今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。: 貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話 (ポプラ新書 も 2-1)
- ポプラ社 (2018年2月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591158029
作品紹介・あらすじ
奨学金はサラ金より本当に悪質か?
奨学金以外の選択肢はないのか?
教育格差は本当になくせないのか?
叩くだけでは解決しない、教育格差の突破口を示す!
◆本書の内容
奨学金を借りる大学生の割合は5割を超え、延滞者も約20万人と増え続ける一方だ。他方、メディアでは「奨学金タタキ」の言説が目立つ。また2018年からはいよいよ給付型奨学金もはじまるが、その欠点は各所で指摘されている通りだ。
しかし、奨学金制度を叩くだけで教育格差の問題が解決するなら誰も苦労はしない。今必要なのは、奨学金を含めた「教育とお金」にまつわるあらゆる問題の構造を冷静に分析し、建設的な議論を行うことだろう。
本書は、小学校から高校まで地方の公立学校に通い、親が家にいない収入ゼロの超貧乏生活のなか、奨学金のみで飢えを凌ぎ、独学で東京大学に合格。卒業後、各種の奨学金を受けてハーバード教育大学院で国際教育政策を研究した著者が、問題の本質をあぶり出し、改善のための前向きな提言を行う1冊である。
◆教育格差をなくす9つの提言
〈提言1〉外国人留学生奨学金の出身国枠の偏りをなくし大学授業料減免を拡大
〈提言2〉奨学金返済を所得控除に計算できる「奨学金減税」の実現を
〈提言3〉企業、財団、大学はもっと給付型奨学金を創ろう
〈提言4〉働きながら学べるオンライン・夜間主コースの拡充を
〈提言5〉地域で安価に学べるコミュニティ・カレッジの創設
〈提言6〉ふるさと納税による大学への寄付制度を
〈提言7〉大学生が選挙に行くことが高等教育政策充実につながる
〈提言8〉個人が個人を支援する21世紀型「あしながおじさん」
〈提言9〉予備校の必要のない社会が教育格差をなくす
◆目次
プロローグ 親の年収ゼロだけど奨学金で東大・ハーバードに行けた
第1章 検証「奨学金地獄」――なぜ奨学金は社会問題になったのか
第2章 貧乏でも東大に行けるのか?――日本の「教育とお金」
第3章 海外の教育事情と奨学金制度
第4章 教育格差をなくすための9つの提言
あとがき――「希望という光」を次の世代に
感想・レビュー・書評
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著者の経験のみならず、データでの裏付けがあるので説得力があった。
奨学金に関して、ずっと"借金"と思っていた部分もあったが、ただ"借金"という言葉だけが一人歩きしていて、もっと本質を見る必要があった。
ただの奨学金肯定だけでなく、教育関係という分野において考えるような内容。
学生だけではなく、親や教育関係者も是非読んで欲しい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
制度を知っとくこと大事、以上終わり。
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「ブラック奨学金」「奨学金地獄」など、最近とにかく悪者にされる奨学金。
そんなセンセーショナルなフレーズに怯えて、進学を諦める、もしくは諦めさせられる子どもたちもきっと多いだろう。
高校時代から奨学金を受け、大学では学費免除も受けながらアルバイトにも励んで東京大学を卒業した著者にとって、奨学金は「16歳の頃にもらった『希望の光』」だった。この本を著した今もまだ奨学金返済中だという。
奨学金を返せずに苦しむ人が増えているというが、「大学全入時代」とも言われる現代、そもそも奨学金を借りる人が激増していて、借りている人を分母にすると、返せない人のパーセンテージはむしろ減っているという事実を、著者ははじめに淡々と述べている。そして、日本学生支援機構を代表とする貸与型の奨学金を悪者にして叩く風潮に対して、著者は疑問を投げかけている。
この本の好ましいところは、現状に対してさまざまな提言がなされている点である。その全てがとても有意なものと感じられたが、私が特にいいなと思ったのが
・奨学金返済を所得控除に計算できる「奨学金減税」
・働きながら学べるオンライン・夜間主コースの拡充
・クラウドファンディングで個人が個人を支援する「21世紀型『あしながおじさん』」
という3点だ。
詳しくは是非本書を手に取って読んでいただきたい。
何かを悪者にして現状を嘆くだけでは何も解決しない。いやらしい表現だが、子どもはこの国の大事な貴重な資源である。もちろん大学が全てではなく、あらゆる教育の機会をすべからく子どもたちが享受できるように、さまざまな建設的な取り組みがなされることを願いたい。
子を持つ人、教育者、為政者などあらゆる人に読んでほしい良書。 -
昨今マスコミが騒ぐ”奨学金”問題を客観的に分析し、(高等)教育とお金にまつわる問題を冷静に論じています。冷静なだけにまともな意見であり、昨今の”奨学金叩き”のような内容と比べたらあんまり面白くないかもしれません。「日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金はサラ金より酷い」とか、「金持ちじゃないと東大には行けない」のような、新聞・週刊誌、テレビなどで散見される極端な論調は正しくないとデータを使って反論しています。が、そもそもそういうのは極端な例を取り上げているわけで、マスコミというのはそういうものであり、総論としては著者の言うとおりだと思います。現状でも授業料免除などもあるし、奨学金の大半が貸与とは言っても、銀行のローンに比べれば無利子か非常に低い利子なわけでその利子の差額は実質的には給付されている面もある。他にもいろいろと学費の援助を受ける方法はあるわけで、貧しい家庭に育っても、本人が望んで能力があれば希望する教育が受けられるようになるためには、本人もそれなりに情報を得て戦略を練ることが必要なようです。奨学金もクラウドファンディングのような仕組みで個人が応援者を募って得るというアイディアはこれから実現されていくかもしれないと思った。
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奨学金にまつわる様々な問題を、メリット・デメリットどちらかに偏ることなく、豊富なデータをもとに分析しています。日本社会の教育とお金を考えるうえで必読の書だと思います。本の中で提言されている「奨学金減税」はぜひ実現してほしい。
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50096793 -
経済的困難にあったとしても「教育の力によって貧困の連鎖から脱せられる」ように
そう願う著者の思いを強く感じられる本。
教育費の支援としての各種奨学金や大学授業量免除制度、高等教育機関の学費や学校間の影響、海外の奨学金や学費事情などを紹介していく。
奨学金問題というには日本学生支援機構に、日本の高等教育というには都内の高校と東大に偏ってはいるが、奨学金問題を越えた広い問題意識が著者にあることがわかる。
それもそのはずで、著者は凄まじい経済的困難な家庭環境に育ちながら、複数の奨学金を利用して東大、ハーバードとトップの高等教育を受けた経歴を歩んできたのである。
いや、それもそのはず、ではない。このような苦しい過去とその後の輝かしい成功の後で、依然として苦しい人達の立場に思いを馳せて問題意識を忘れず行動をするのは容易ではない。
そうかといって、本書では著者が自身の経験に影響を受けて感情的になったり経験に依存した知識の偏りが目立つということはなく、筆致は冷静でデータを多く引用しながら論理的に話を進めている。話の説得力は強い。
第4章「教育格差をなくすための9つの提言」はどれも硬軟織り交ぜた内容で、興味深く示唆に富む。
心も動いたし、大変勉強にもなりました。 -
800+税
貧困層に向けた本。中間層だと学びにはなるが役には立たない内容。最後の内容は他国と日本との比較などこうなればいいなという話。