あのひととここだけのおしゃべり: よしながふみ対談集 (白泉社文庫 よ 4-9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592890270

作品紹介・あらすじ

楽しいおしゃべりの時間です…「大奥」よしながふみの初対談集が文庫化。お相手は、やまだないと、福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都、堺雅人(文庫録下し)。 2013年4月刊。

感想・レビュー・書評

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  •  よしながふみさんの対談集。
     三浦しをんさん、羽海野チカさん、萩尾望都さん、堺雅人さんなど、様々なジャンルの人と漫画を中心に対談。

     三浦しをんさんがもともと好きで、そちらがこの本を読もうとしたきっかけでした。
     三浦さんとの対談で、幅広い範囲での漫画についての語り、それこそ好きだからなんでしょうけど質量ともに圧倒されました。

     他の方々との対談も、互いに漫画への深い造詣を感じるものでした。
     私が全く知らない漫画も多く、もっと漫画を読んでいたら、更に楽しめたんだろうなと思いました。

  • 自分が「好きだ」と思うもの、思うこと(いわゆる「趣味」と称される全般)について、おそらく世の中の大部分の人は、「なぜ好きなのか」について、それほど深く考えないのではないか、と思います。
    「楽しい」「面白い」「かっこいい」「可愛い」という主観的な感情が「好き」の理由としてもう成立する。
    だけど漫画を心から愛している私にとって、漫画が「面白い」のは当たり前の大前提で、「なぜこの漫画が面白いのか」「なぜこの作者が好きなのか」「なぜこのキャラをかっこいい、可愛いと思うのか」ということを考えずにはいられないのです。
    それ自体すでに漫画の魅力に捉えられた人間の業であって、考えても考えてもブラックホールのようにより深く漫画の世界にハマっていくだけで、ちっとも自分の「好きな理由」を言語化できずにもどかしいんですけど、この本は、そんな「業」を抱えた人たちのなりふり構わぬ対談集でした。
    しかも、かなり自分たちが好きなものに対する「なぜ好きなのか」「なぜ面白いのか」が明確に言語化されていて、私としては「あああああっ、そうだったのかーーー!!!」と雷に打たれたような霧が晴れたような感覚をページをめくるごとに味わいました。
    そして、私の血は間違いなく少女漫画でできている…それを今、再確認しました。
    もちろん、よしながふみも対談相手の人たちも私と全く同じ考えではないので、全てが分かったわけではないのですが、出口もなくモヤモヤしていた思考に、一筋の光明が見えたような感動を覚えました。
    やっぱり人と語り合うって自分の考えを整理して言語化するうえでも大事なんだよな。私も、もっと友達と漫画について語り合おう!

    でも、この本で語られていることに共感できる人はきっと少ないと思うので、あんまり人には勧められないですけど(笑)

  • 「マンガ」を主なテーマとしてこってりたっぷり語られる、よしながふみの対談集。軽い気持ちで読み始めたら、面白くって面白くって!
    まず第一章、福田里香さん・やまだないとさんとの少女マンガ対談、これにヤラれました。三者三様の「好き!」が溢れまくり、それぞれのマンガ愛に感服。各時代の人気作品に対する解釈が素晴らしい。読みながら、どうやらよしながさんは世代が近いようだということに気付く。(実は今の時点で、よしなが作品は「大奥」しか読んだことがなく、彼女についてあまり詳しく知らなかったので。)
    で、次は文庫版のみ収録されている最終章・堺雅人氏との「大奥」対談に手を付ける。これまたヤラれました。何がすごいって…堺氏の、役柄を深く理解しようとする真摯な姿勢。マンガ作品が映像化されることで、芝居を通じて、原作者も目を見張るほどの化学変化が起きる。それは映像化にありがちな別物のオリジナル演出ではなく、あくまでも同じベクトルを向いた上で、更に深く作品世界を表現しているということだ。俳優さんと原作者ががっつり仲良くなって一つの作品を作っていくっていうのが素敵だなと思いました。
    三浦しをんさん、こだか和麻さんとの「BL」論はなかなかの濃厚さだったが、BLが未知の世界である者から見ると、結構深く、論じがいのある世界なのだなと改めて思いました。無知だった故に色々誤解している部分もあったし。「やおいは男同士でなくてもいい」という解釈は、新鮮だった。そう考えてみると「バディ」な女の友情ものって意外にあるんだよね。男女でも当てはまるということに、よくよく考えたらそうかもと納得。
    志村貴子さんのマンガは読んでみたいなと思ったし、個人的に大大好きな羽海野チカさん、萩尾望都さんに至っては、対談してくれてありがとう!!という感じです。人気作品のメディア化の裏話、そして24年組の話など、興味深く読みました。羽海野さんのかわいらしさ・相反するかのような仕事に対する熱さ、萩尾さんの懐の深さ・柔軟さ、素敵です。お二方がますます好きに…!!
    全体を通して感じたのは、よしながさんはクレバーで情熱的で謙虚で、「大奥」しか読んでなかったのが勿体なかったなと感じるほど。よしなが作品は勿論のこと、本書に登場したたくさんの名作マンガを手あたり次第に読みまくりたくなった。

  • 三浦しをん、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都、堺雅人(以上、敬称略)という豪華メンバーが勢ぞろいのよしながふみ先生対談集。

    三浦しをん先生、志村貴子先生との対談は、個人的に共感できるところがたくさんあるので何度も読んでいます。
    とても勉強になります。

    他の人がただ「好き!」で終わらしてしまうところを、細かく分析して結論を導くところが読んでいてとても気持ちいいです。
    すきま時間にぴったりの本♪

  • 単行本の時点で探してもどうしても見つけられなくて
    文庫で出るってわかった瞬間飛びついた(笑)。
    そしたら堺雅人さんとの対談が追加で収録されててお得だったという。

    対談相手のメンツから見て、内容がもっとBL寄りになるかと思ってた。
    よしながさんの話題の広さ、考察の深さに感服。
    そして主義主張にちゃんと芯が通ってるところ、ブレなさ加減が心地よかった。

    読み進むにつれ、自分自身の本読みとしての歴史、マンガとの関わりの歴史、
    読み方の傾向などを一緒に振り返る羽目に陥った。
    そして、今までの自分の読み方が如何に無自覚だったかを思い知った。
    『耽美系』と『BL』は似て非なるもの、『やおい』の定義、
    少年マンガと少女マンガの文法の違い、などなど
    ページを捲る度に目からボロボロ大量の鱗が落ちた。
    というか、目の前を覆っていた紗幕が取り払われて視界がクリアになった、
    という方が感覚として近いかもしれない。
    これまではあまり気にしたことはなかったけれども
    自分にとって耽美系は男の体を借りてるものの実質は片方は女の子、という体で
    BLは性別を超越して人間対人間のレベルで惹かれあう話、
    という括りだったのかなーもしかして、と思い始めたところに
    『やおい』の定義として例に挙げられた人たちを見て
    あー同士がいたーと内心ガッツポーズを決めてみたり
    思考をあちこちに飛ばしながらゆっくりゆっくり読み進めたので
    想像してた3倍くらいは読み応えがあった。
    対談集だからさらっと読めるわー、なんて思ってた自分に天誅、てな気分。
    ごめんなさい甘く見てました。

    この対談集を読んで思ったのは、よしながふみという人は
    思考をどこまでも深く掘り下げることを厭わない、
    しかも外から入ってくる意見を拒むこともしない、
    広く深く物事を捉えることのできる人なんだなーということだった。
    特に最後に追加された堺雅人さんとの対談には
    自分の生み出したものを突き放して見ることのできる度量の大きさを見た気がする。
    そんなよしながさんが作り出す世界観がつまらないわけがないな、と。

    話が逸れるけれど、
    志村貴子先生が対談中に仰っていた
    『失言をした主人公の女の子が反省をするんだけど、
    これくらい反省したからもういいだろう、よしって気持ちを切り替える』
    場面が出てくる漫画というのは恐らく川原泉先生の作品なんだけど
    (これだからストレスが溜まらない、と手書きの注釈があったのを覚えてる)
    それがどの作品だったのかがどうしても思い出せなくてモヤモヤしている。
    『殿様は空のお城に住んでいる』だったか、
    『バビロンまで何マイル?』だったか。
    …あーやっぱり思い出せない気持ち悪い(爆)。

  • NHKでよしながふみさんの『大奥』のドラマをやっているので、この機会にコミックスをまた読み返した。生殖に振り回される女性と男性がずっとつらい。これをドラマで見ることになるのか…と楽しみでもあり怖くもなった。
    よしながふみさんが何を考えているのかが知りたくなって、そういえば…と過去に対談集を出していたことを思い出したのが『あのひととここだけのおしゃべり』を読んだきっかけだった。
    読み応えがありすぎて、すべてのページについて色々言いたいのだけれど一番(ああ、そうだったのか…!)と思ったところは三浦しをんさんとの対談パートで『女の子の萌えポイントと抑圧ポイント』について語っていたところだ。

    ”よしなが
    男の子と女の子で何が違うかって、抑圧ポイントの数なんですよ。男の子がエロ本を読んでいることが親にバレたり、エッチなことを考えている自分について誰かに相談するようなことがあったとしたら、「それは普通のことだから気にするな」と言われるわけです。それが女の子の場合は……親の対応は分かれるでしょうね。”『あのひととここだけのおしゃべり』p157

    私はBLも少女漫画も好きなのだが、すごい細分化されている。特にBL作品。
    ちるちるというBL作品を包括しているサイトがあるのだが、そこに会員登録するとめちゃくちゃ細かく作品を検索できる。トップとボトムのビジュアル、作品内でのプレイ内容、どういう世界観なのかという設定(学園モノリーマン等)。
    こんなに細かく設定されていて、さらに二次創作だと自分の作品に苦手な要素が含まれる場合、それを回避できるように読み手へ向けて、この作品はこんな内容が含まれますという説明書きがあったりする。
    売り上げすごくても映像化されても、刺さらない作品は多いし微妙なところでちょっと自分向けではないな…とか逆にマイナーだろうが「これ!これを求めていた!」となる作品もある。
    萌えポイントが細かいのは女性が抑圧されているポイントが多いからだという内容はすごく腑に落ちた。
    だからこそ『女はこういうのが好きなんだろ?』という姿勢が透けて見える雑な解像度の作品は本当に合わない。最近連発されているBL実写ドラマなんかがそれだ。原作のBL作品を作っているのが女性でも映像化になるとそこに他者の手が介入する。そして男社会だと言われるテレビ局を通すと一気に色が褪せる。作品を通して同性愛への差別に対して何らかのエンパワメントをするような振る舞いもなく、ただただ『いまは若いイケメンがいちゃついているのが女にウケるらしい』と作られている。
    実際に原作のファンだったのにドラマが全然魅力的じゃなかったこともあった。
    自分の好きなものを雑に扱われることがわからないわけないだろ。馬鹿にすんなと思う。

    また羽海野チカさんとの対談パートで二人とも『辛いときは漫画を読んでた!』って話をしていた。
    わ、わかる……。辛いとき私も漫画とか映画とか小説の世界へ行ってしまう。強い人間じゃないからそれは逃避する意味合いが強いのだけど。

    よしながふみと羽海野チカから聞く『自分で掴めるのってほんの少しだけだよね』。
    重い、重すぎる…。でもそうなんだよな。自分に起きることが全部コントロールできるわけないんだよな~。
    頑張りとかも全部が報われるとか思わないほうがいいし、そのほうが自分自身を追い詰めないよな…。そういうゆとりもちゃんと自分で作っていくことも生きることだよなあ~。
    それで生きていて「ヤダ!もうしんどい!無理!」っていうときには、漫画とか小説の力を借りよう。そうして自分のハンドルを握っていくしかない、のだ。

  • よしながふみって、どんな声でしゃべるんだろう?

    作家が語ってるのって、聞いたり読んだりする機会けっこうあるけど、
    漫画家が語ってるのって、そうないので、
    とてもおもしろかったし、いい本でした。

    どの道のプロもそうなのかもしれないけど、
    ここに出てくる漫画家たちは、ホントにマンガを愛してるな~。
    そして、ただ好きっていうんじゃなく、
    なぜ、どんな風に好きか、自己分析してる。

    私は、熱心なBL読者ではないけど、
    このやおい論がすごく的を得ていて、
    今後にヤバい影響がありそうな気がする。


    ていうか、志村貴子が同い年で驚き!
    よしながふみも同世代っていうので、よけいに共感するのかもしれないけど、
    なんかこの世代ならではの感覚ってある気がする。

    (三浦しをんが年下ってのもびっくり)

  • 色々凄い。『愛がなくても食ってゆけます』のYながはどこへ!?作品を読んでいて感性も頭の回転も良い人なのだろうなと思ってはいたけど、正直雲の上の人になってしまった。創作・表現している身にとっては、かなり打ちのめされる内容でもあった。

  • ハードカバー持ってるけど堺雅人さんとの対談読みたくて買った。買ってよかった…!!弁護士の仕事は正当性をはっきりさせることじゃなくて「落とし所」を見つけることだっていう言葉がとても印象的だった。

  • (実際に読んだのは2007年刊の太田出版版)
    よしながふみと、やまだないと×福田里香、三浦しおん(1・2)、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都との対談集。

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著者プロフィール

東京都生まれ。代表作の『西洋骨董洋菓子店』は2002年、第26回(平成14年度)講談社漫画賞少女部門受賞。2006年、第5回(2005年度)センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。ほかの作品に、『大奥』『フラワー・オブ・ライフ』『愛がなくても喰ってゆけます』『愛すべき娘たち』『こどもの体温』などがある。


「2022年 『きのう何食べた?(20)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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