- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594089177
作品紹介・あらすじ
ミュージシャン、文筆家の猫沢エミとパリに渡った一匹の猫の物語。8年ぶり、待望の復刊。新規の書き下ろしを80ページ加え、新たな運命の猫との出逢い・別れの物語を特別収録。
感想・レビュー・書評
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猫沢エミさんの存在を知らなかっだけれど、元はミュージシャンらしいです。そして、この本を読んで、彼女の虜になりました。これ程までに心をかき乱される本は初めてかもしれません。
ゴミ置き場に捨てられていた子猫ピキを拾った所から、彼女の猫人生は始まります。その猫を連れフランスへ渡ります。
そこで、言葉の通じない所から始まり、ピキを心の拠り所とし、彼女は成長していきます。日本とは違う、ペットとの関係性も肌で感じながら。
フランスで…
☆人はだれでも新しい世界を恐れるものだが、それは私も同じで、見合わない仕事が来ると、そのチャンスはピンチにしか思えなかった。何とか大きな仕事をやりこなすうちに分かった事は、チャンスはピンチの顔をしてやってくるというものだった。ピンチをピンチのまま受け止めてしまうのも、チャンスに変えるのも、同じ1人の人間の捉え方次第なのだと、私は考えるようになった。
☆日本ならばどの分野でも、何も知らない新人が入ってくれば先輩が気遣って手取り足取り教えてくれるものだが、ここフランスでは自分から何を知りたいか申し出なければ、何時間でもそのまま放って置かれた。自分の立ち位置を決めるのが、周りの人の反応であることが多い日本とは真逆の発想。私は「自分の存在理由は、自分で決めて良いのだ」そう解釈した。
言葉を実地で学んでいく過程で必ず発見する思想の違いは、感情だけで捉えれば、ただの辛い出来事で終わってしまうが、論理的に自分の中に落とし込むことによって、新しい価値観へと生まれ変わる。
その後、ピキを見送り、新しい猫を2匹迎えて穏やかに生活していたころ、道路に痩せ細ってほとんど動かずにいたメス猫イオと出会う。酷い状態で保護したイオは、何とか命を繋ぎ、幸せな時間を過ごす。しかし、それはほんのひと時で、間もなく深刻な病、扁平上皮がんが発覚。その病はあっという間に広がり、余命はわずか。
弱っていくイオと残された大切な時間を過ごす作者。
一番感動した場面です…
☆イオはいつものように私の右腕の中で丸くなりながら、深遠な眼差しでじっと私を見つめた。そしてほっそりとした白い手をふっと私の胸元へと差し入れた。その手は、実際に私の皮膚を貫いて、心臓のあたりに入ってくる感触があった。「イオちゃん…もしかして、天国に行ってしまったあと、私のここに宿ろうとしている?それなら心配ないよ。イオちゃんと出逢ったあのとき、ママは魂の一部をイオちゃんに預けた。だからここは空いているし、あの日からイオちゃんの場所なんだよ」
作者の溢れる猫愛や、愛するが故の葛藤、強さと弱さなどが、手に取るように伝わってきて、幸せや辛さを共感して、その大きな振れ幅が心の中でバインバインと大きく弛んで、息苦しくなる。
作者の、何事にも身を削って懸命な様子に、私は日々なんて怠惰に何もせず過ごしているんだろうとあきれたりもしたけれど、作者と猫との濃密な世界に圧倒され、身体は硬直、心は大荒れだった。
心からの猫好きな方には是非読んで欲しい一冊でした。猫はそれほど…という方は、今ひとつ共感できない部分はあるかもしれないけれど、作者の生き様には心を動かされると思います。表紙の絵も文字も素敵ですね。 -
猫と生きる
いつぶりかな
こんなに泣いたのは。
一昨年の11月に愛猫ルナを亡くした以来かな。
こんなにも猫を愛し、
気持ちが心に響く文を綴る
猫沢エミさん
私の猫への想いをたくさん表現してくださってるみたいで、
とても嬉しかった、っていうのかな?
共感できて安らげた、っていうのかな?
なんだかわからないけど、
胸が熱くなりました。
今この時を幸せに、
ニャンコ達を幸せにしてあげたい。
また読みたいなぁって思いました。
猫沢エミさん
ねぇピキ
ねぇイオ
幸せだったね
ねぇルナも
幸せだったよね
favorite sentence
ピキは、猫生の最後を飾る、贈り物のような素晴らしい人生観を私に与えてくれた。
4匹の命のバトンリレーが見せてくれた愛と尊重は、そのままイオが私にくれた大いなる死生観そのものだった。
世界でたったひとつの命と向き合い、生きて見送ることはいつも"生"という光の中にある。
セ・ラ・ヴィ 「これが人生(だからしかたがない)」
チャンスはピンチの顔をしてやってくる。
人はなぜ、動物と暮らしたがるのか?それは、日々、人間同士が言葉を介して交流し、深く理解し合う反面、ときにその言葉で傷つき誤解が生まれる疲労感を、言葉なしでコミュニケーションする動物の存在が癒してくれるからなのだと思う。
愛したぶんだけ哀しいのなら、涙の量はピキの生涯の意義そのものなのではないか?そう考えられるようになった。
自信とは、人に見せびらかすためにあるものではなく、誰も自分など見てくれないどん底の時期に、どれだけ自分を信じられるかを指すものだと私は思っていた。
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私自身猫好きなので思わず取ってみた本
軽い気持ちで読み始めたら予想に反して深く考えさせられるものだった…
ねこを看取った経験のある人が読むと辛い気持ちを思い出すかもしれない
"この愛しい小さな生き物たちが寿命の長さでは測れない、命の価値について教えてくれること"
"個々の種族に合わせた倫理観があることを認め、きちんと線引することが大切であること"
といった、著者がねことの共生、パリでの生活を経て実感したことを本を通して訴えかけている
宗教が強く根付いている海外と違って日本では死生観について誰かと議論を交わすことがほとんどない
種族を超えた死生観については尚更
考えずに生きていても困ることはきっとないけど、それは人間のもつ特権に依存していて傲慢な気もする
私自身もここまで深く考えたことはなかったのでこの本が改めて考え直すきっかけになった
✏C’est la vie=セ・ラ・ヴィとは、どうしようもないことが起きたときフランス人がよく使う、悲劇をさっさと終わりにする魔法の言葉で、「これが人生(だからしかたがない)」という意味だ。
✏不思議なもので人の魅力というのは、実は言葉を介さない。その人のセンス、知性、志から発せられる魅力は、仕草や呼吸を通してトータルの印象になり、相手に伝わる。そこに言葉が加わることで「何か」がより明確に現れる。たとえるならば、言葉は人の内面を形にするため、ふちどりに使われる金の糸なのだ。
✏足りないのは愛情ではなく、システムです
✏親に見捨てられたヒナは飛ぶことを覚えず、短命に終わるという自然淘汰の掟があるんです。それを人間の尺度で「かわいそう」と捉えるのは、ラインを越えた介入になるわけです。 -
まだ猫と暮らしたことのないわたしには重めではあったけど、自分より寿命が短い動物とともに生きるとはこういうことなんだろうな。
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『彼らの存在は、人間の子どもに限りなく近いかもしれないが、それでもやはり別のもので、人間社会の疎ましさから離れた安らぎをくれる、代替えの利かない存在なのだ。言葉を介さない愛を一心に傾けてくれる彼らを亡くすことは、ほかのどの苦しみにもたとえようがない、特別な痛みがあるのだと私は思う。小さな体は、一緒に暮らした人間の愛で満たされている。』
ミュージシャン、文筆家の猫沢エミとパリに渡った一匹の猫の物語。新たな運命の猫との出逢い・別れの物語。
猫や動物が好きで、どんなニャンダフルライフを送っているのか覗かせてもらう軽い気持ちで手に取ったのだが、深く考えさせられてしまった。
一匹の猫との出会いからはじまり、著者の波乱万丈な人生を追いながら、看取りや出会いが真摯に綴られている。
著者の人生観には学ぶ部分も多く、心にとめておきたいフレーズがいくつもあった。
猫好きの猫アレルギーで動物不可の住まいなので、今のところ動物と一緒に暮らすことはできないが、将来動物と暮らしたら必ず経験する看取りや死生観を、読みながら体験させてもらった。
人間と動物の関わり合いは様々な考えがあるが、お互いひとつの生き物として尊敬し、尊重しながら付き合っていきたいと思う。
そして不幸な子が世界からいなくなりますように。
動物が好きなひと、家族に動物がいるひとは必読の1冊だ。
こんなひとにおすすめ .ᐟ.ᐟ
・猫好きなひと
・動物が好きなひと
・人生について考えたいひと
・フランスが好きなひと -
とても読みやすくて、美しい猫たちとの滑らかで温かな生活が目に見えるようだった。
もちろんそこには楽しいことだけではなくて、むしろ辛いこともたくさんある中での命の輝きではあると思う。
しかし、それと同時に、この本の内容とは別に、凄まじい人生や猫生を生きている彼女たちと、それをダラダラとソファの上で読んでいる自分の人生の詰まりの差にふと気づいて衝撃を受けてしまった。
この世は何かと戦っている人ほど輝く。
うまくできてるなぁ。 -
本の醍醐味である、自分がしてきたこと以外の経験が感じられる本であった。
猫沢さんの猫を尊重する気持ち、猫との暮らしの喜び、儚くも美しいという気持ちが伝わってきた。 -
読書人生一、泣かされた素敵な猫愛の本
「動物は、今幸せであることがすべてなんです。」