モード後の世界

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594085735

作品紹介・あらすじ

「来年人々が着たい服はなにか?」
答えは社会潮流の中にある

「次のトレンドはなんだろう?」。
モノを作る人も売る人も、常に考えているのはそのことではないだろうか。例えば、長いスカートが流行るとしたら、「今年は長いスカートだ」ということをいち早く知りたいと思うだろう。
しかし、本当に流れをつくる人というのは、初めに長いスカートを世に出す人である。そして、「長いスカート」が流行になるのには、必ず理由があるのだ。
あるいは「そもそもトレンドとは何だろう? それは今でも意味あるものだろうか?」と根源的な問いが生じても不思議はない。

日本を代表するセレクトショップ UNITED ARROWS 創業者の一人であり、現在もUAのクリエイティブ・ディレクションを行う日本ファッション界の最重要人物は、「答えは社会潮流の中にある」と言う。
いま世の中で起きていることに対して、生活者はどのようなマインドで暮らし、何が優先されるのか。
ファストファッションなどの台頭で「アパレル危機」と言われるファッション業界は、新型コロナウイルスの影響でさらなる打撃を被った。「コロナ後」に訪れる新しい世界で、おしゃれは不要不急のものとされるかもしれない。

しかし、「ファッション」が果たせる役割はある。
なぜなら、着ることは人間の尊厳にかかわることだから。着ることは生きることだから。

ファッション近代史をとおして日本のファッションの特異性と面白さを紐解きつつ、ファッション業界が向かうべき道を提示する。

ファッションとは文化であり
ビジネスであり 生きることである

感想・レビュー・書評

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  • ユナイテッドアローズ立ち上げからかかわっている筆者のファッション論。
    ファッションを社会潮流を読むことが大事というのはよく分かる。

    日本ファッションはなぜ面白いのか
    ・日本には、西洋のような階級社会がない
    ・日本のファッションにはセダクション=性的誘惑性がない」
    →ファッションとは創造性と真摯なモノづくりで成立し得る自由なものだということを証明した

    日本において、日本人がラグジュアリーと感じるものは、ぱっと見て華美やゴージャスものではなく、完成度の高いものだから、ということです。

  • ブルータスで紹介されてた。ファッションと社会潮流の関係性について。
    民族と民族衣装の関係を文化人類学的な視点から触れた本とかも読んでみたいなー。おしゃれになるためには、に対して、「まずは買わない!」と言える洋服屋さんめちゃくちゃかっこいい。

  • ファストファッションの台頭、ラグジュアリーの衰退、等身大の自分をアピールし、共感の賞賛の輪がスコア化される現代において、これまでの流行はなくなった。そしてパンデミック。体感することに価値を見出すことへの加速がされるなかで、ファッションはどこへ向かうのか。

    ただ。著者は、ファッションはどこへ向かうのか、というよりも、消費者のより良い選択をサポートするためにファッションはどうあるべきか、と考えているように感じる。問題解決の一手段としてのファッション、消費者の生き方を支援するためのファッション、そういう感じ。

    自らアフリカまで足を伸ばし、年中ヨーロッパで企画し、人を紐付け、日本に新ブランドをつくり、店頭に立つ。本や新聞で勉強。ツイードのセットアップにニューバランス。母からもらった50年?もののエルメスのスカーフを大事に使う。

    クリエイティブディレクターという肩書きだが、プロデューサーでありエディトリアルであるなあ。
    自ら体験し、世界のあれこれと自分の行動を紐付けで考える(ちょいちょい日本政府への批判や環境問題への提言、貧困やジェンダーなどの問題が覗く)スタイル。ビジネスマンよりもその辺りは自由な感じも含め、かっこよい。良本だった。

    --------------------------------------

    社会潮流を呼むことがファッションの醍醐味。トレンドを作る人は最初に長いスカート(誰も始めてない一手)を出す。コムデギャルソンの川久保玲のように。

    TheBeatlesは最初はyouandIだったのがweになり、おしゃれ自己主張グループから時代や世界を歌うトレンドメイカー側になった。

    川久保玲は毎朝新聞を読むのが日課。戦略的にパリの一等地にオフィスを置く。ただ奇抜を狙うのではない、この距離感の理解力がトレンドを作る人には必要。そうでなければ、ストリートスナップが流行った時に、ただ写真に撮られたくて集まった若者と変わらない。(著者の栗野も、ファッションはカルチャーだと言いつつ、ファッションはビジネスだとも言い切る。途中のアフリカとのコラボ企画の話も、チャリティではなく仕事であるという価値観があるから踏み込めた、とも語る)

    客観的な編集、はあり得ない。絶対に編集者の意図が入るから。であるならばこそなおさら、伝えたいこと、起こしたい方向、を決めて、そこに落とし込むことに熱を込める。どちらにも肩入れしない書き方、に肩入れするぐらいの、割り切りと熱量を込めること。

    モードとは「誰もが理解できる記号」が語源。流行と訳すのが妥当。そしてモードは終焉し、ダイバーシティとなる。

    自己批判は良いが自己否定は良くない。自己肯定を軸に持つこと。求められてるからするのでもなく、自分の中でそれを大事と認めているからする(それをやることが良いと考えていることが大事)。

    変えるべきでないものを変えないために、変わり続ける。逆説的。

  • 個人的に今まで惹かれてきたブランドたちは、栗野氏の言う社会潮流を汲み取る力を持っているブランドたちだったので、納得できました。(マルジェラやギャルソンなど)

    なおさら、環境や貧困といった社会問題を意識せずにクリエイティブすることが不可能な時代に相応しいテーマだと思います。

    勢いのあるアフリカやモードの終焉を意識しながら自分もクリエイティブしていきたいと思います。

  • ファッションにおいてトレンドとは?
    ヨーロッパ発のモードの限界
    今後のファッションはどーあるべきか、ファッションとはそもそもどのようなものなのか
    日本のファッションの独自性と面白さ
    ファッションに対する著者の考えや思想が書かれていました
    ファッションはアートではなく実用品であり、人と人との関わりの中でファッションと向き合ってきた彼の考えを読むのは楽しかったです✌️✌️

  • ファッションと社会が関連しているという話がとても興味深かった。
    コロナ渦の後、ファッションは自己表現として強いものか落ち着いたものどちらに進んでいくのか。
    自分も、自己表現として洋服をもっと活用していきたい。

  • 服について改めて考えさせられる内容だった。均一化している一方で、この時代と叫ばれる現在。どっちの方向にも転ぶ人が居ると思う。本来の価値や本質が重要視されていく新たな視点が芽生えたのはすごく面白かった。渋谷パルコにいってみよう

  • 勉強になる部分が多。

  • 《どんな変人でも、意地悪そうな人でも、辛口な人でも、本質的に人間としてまともかどうかということが、一番重要だと思います。逆に、理路整然と美しいことを語っていても、人間的にアウトだと感じられる人はやはりアウトです。
     服も同じで、僕らはそれを「トラッドマインド」と呼んでいます。どれほどアヴァンギャルドな服でも、ただアヴァンギャルド的であるためにアヴァンギャルドをやろうとしているものと、アヴァンギャルドをやっているけれど、根本に服に対する深い理解と愛があるものとでは違うでしょう。
     UAでは、このトラッドマインドという言葉をたいせつにしてきました。社のホームページでも、トラッドマインドについて、「洋服の歴史や伝統に敬意を払いつつも、そこに革新性を加えることで、新たな価値を持ったリアル・クロージングを提唱するということ。また、それはひとりひとりのお客様と向き合い、いつの時代も多様なスタイルに応えるということ」と説明しています。どれほど流行が変わろうと、自分たちが良いと思うもの、好きだと思うものを「これ、いいですよ」と言うためには、お客様に共感され、受け入れられる要素も持っていなければなりません。》(p.78-79)

    《これらの(日本の)ブランドが「なぜユニークで面白いか」と問われた時、僕は「日本には西洋のような階級社会がない」ことと、「日本のファッションにはセダクション=性的誘惑性がない」からと解説します。》(p.153-154)

  • 栗野さんのスタイルがかっこいい
    "動機が純粋なものに人は賛同してくれる"
    など共感できる言葉が多かった!

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著者プロフィール

1953年生まれ。ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブ・ディレクション担当。和光大学卒業後、株式会社鈴屋に入社。Beamsを経て1989年ユナイテッドアローズ創設に参加。バイヤー、ディレクターとして80年代のパリ・コレから35年にわたって内外のファッション業界を俯瞰。政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとして、国内外で高く評価され、日本のファッション業界をドメスティックとインターナショナルな視点から俯瞰的に語ることができる数少ないファッション・ジャーナリスト。スーツにスニーカーのコーディネイトを先駆けた人物でもある。

「2020年 『モード後の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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