- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591158135
作品紹介・あらすじ
岩手県の「なかほら牧場」。ここでは、一年を通して山に牛を放牧しています。搾乳用の牛舎はありますが、牛たちは一年をとおして山で生活しています。だから、糞尿処理は自然まかせ。糞を肥料にして育った無農薬・無肥料の野シバを食べ、自然に交配・分娩し、山林と共生しています。ビタミン剤やミネラル剤、ホルモン剤なども一切使用しません。そして人間は、子牛の飲み残しを搾乳し、それを牧場内の施設で加工して牛の母乳を分けてもらうだけ。このような方法で行う酪農を、「山地(やまち)酪農」といいます。
「なかほら牧場」で山地酪農を営む中洞正さんは、「このやりかたなら自然の循環のなかで、たとえ1000年先であっても持続していくことができる」と言います。豊かな自然のなかで牛はのびのびと健康に育ち、人はおいしい牛乳を少しだけいただく。――本書は、中洞さんが山地酪農を完成させるまでを追いかけたノンフィクション読み物です。自然と人間がともにすこやかに生きていくすべを考えるきっかけになる一冊。
感想・レビュー・書評
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だれにでも読みやすく書かれています。
岩手県岩泉町で山地酪農(やまちらくのう)をされている『なかほら牧場』の中洞さんが牛にとっても人にとっても自然な酪農を目指し、山での放牧を行う山地酪農を定着させるまでのお話です。
これを読んでとても衝撃を受けました。
今まで何も考えず、私たちが飲んできた牛乳、そしてその牛乳を搾られる牛の暮らし、このままで大丈夫かな、と不安になりました。
人間でもそうですが、母親の食べ物によって母乳の味が変わり、脂肪分を多く含む食事をとる母親の母乳はドロッとしていて、魚や野菜を中心の食生活をおくる母親からは後味すっきりな母乳が出るので、本来牛が食べている草ではなく、飼料を調整して、牛乳を多く作れるような配合になっている餌を食べさせられる牛からの牛乳の味が変わるのも納得。
牛乳を飲む国民の為に、量、成分優先の牛乳を作るために、牛を無理をさせて、その結果、20年生きられるはずの牛の寿命は4分の1の5年ほどだそうです。
子牛も生まれてすぐに母親と離され、せまい牛舎から出ることもできず5年も管理されて死んでいく牛。
出産も人工授精で管理されていて、飼料によるものなのか、異常のある子牛も生まれてくるとのこと。
飼料もサイレージも輸入もので腐らないように、効率が良くなるように色々な操作をされて、そんな牛から絞られた牛乳を常時飲む私たちに、何も起きないはずない。
山地酪農は、自然に大部分を任せ、牛にストレスがかからない、放牧によって糞尿が堆肥になり、肥沃な土地になり、そして山の管理にもなる。
スローライフって色んな意味で大切で、人間は便利さ、効率の良さだけを追求していっては、色んな意味で、未来は狭まっていくのだろうな、と感じた1冊。
自然の牛乳、大量生産できないので、普通の牛乳より割高にはなるけれど見つけたら買って、志を持った酪農家を応援したいと思いました。
中洞さんは、近代酪農が増えていく中、地道な山地酪農に取り組み、それが理解されるまでずいぶんと辛い、苦しい時代を過ごしたそう。すごい人です。 -
山で自然に育てた牛から絞った牛乳、美味しいだろうなぁ。近代酪農とか農協の乳脂肪分3.5パーセントの強制とか、知らなかったな。低温殺菌牛乳だとビタミンも減ってしまうのか。
アニマルウエルフェア、動物も幸せに生きたいよね。
読んでよかった。こういう事がもっと知られるといいな。 -
山北「薫の牧場」の牧場主、花坂薫さんの御師匠のお話。すばらしい写真は報道写真家の安田菜津紀さん。
当たり前のことが、経済と各種制度のなかで成り立たない世界に、ひとりのオリジネターの苦闘の物語。 -
児童用本。一時間で読み終える。「プロフェッショナル」「逆転人生」を読んでいるような感じだった。牛舎で身動きできない状態での飼育はアニマルウェルフェアに反する。かつ重い糞の始末には多大な労働が必要だ。放牧飼育はそれらがない。正にSDGsだ。しかし牛乳の味はよいのに一定しない品質の為に市販の販路には登らない。一々を解決してなかほら牧場はその存在感を増す。
理想の牧場ではあるが、製品の値段は5倍以上。 -
人はもちろん、現代の多くの酪農で見過ごされる、乳牛のニーズを満たそうとする牧場。「千年後の未来を考えた酪農」、この言葉に酪農に限らず、これからの生き方も考えさせられる。
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フォトジャーナリストの佐藤慧が、2014年の夏から3年にわたり通って取材した牧場について書いた。牧場は、中洞正さんが経営する宮城県泉町にある「なかほら牧場」。この牧場は、放牧酪農の中でも山で放牧する山地酪農を行っている。
中洞さんの子どもの頃、生活の中に牛が当たり前にいた事、その頃から牛飼いになりたいと思っていた事、それから数々の苦難を乗り越えて、現在の形になったことを描いている。「中洞正物語」と言っても差し支えなさそうな本。
中洞さんの不屈の精神には驚かされる。自分が常識より自分を信じることが出来るのかを問われる。
食のこと、家畜のこと、世間、常識など考えさせられた。
また、この本を読んで、私はアニマルウェルフェアという考え方を知った。 -
児童書だけどすごく面白かった!!
そしてすごくわくわくな気持ちになった!
牧場のこと、牛乳のこと、自分はまだまだ無知だなあとつくづく思った。
牛を自然な気持ちで大切にしたいだけでビジネスじゃないんだな。
そして苦労の仕方も半端ない、自分もまだまだだなと思いました…。
放牧酪農と著者にすごく興味を持ち、別の本を早速購入してしまった。
牛乳も是非飲んでみたいなあと思いました。 -
酪農家さんて大変だ・・・
しかし、あふれる牛愛におおうってなる・・・すごい・・・
気が付けば写真の牛さんをかわいく思えてくる・・・ -
アニマルウェルフェアって大切なことだなあと思ったのと、これまでそれが言われていなかった(気づいていなかった)ことになんというかこの歳になって自分の傲慢さに直面してしまった酪農家の次男坊です。文章は子どもむけに書かれたものだと思います。写真は吹き出し入れなくてもよかったんじゃないかとも思いました。よい内容の本です。