アリ語で寝言を言いました (扶桑社新書)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594085469

作品紹介・あらすじ

熱帯の森を這いずり回り
60回以上ヒアリに刺されまくった
「アリ先生」による驚愕のアリの世界

・農業をするキノコアリ
・ハキリアリは超おしゃべり
・働きアリは全員メス
・働きアリ「2:6:2」の法則は本当か?
・飲まず食わずで働き3か月で死ぬ働きアリ
・結婚に失敗して実家に帰る女王アリ
・オスのアリは役立たず…?
頭が大きく変形して一生巣の「ドア」係をするアリや
ひたすらお腹に蜜をため込み巣の「貯蓄庫」となるアリもいる。
究極の役割分担社会に進化した、アリはすごい!

・ヒアリの痛みは「中の上」
・アリのゴミ捨て場に寝転ぶとひどい目に遭う
・アギトアリに刺されて手がはれ上がる
・アリをスッスッと「吸って」採取して蟻酸酔い
・アリのおなかにマーキングして、超地味な50時間個体観察
アリの研究はラクじゃないけど、やっぱり楽しい!

感想・レビュー・書評

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  • 真社会性生物アリの研究者が語ったアリの驚異の生態。多種多様なアリが実に色んな社会システムを築き上げている。読んでいて驚きの連続だった。

    著者は、誕生してからたかだか20万年程度しか経っていない人類にとって、5000万年という長い時間、ほぼその生態を変えずにきているアリの多様な社会システムに学ぶべきことが多いという。「洗練された複雑で大きな社会と、小さくて地味だけど、平等でぼんやりできる社会、どちらもこの地球に残っている」。人類にとっても、おそらくどちらの生き方もありなのだ。

    最終章で、リアリの恐ろしさについても紹介されている。いやあ、これは厄介だな。

    随所にアリ研究の苦労話も紹介されており、上質なエッセーとしても読める 良書と思う。

  • 村上先生は、ハキリアリの音声コミュニケーションの研究の第一人者である。
    ハキリアリは、仲間同士で実に密におしゃべりをしている。その「アリ語」を解明することで、例えば「こっちに来ないでくれ」みたいな会話をアリとヒトの間ですることができれば、ハキリアリによる農業被害を防げる、という視点に、ただただ感動する。
    また、ヒアリの防除などにも応用できる可能性があるらしい。殺虫剤など、やっつけることで解決するのは、いたずらに生態系を破壊する危険がある。その点、コミュニケーションで解決できるなら、無闇に傷つけずに済むのだ。

    あとがきもとてもよかった。
    アリの社会をたくさん見てきた村上先生だからこその言葉。生物の研究者の目線は、人間社会の「こうじゃなきゃいけない」というのを軽々と飛び越えていく力を秘めている。
    地球に住む先輩の生物たちを見習い、尊敬する視点を忘れないでいたい。人間が、これから先もずっと続いていけるように。

  • 世の中には色んなものを見ている人がいるんだなぁと思いました。
    誰もが身近で知っている「アリ」について。
    でも、読んだら全く未知の世界が広がってました。

    おしゃべりをするハキリアリ、
    キノコを育て農業をするキノコアリ
    アギトアリ、アミメアリ、パラポネラ‥など、聞いたことのないアリ、アリ、アリ、アリ…
    なんと多種多様なアリがいることか!
    女王アリ誕生のメカニズムも実に様々。1つのコロニーに1匹だけかと思ってたら、多数いるものもあり。
    知れば知るほど驚きの生態!
    でもそれを知るためには地道でチマチマした実験と危険なフィールドワーク。
    .
    60匹ものアリの身体に個体識別のマーキング、顕微鏡で15分毎 10時間×5日の観察、アリ語の音声分析、アリのコロニーの発掘。
    どれかを手伝うとしたら究極の選択だな…。
    グンタイアリやダニなど、どんな危険な生物に出会うかもわからないアリのフィールドワークは想像以上の過酷さで命懸けのご様子でした。

    著者は日本でも数年前に確認された外来種「ヒアリ」についても、研究をされています。
    本書を読んで、生態系に及ぼす影響の大きさを想像できるようになると、研究者がいて警鐘をならしてくれるありがたみを感じた。

  • アリ研究者のエッセイ。タイトルがキャッチー。

    著者の専門は「菌食アリ」と呼ばれる、ハキリアリやキノコアリである。彼らは農業を営むアリとも言われていて、巣の中に畑を作り、そこでキノコなどの菌類を育てて女王や幼虫の餌にしている。ハキリアリは葉っぱを切って運ぶことからその名がついているが、この葉っぱを直接食べるのではなく、キノコを育てるために使う。
    アリは社会性動物であり、ハキリアリも女王を中心として、育児やキノコ栽培といった複雑な社会生活を送る。その際にはもちろん、コミュニケーションが必要なわけだが、従来いわれてきた「におい」によるコミュニケーションに加えて、音声のコミュニケーションがある、というのが本書の1つの読ませどころだ。

    アリがどう話すのかというと、
    キュキュキュキュ キュッキュキュキュキュキュ
    キュキュキュ キュキュキュ
    キュンキュン ギョギョ
    という具合。
    発音器官は、胸と腹部の間にある「腹柄節」という部分だ。昆虫の中でもアリにしかない。
    小さなアリが小さな部分で立てる音を拾うには、高性能の小型録音装置が必要になる。まともに買うと飛んでもない価格だが、著者は安い部品を集めて工夫して高性能のものを用意する。
    これを飼育ケースにセットして、キノコ畑を再現し、アリを入れる、というわけだが。
    人相手の言語学者であれば、現地の人とコミュニケーションを取りながら、どの行動でどんな言葉が発せられるかを調べ、仮説を立てながら検証していく。
    しかし、相手はアリ。ひたすら行動観察して音声と突き合わせていく。これが飛んでもなく地道な作業である。録音した音を聞きながら、あるシチュエーションで「キャ」が何回、このシチュエーションでは「キュキュ」が何回、この場合は「ギー」が何回と、「正」の字を書きながら(!)数えていく。あるアリなどは15分で7000回もしゃべっており、この15分の解析だけで1ヶ月掛かったというから気が遠くなる。著者も
    「本当にお前、意味のあることしゃべってるのか?」
    とぼやきたくなったというのもむべなるかな・・・。で、挙句の果てに、寝言でまでアリ語をしゃべるようになってしまったのがタイトルの意味。
    この解析の結果から、行動と音声の関係に関して、いろいろおもしろいことがわかってきたそうで、近いうちに論文発表されるとのことである。

    地道な解析に加えて、現地(ハキリアリはパナマなど中南米にいるため)でのディープな研究者生活の話も興味深い。
    著者はヒアリも専門にしていて、最終章はヒアリにあてられている。近年、日本への本格上陸も警戒されているが、そのためにはまず、ヒアリについて正しい知識を持つことが大切だという。

    特異なアリの研究から、「社会性とは何か」や、ヒトと「害虫」との関わりについても見えてくる。
    軽く読めてディープで楽しい。

  • 生き物に興味がある人はとても楽しく読めると思います。
    興味がなくても、村上先生のポップな文章で読みやすく、楽しめると思います。

    環境に適応しながら生きているアリと環境に負荷をかけながら生きている私たち人間。ありからは学ぶことがたくさんありました。

  • ふむ

  • 本のタイトルだけを見たら「知らんがな」と突き放してしまいそうになるが、そこはぐっとコラえて。
    研究者の村上先生はアリ語で寝言を言っちゃうくらい、アリ世界はオモチロくオクブカい世界ということを示すタイトルなのです。
    学術的な蟻の話が延々と続くということはありません。念のため。
    比較的一文で端的に書かれているので、リズムがあってとても読みやすい。村上先生の筆がのっているのが伝わります。

    ------------

    働きアリが全てメスってどういうことよ! メスが損じゃん、かわいそうじゃん、やってられないじゃん! と思うけど。
    オスもつらいのだ。相当につらいのだ。オスもやってられないよ。
    じゃあ女王アリがいいわと思うけど。
    女王様? ノン! 全然女王様じゃない! それは想像を絶する過酷苛烈な一生なのだ。

    またとあるアリは一生ドアだったり蜜タンクだったりで、山田風太郎の忍者か!と思わせるし、盗賊や農業するアリもいて人間社会と近いところもある。

    なんなんだ、アリ世界。

    「全てのアリに問いたい」
    夢って何?平等って何?生きがいって何?
    しゃらくせえ! 四の五の言わずに「とにかくくたばるまで生きろ」ということか。

    そういえば、子供の頃アリは好きでした。アリの行列を見つける度に「ちょっかい」という名の「試練」を与えていました。指先から這い上がってくるアリのこそばゆさを覚えています。

    この本を読んだ後にアリを見てみると、
    大いなる呆れと大いなる尊敬とが
    入り混じった不思議な生物に見えてきます。

    心から「アリすごいぜ」

  • アリの見方が変わる。
    アリ語?農業?女王アリの存在?オス蟻って!?
    最後のヒアリについてもためになりました。

  • ひたすらに面白い。アリは社会性のある生き物、ということだけはよく聞くが、その詳細は知らなかった。多くの人はそうなのではないだろうか。

    どうやら働き者らしい、この「アリ」という生物。
    ひとくちにアリと言っても多様な種類があり、それだけの社会の形態がある。

    直接的には子孫を残さない「働きアリ」がせっせと働く背景には「利己的な遺伝子」が暗躍していたり、「働きアリの法則」にはアリの種類による違いがあったり。身近なようで知らなかったアリの世界がらありありと提示される。

    そして何よりも、村上先生の情熱。この情熱に触れられるという点が、本書のもう一つの醍醐味だ。

  • キノコアリ種 ハキリアリ、ムカシキノコアリ ウロコキノコアリ(祖先)
     巣の中にキノコ畑 中南米生息
     マヤ文明神話集 Popol Vuhにもハキリアリは出てくる
     「そのう」で発酵させた食べ物を吐き出してキノコ酵母のつぶにする。
     女王アリと幼虫のえさに。
     アリの巣にしか存在しない共生菌。それに寄生するそこにしかいない寄生菌。 
     寄生菌の抗生物質をだすバクテリアがアリの体内に。

    農業とは、人間が代わりに「穀物の社会」を進化させられたもの?
     世話するエネルギー>農作物のエネルギー

    教科書が正解ではなく、自分のスキルとデータから論を構築。新発見につながる。

    フェロモン
     アリは捨てられるにおいとそれを妨害するにおいを出す。

    ハキリアリの女王アリ 
     巣の菌を口に、結婚飛行、
     数個体のオスと交尾し精子を20年間保存し生涯3000万個の卵を産む。
     ひとつの巣から200個体以上の女王アリ新たな巣を築くのは1個体程度。
     働きアリはすべて雌 寿命は3か月。長時間の休みはとらない24時間労働。
     女王が死ぬと働きアリの卵巣が発達して卵を産むがオスにしかならない。 
     最後の手段。

    ハキリアリの言葉
     発音器官:腹柄節 
     音によるハキリアリの防除 コーヒー、オレンジ、野菜
     ヒアリも音で巣から誘い出す。

    サムライアリ
     クロヤマアリの幼虫や蛹を奪い働かせる社会寄生種
     新女王アリ 巣の乗っ取り プロパガンダ物質でクロヤマアリを錯乱
     シジミチョウ幼虫 匂いの擬態と女王アリの音を真似る。

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著者プロフィール

九州大学持続可能な社会のための決断科学センター准教授1971年、神奈川県生まれ。茨城大学理学部卒、北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。研究テーマは菌食アリの行動生態、社会性生物の社会進化など。NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」ほかヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』(東海大学出版部)など。

「2020年 『アリ語で寝言を言いました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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