ママたちが非常事態!?: 最新科学で読み解くニッポンの子育て

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591152751

感想・レビュー・書評

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  • 数時間で読み終わった。育児で疲れてても読みやすい。
    要点は番組HPでも読める。

    夜泣きについて。胎児の頃は昼夜問わず寝てるので、産後数ヶ月はそのリズムを引きずってる。また、睡眠中の脳の信号を身体に送信するのをブロックする機能が未発達なので、脳波は寝てても動いたら泣いたりする。そこで抱っこしてあやすとほんとに起きてしまうのでよくない。研究者曰く、10秒ほど様子を見るのがおすすめとのこと。

    人見知りについて。はじめは母親しか認識してなかったのが、成長につれて他人を認識するようになると怖がるようになる。成長段階の途中ということ。野生の動物と同様に目を直視すると威嚇になるので、目を合わせずに体を近づけるのが良いらしい。

    イヤイヤ期について。脳の発達段階の途中ということ。欲求などを司る部分が発達したあと、衝動を抑える実行機能がまだ未熟な段階。回避する方法はなく、発達段階だと思えば楽になるという感じ。
    実行機能を鍛える方法が紹介されてる。カードを使ってルールに基づいて我慢させる方法。口で言うと恐怖で抑え込むことになるので、カードは良さそう。

    父親の脳の変化について。母親は妊娠中や出産時に脳が大きく変化し、赤ちゃんの泣き声にびんかんになったりする。父親も、育児をすると母親ほどじゃないけど同様に変化をすることが実験で確かめられている。とはいえ、同じ役割を期待するのじゃなく、ある意味で、一歩離れて冷静な役割がいるほうが家族全体としては良いんじゃないか、という感じ。

  • 子育てにまつわる様々な悩みを科学の立場から解明する。発想が理系だなあ(しかも、さすがにダーウィンが来たの担当だと思わされる見事な動物との比較)と感心するとともに、現代の母親が理詰めで子育てに立ち向かわないとやっていけない辛さを表すようでもあり、なんとも微妙ではあるが、色々な悩みが科学的に証明される様は面白い。

    人見知りやイヤイヤ期の謎が脳科学から明かされる。抑制能力(我慢できる力)が将来の犯罪防止に役立つかもというアプローチは面白くもあり、グリッド云々同様、アメリカ的なアプローチだなあと。それだけ貧困格差と犯罪率が高いということなんだろうなあ。

    個人的には、「妻のトリセツ」の筆者も述べていた、女性に特有だと言う「女性同士の経験の共有」(=井戸端会議)が非常に苦手で、産後女性の「ママ友を求める気持ち」はそこまで共感できるものではなかったので、自分はチンパンジーから分岐できていないのではないかと危惧を覚えた。が、たしかに自分でコントロールできない子供の時間軸に振り回されることからくる焦燥感や社会からの孤立感、疎外されている感、強い感情の発生を思い出すときに、その裏に複雑なホルモンと脳の働きがあったのかと思うと、なんとも感慨深い。

    最終的には、種によって固定されているはずの子育て方法が、現代の人間だけは柔軟なのだから頑張ろうという前向きな結論。動物との比較ではまさにそうで面白いのだが、これを最近読んでいるフェミニスト的な著者たちの視点を借りて読むならば、だからこそ現代女性の苦悩が増長されている気もする。

    大半が農業や狩猟という第一次産業で生計を立てていたならばいいのだろうが(しかも男子に狩猟等を教えるという点で、教育=父親という流れがあった)、現代は男女どちらでもできる仕事がメイン。子育ても小中高大と男女の差もない→実質全て母親の負担。共働きが過半数の状態の中、「科学的に男性脳に母脳を求めることはできないので、男性が女性と同等に子育てできないのは男性が悪いわけではないですが、共働きでいっしょに子育てしていきましょう」というのでは、結局常に母親がストレスを溜めながら、「これは科学だ」と自分にマントラを唱えながら耐える状態が続くのではないかと思ってしまう。いっそここまで科学科学というのなら、育児をする男性には男性脳を母脳に変えるホルモン治療とか脳手術とか「科学的な」方法はないものかと思ってしまう。いずれにせよ、育児問題を脳科学的アプローチとフェミニズム的アプローチ両方から考える機会になって面白かったです。

  • 170226読了。
    子育てで起こる子どものこと、母体のこと、不思議な感情。
    今まで「こういうものだ」「じきにおさまる」なんて適当なこと(?)が書かれた書籍やネットの書き込みしか見つけられず、なんだかもやもやしたものだが、本書の科学的に解析したという視点が、とても刺激になり読んでスッキリした。
    もちろん答えが全部出たわけではないけれど、どうして子が生まれると他の赤ちゃんを目で追ってしまったりかわいく思うのか?
    どうして大好きなパートナーにイライラしてしまうのか?
    の言うのが脳の解析、生態系からのアプローチで根拠が示されていて面白かった。
    NHKの番組もアーカイブで見てみたい。

  • 「育児不安」「ママ友現象」「夜泣き」「イヤイヤ期」「夫へのイライラ」などの原因を科学的に説明してくれている。純粋に知識として面白い。子育て中の夫婦には必見。ストレスを低減させ、前向きに子育てに取り組めるのではないかと思う。良書。

  • 子育てが楽しくない
    育児に孤独と不安を感じる
    わが子がかわいく思えない

    赤ちゃんの夜泣きの理由
    人見知りと脳の発達の関係
    イヤイヤ期はなぜ起こるか

    日本の母親たちが直面する子育ての苦難を「非常事態」ととらえ
    経験則では解決できない問題点を最新科学の目で読み解く

      ママたちへ。
      子育てがつらいのは、決してあなたのせいではありません。

    2016年1月と3月に放送された番組のエッセンスと裏話で構成


  • 人間の子育てが難しい理由と、その解決策
    〜科学的根拠から導かれる子育ての本質と新たなヒント〜

    はじめに

    皆さんは、子育てに苦しんだり、イライラしたりした経験はありませんか。わたしは多いにあります。
    「なぜ子どもはこんなに育てにくいのだろう」と疑問に思ったことはないでしょうか。確かに、子育ては喜びに満ちた素晴らしい経験ですが、同時に多くの困難も伴います。本書は、科学的な視点からその理由を探り、子育てが楽になるヒントを提示しています。

    本書を読み進めると、子育ての難しさは決して個人的な問題ではなく、人類が長年かけて獲得してきた子育ての伝統が失われつつあることに起因していることが分かります。つまり、私たちが感じる子育ての苦労は、自分自身の問題ではなく、社会環境の変化に起因するものなのです。本書の目的は、皆さんの育児に伴う心の負担を少しでも軽くし、新たな育児スタイルのヒントを見出していくことです。

    第1章 人間の赤ちゃんが異質で育てにくい理由

    人間の赤ちゃんが異質で育てにくいのには、3つの大きな理由があります。

    第1は「夜泣き」です。夜泣きは、赤ちゃんが胎児時代の睡眠リズムの名残りとして起こす現象です。胎児は、母体への酸素消費を控えるため、夜間に目を覚ます習性があります。この習性が生まれた後も数か月は続くため、夜泣きが起こるのです。

    第2は「人見知り」です。これは、脳が発達して他者への興味が芽生え、目を合わせたくなるためです。しかし、恐怖心を抑制する脳の機能が未熟なので、泣いてしまうのです。

    第3の「イヤイヤ期」は、欲求を抑制する前頭前野が未発達な時期に当たります。湧き上がる欲求を抑えられないので、イヤイヤが生じるのです。

    このように、人間の赤ちゃんが難しいのは、脳が未熟な状態で生まれてくるためです。人間は二足歩行により産道が狭くなり、脳が発達する前に産まれざるを得なくなりました。長期間の子育てが必要になったことで、人間の子育ては困難を極めているのです。

    動物の中で夜泣きをする動物は、人間だけという事実に衝撃を受けました。
    2-3歳の知能は、タコと同等程度だそうです。
    高度な脳を手に入れた代償に、未熟な脳で子供を産まねばいけない人間の仕組みがあるのだと学びました。

    第2章 母親の体の仕組みと育児環境のギャップ

    子育ての大変さには、母親の体内の仕組みと現代の育児環境のギャップも関係しています。

    出産後の女性ホルモンの急低下で、母親は不安や孤独を感じやすくなります。しかし、この仕組みは本来、子育ての協力者を求める合図だったはずです。700万年前の人類は、大家族や血縁コミュニティで子育てを分担する「共同養育」を行っていました。母親が不安を感じれば、周りの人に助けを求めることができたのです。

    ところが現代では、核家族化が進み、地域のつながりも希薄になっています。共同養育の仕組みが失われつつあるため、母親は孤立した状態で子育てをする羽目になってしまったのです。母親の体の仕組みと現代の育児環境が、ミスマッチを起こしているためにストレスが生じているのです。

    第3章 科学的視点から見た子育ての本質

    科学的な視点から見ると、子育ての本質とは何でしょうか。

    人類が700万年の歴史の中で獲得してきたのは、「共同養育」の形でした。母親一人で子育てをするのではなく、血縁者や地域社会全体で協力し合いながら育てていく。この方法こそが、人間の子育ての本質なのです。

    しかし、ここ100年足らずの間に、この伝統が失われつつあります。そのため母親は孤立し、協力者のいない環境で一人で子育てをしなければならなくなったのです。

    ゆえに、私たち現代人が感じる子育ての苦しみは、個人的な問題ではなく、共同養育の伝統が失われつつあることの表れなのだと言えます。人類がこれまでたどってきた道からは逸脱してしまい、母親一人で全ての重荷を背負わされるようになってしまったのです。

    第4章 新たな共同養育の形を探して

    人類が長年かけて獲得してきた共同養育の伝統が失われつつあるからこそ、皆さんは子育てに苦しんでいるのです。本書は、新たな共同養育の形を取り戻すことが解決策だと提案しています。

    具体的には、夫婦の対話が重要とされています。会話は、お互いの絆を深め、パートナーとして協力し合う関係を築くためのものです。妻が子育てで感じる不安やストレスに夫が耳を傾け、理解を示すことが何より大切なのです。

    また、祖父母などの協力を得ることも一案です。かつては三世代同居が当たり前でしたが、現在は核家族が主流です。しかし、祖父母の助けを借りることで、実質的な共同養育が可能になるかもしれません。

    このように、失われつつある伝統を現代に置き換えた新たな形を見出すことが、子育ての苦しみを軽減する鍵なのです。

    おわりに

    本書から分かったことは、皆さんが感じている子育ての困難は、決して個人の問題ではないということです。長年の伝統が一気に失われてしまったために起きた、環境の変化に起因する問題なのです。

    お読みいただいた皆様には、育児が大変だと感じるのは、自分のせいではないと気づいていただけたのではないでしょうか。心の重荷がごくわずかでも軽くなれば幸いです。そして本書が、新たな育児環境の構築に向けた大きなヒントになりますように。

  • 共同養育、イヤイヤ期、イクメンパパとオキシトシン等、雑多なトピックが比較的良く整理されていり思った。

    特に母性が経験で育まれるもの、というのは新しい知見だった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/703352

  • 自分のイライラや不安の理由がわかってすごく楽になった。

  • 【いちぶん】
    実は動物の中で、大切なわが子を他人の手にゆだねることができるのは人間だけだといわれています。
    (p.84)

    共同養育を求める母の体の本能と、現代の孤独な育児環境、そのギャップに母たちは苦しむ。それこそが“現代ニッポンの母の7割が育児に感じる孤独 ”の正体だと考えられるのです。
    (p.86)

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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