貧困市場を強いニーズがある機会と見なす -
インフラ援助をして、完工式でテープカットの記念写真を撮る。でも、インフラは維持運用されない。なぜか? イノベーションの役割を考えさせてくれる。病魔を何度も克服されたクリステンセン教授が、六十歳台の若さで亡くなられた事が、残念でならない。
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貧困地域に非営利組織が設置した井戸5個の内、現在でも動いてるのは1つしかない。足りない物を支援する。それは貧困の緩和であり、繁栄には繋がらない。しかし、その反面、貧困から抜け出して繁栄している国々は存在する。この2つの違いは何なのか。
答えは貧困国にインフラと雇用と新しい文化をもたらす「市場創造型イノベーション」です。
それは無消費の中に苦痛を見出し、それを解消しようとすることによって生まれます。
そうやって成功した「トララム」というインスタント麺を製造する企業があります。その企業はナイジェリアに10万以上の雇用を生み、インフラ構築、教育機関の設立、港建設に15億ドルの投資などを行って、繁栄に多大なる貢献をしてきています。
他にも、フォードやコダック、ソニーを例に挙げて繁栄をもたらすイノベーションに共通する要素を分析しています。貧困とは、繁栄とは何か。という問いに対してイノベーションという視点から解決策を講じているので興味深く、読み応えのある本でした。