ライフ

著者 :
  • ポプラ社
3.79
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162903

作品紹介・あらすじ

アルバイトを掛け持ちしながら独り暮らしを続けてきた井川幹太27歳。気楽なアパート暮らしのはずが、引っ越してきた「戸田さん」と望まぬ付き合いがはじまる。夫婦喧嘩から育児まで、あけっぴろげな隣人から頼りにされていく幹太。やがて幹太は自分のなかで押し殺してきたひとつの「願い」に気づいていく――。誰にも頼らず、ひとりで生きられればいいと思っていた青年が、新たな一歩を踏み出すまでを描いた胸熱くなる青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 今回のお仕事はアルバイト。大卒で2つの会社を退職し、只今、コンビニのバイト中。これだけだと生活が厳しいので結婚式等への代理出席のアルバイトをする。その結婚式場へ高校時代の同級生が現れ、恋の予感。
    小野寺さんの小説に出て来る主人公は淡々とした平凡な人間が多い。今住んでいるのは学生時代から八年も住み続けるアパート。上の階にガサツな男性が引越して騒音に悩まされるが、注意に行けない。偶然、この男性家族との接点ができたことから、次々と他の住人達との交流が出来る。
    親の離婚問題・母の再婚、隣人の不慮の死など、それなりに大きな出来事があるのだが、淡々と進んで行くのでスルスルと読み進められる。
    このまま先の希望も無くアルバイトで生活するのかと思ったが、最後に明るい未来が開けて来たような・・。

  • ライフはこの、小説の場合、「生活」と訳すのか、それとも「人生」と訳すのか?
    まあ、両方の意味が混在しているのだろう。
    小野寺史宣さんの作品は「ひと」に続き2作目だが、じわっと心の奥底に語りかけてくる感じがいい。

    ネットでこの本のレビューを探して流し読みしていたら、「自分には何もない、を切り開く小説」という感想があった。なるほど。

    小説の中で大きなことは起きない。
    淡々と主人公・井川幹太の生活が描かれている。
    幹太は27歳フリーター。大学卒業後2社ほど勤めたが、合わないのでやめて、コンビニのバイトで食いつなぐ暮らし。恋人もいない。

    仕事を得るわけでもなく、彼女を得るわけでもなく、この小説は終わってしまう。
    でも何故か安定している。
    幹太は山あり谷ありの人生を歩んで来たわけだが、この小説はそんな人生の穏やかな局面を描いている。

    幹太は、若くして、それほど広くない人間関係の中で、ある意味悟ってしまう。

    不惑の40代でありながら、毎日社会に振り回されて、己の未成熟さを痛感している僕としては、就職後、結婚後の幹太が見たい。

    続編を切望する。

  • バイト先や買い物など、住んでいるアパートからの行動範囲は徒歩十分圏内。バイト先以外で他者と関わることはほとんどない。もちろんアパートの隣人たちとの交流も皆無。日々の暮らしのサイクルもワンパターン。
    そんなひとり暮らしを淡々と送っていたアラサーの幹太の、鉄壁とも言えるバリアを次々に壊していったのはある家族との出逢いだった。そこから幹太の生き方や考え方は徐々に塗り替えられていく。

    ひとりで生きていることが当たり前に思っていた幹太にとって、カルチャーショックのような出逢い。
    静から動へ、幹太の気持ちも自然と突き動かされていく。
    そして少しずつ人との縁が繋がって、物事に対する考え方も広くて深いものになっていく。
    ひとりで暮らしはいても、ひとりっきりで生きている訳ではない。誰かとの関わりも、面倒な時もあるけれど、とても大事なことなんだ。
    人として、大人としての進む方向も徐々に定まっていく幹太。
    その出逢いは偶然だったかもしれないけれど、幹太自身の転機となって、いい方向へと導かれて本当に良かった。

  • 小野寺史宜さんの文章はちょうどいいんですよね

    遠くもなくかといって近すぎず
    そんな物語です

    本当に誰の身にも起きそうなごくごく普通の日常に誰の身にも起きそうな自分の身にも起きそうなちょっとした事件
    そんな中にちょっとした気付きを見出してちょっとだけ人生を前向きに変える

    現実はそのちょっとが本当に難しいんですが
    ちょっとを変えるためにちょっとだけ背中を押してくれる物語でした

  •  ひと、まち、いえ、を読んで小野寺史宜さんが大好きになった。

     日常が温かく、ゆったりとした時間の流れ。優しい文体と思いやりあふれる登場人物。この世界観が好き。4冊目の著書も、期待を裏切らない内容で人の温かさに包み込まれる感覚があった。

     「まち」に登場する井川さんが主人公で、筧ハイツの住人。興味がそそられた。

    おなじみの図書館、喫茶店羽鳥、荒川河川敷・・・。何度読んでもほっとできる素敵な場所だと思う。

     井川は道に迷っていた。そんな時に様々な人達と触れ合い、自分の求めているものに希望をもてるようになっていく。

     人はそれぞれの方法とタイミングで自分の居場所にたどり着く。きっかけは必ずどこかにある。と希望を与えてくれる物語だと思った。

  • 大きなことが起こるわけでもない。

    ただ一人の青年の淡々とした日常が綴られていく。
    とにかく余分な心情描写もなくテンポよい会話がただ続く。
    なのに読むにつれてじわじわくるこの感覚。この感覚がとても好き。
    人との出会い、交流、会話が心にもたらすもの。
    目に見えない変化。確実に変化していく毎日。
    こういう世界は何回読んでも良いな。ずっと触れていたくなる。

    そしてあえて飛び越えようとはしなかったラインを気づけばポンと軽々飛び越えているような清々しさ。
    こういう読後感が小野寺作品の最大の魅力かな。これがたまらない。

    • あいさん
      おっす(^-^)/

      今作も淡々としている感じ?
      私はあまり「ひと」にハマれなかったからこの作品もダメかなぁ?
      私はやっぱり狂って...
      おっす(^-^)/

      今作も淡々としている感じ?
      私はあまり「ひと」にハマれなかったからこの作品もダメかなぁ?
      私はやっぱり狂ってないと(笑)いい子は物足りない。
      でも、小野寺さん、いつか本屋大賞取りそうで読んでおきたい気がします。
      2019/08/14
    • くるたんさん
      けいたん♪
      そう、「ひと」系だねー。
      大きなことは起こらず、日常を淡々と…でも読後感良かったよ♪
      こういう作品が持ち味なのかなぁ。
      また新刊...
      けいたん♪
      そう、「ひと」系だねー。
      大きなことは起こらず、日常を淡々と…でも読後感良かったよ♪
      こういう作品が持ち味なのかなぁ。
      また新刊でるよね。
      ちょっと腹黒さを払拭したい時にぴったりだったわ(笑)
      2019/08/14
  • 「ひと」の柏木聖輔といい、この本の主人公の井川幹太といい、
    決して、順調に人生が進んでいるわけではないんだけれど、ジタバタしたり、ガツガツすることもなく、誰かを恨んだり妬むこともなく淡々と日常を営んでいる
    何とバランス感覚のとれた人物なんだろう

    2度も会社を辞め、コンビニと結婚式の代理出席のバイトを掛け持ちする27歳の主人公、井川幹太
    親から見れば、27にもなってと小言の一つも言いたくなるのだけど・・・

    大事件が起こるわけでもなく、アパートの住人やバイト先のおばちゃんとのやりとり、高校2年で同じクラスだった女友だちとの再会など、ごく普通の日常が淡々と語られていくのだが、それがとてもいい

    そして、その中で語られる言葉の端々に真実が隠されていたりする

    「やりたいことが特別なことである必要はないんだよなあ、そうなるわけないよなあって・・・」
    「それは要するに、やりたいことがないのはダメだと思ってたってことなのよね。やりたいことが何もない自分はダメだと思っちゃうっていう。で、それは要するに、人から見て、特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの」
    「でも、あのお芝居を観て、そうじゃなくていいのかもって思った。勝手に。少し、気が楽になったよ」

    「生きてさえいれば、人は何者でもあります」

    「人一人にできることは限られているから、仕事をするうえで大事なのは大きなものを見過ぎないこと」

    小野寺作品、まだ三作しか読んでいないけれど終わり方が絶妙!
    からりと晴れた日に、窓を開け放つと、明るい光と爽やかな風が入り込んでくるような感じ
    いい一日が始まりそうだなという予感を感じさせてくれるような
    感じ
    静かなふわっと包まれたような心地よい読後感がたまらない

  • 会社を辞めてコンビニのバイトで生活する井川幹太27歳、大学時代より同じアパートに住んでいる。アパートの他住民は昔は大学生同士で仲が良かったが、彼らは卒業後就職とともに引っ越しをしてしまった。井川の上の部屋に新たな住人、戸田が引っ越してきて、騒音等不快に思いながらも交流が始まる。
    こちらも暖かい雰囲気の物語。井川の日常が描かれているんだけれど、日常の中にも彼の心の中が、心の動き、希望が穏やかに描かれて読ませました。小野寺さんは身近なものを描くのがうまいのかな。明るい未来を感じる。井川のこれからの成長も見たい。

  • 登場人物ひとりひとりのもつ背景は結構深いものがあるのに、なぜかさらりとした軽さも持ちわせている、不思議な小説。

    主人公は、大学時代とおなじアパートの1階に住むコンビニ店バイトの井川幹太、27歳。
    大学卒業後、就職はしたものの、いろんなことがあってその会社を辞め、今の暮らしをしている。
    おなじアパートに住んでいたかつての学友たちは、みなそれぞれの道を歩むために引っ越していった。
    大家さんにはよくしてもらっているが、幹太は自分のアパートのどこにどんな人が住んでいるのかも、よくわかっていない。
    しかしある出来事から幹太は、自分の部屋の上に住む住人と知り合うこととなりる…

    主人公の幹太目線で話が進んでいくのだが、この幹太の語りというのがとても落ち着いていて淡々としている。
    そのせいなのか、主人公以外の登場人物たちの背景にはちょっとヘビーなものもあるのに、物語全体がさらっと軽みをおびていて、読み切れてしまうのだ。
    これは、幹太自身の気持ちは書かれていても、それに付随する感情表現が穏やかなせいかもしれない。

    さまざまな人たちとの出会いから、幹太は自分の道を
    自分の明確な意志で歩み始める。
    恋愛要素もあるし、生死を感じる場面もあるし、家族や夫婦のことを考えさせる場面もある。
    軽すぎるわけでもなく、浅すぎるわけでもなく、かといって深すぎたりも重すぎたりもしない。
    とても不思議な読み心地なのだ。

    帯には「(前略)胸熱くなる青春小説」の文字もみられたが、読んでみると「青春小説」というよりも、「井川幹太27歳現在の、人生小説」という印象を受けた。
    幹太とおなじような世代で、とりあえず日々の暮らしはしているけれど、でもなにかもやもやしたおもいを抱えている方は、ひとつの生き方として幹太の人生を読んでみてもいいかもしれない。

  • 特別大きな何かが起こるわけじゃないけど、幹太の人柄と、彼の気持ちが少しずつ変わっていく感じが心地好い。

    パート仲間の七子さんだったり、大家さんとのやりとりも、ほのぼので良い。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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