お化けの愛し方: なぜ人は怪談が好きなのか (ポプラ新書 あ 4-1)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591150948

作品紹介・あらすじ

<現代の知の巨人〟荒俣宏が出した〝人生の答え〟とは!?>  
お化けは「怖い」。そうしたイメージは、いつから生まれたのか。
「牡丹燈篭」や「雨月物語」。タイの怪談に、西洋恋愛怪談の「レノーレ」。幻の書『情史類略』……。
その起源を探る中で見えてきたのは、実は人間とお化けは仲良くなれるし、恋だってできるという、新たな価値観だった――。
ジャンルを越えて語りつくす、これぞアラマタお化け学終着点の一冊!

<一部見出し>
・起源はなんでも中国か?――志怪と伝奇
・人生を幸福にする要素としての「お化け」
・乱歩の「怪談入門」が発掘したもの
・近代怪談の初代ヒット作、『剪燈新話』
・浅井了意翻案で日本化した「牡丹燈籠」
・怪談の背景に戦争と伝説がある
・西洋お化けの革新も恋愛物に始まった
・平田篤胤による日本の幽冥界維新

<プロフィール>
荒俣宏(あらまた・ひろし)
作家。博物学者。1947年東京生まれ。武蔵野美術大学客員教授・サイバー大学客員教授。『帝都物語』がベストセラーになり、日本SF大賞受賞。『世界大博物辞典』でサントリー学芸賞受賞。
神秘学・博物学・風水等多分野にわたり精力的に執筆活動を続け、著書・訳書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 古書店でたまたま見つけてなんとなく購入。しばらく積んであったが読み始めたらすこぶる面白かった。

    てっきり荒俣宏氏がお化け愛、水木しげる愛を語るエッセイだと思い込んでいた。ところが。
    さすがの博覧強記の人だけあって話はどんどんと広がりを見せていく。

    なかでも興奮したのは日本の怪談のなかでもよく知られている「牡丹灯籠」をめぐる話。

    これ、明時代の中国を生きた瞿佑(くゆう)という人が書いた怪談集『剪燈新話』のなかの「牡丹燈記」という話がもとになっているらしい。これはタイやベトナムやドイツなどにも伝わり、幽霊と現世の人とのラブストーリーを生み出した。

    (本書で荒俣氏は、日本の怪談のルーツである中国の怪談に多くの紙面を割いているわけだが、中国で上の怪談集や『聊斎志異』などの傑作が生まれた原因を、ひとつには「科挙」試験に失敗したエリートたちに求めているところが興味深い。いわば、現実逃避の手段としての怪談、というわけだ。だからこそ、この世ならざる女性との恋愛譚も生まれたのだという。)

    ちなみに『剪燈新話』は上田秋成も読んでいて、「牡丹燈記」はあの怪異譚の傑作『雨月物語』でも翻案されて出てくる。そのひとつが「浅茅が宿」。いまの千葉県に伝わる怪談話とうまく融合させ、日本風にアレンジされている。

    上田秋成は、出会う人出会う人を殺してしまう、幽霊の姑獲鳥(うぶめ)としての側面は、「吉備津の釜」として、別の話にアレンジした。この姑獲鳥、ヨーロッパでは、「ゾンビ」に姿を変えているとの指摘。なるほど!

    さてこの「牡丹燈籠」、明治期には三遊亭圓朝によって語りとして練り直された。この話し言葉が速記録として残され、それを読んだ二葉亭四迷が「言文一致」の文章の参考にしたとか。まさかこんなところにたどり着くとは思いも寄らなかった。ちなみにあの『怪談』をものした小泉八雲もまた圓朝の怪談牡丹燈籠を聞いたとか聞かなかったとか。
    (彼が聞いてる姿が目に浮かぶようだから私の中ではすでに聞いたことになっているが)

    そして本書は「平田篤胤の幽冥界維新」で締めくくられる。いわば理論編。
    平田篤胤は若くして亡くなった妻の織瀬(おりせ)と会う、あるいは交信するために幽冥界を研究したのだというロマンティックな荒俣仮説。

    妻と再会するには、古事記以来の穢れた黄泉の国を刷新する必要があった。イザナギが亡き妻のイザナミを追って黄泉へ降りていくと、見るも無残な姿に変わり果てていたというあれだ。

    黄泉は汚れた世界ではなく、こちらの世界からは見えないだけでちゃんと実在している世界である。それを実証するための研究だったというのだ。

    (ちなみに2だが、島崎藤村の父はこの平田学派に属していた。小説『夜明け前』はそんな父が「明治維新に夢を託し、その夢を明治政府が次々押しつぶしていくプロセスを描いた大作」らしい。一生読まないだろうなと思ってたけど、そういう視点からなら、面白く読めるかもしれない。)

  • 相当面白かった!
    一言でいえば死者との恋愛についてだが、
    洋の東西を問わず、時間も空間も幅が広い。
    そして文芸史、文化史、死生観、歴史、人のメンタル、文化受容史、表象史、怪談史と射程が広い。



    内容説明
    お化けは「怖い」。そうしたイメージは、いつから生まれたのか。『牡丹燈籠』や『雨月物語』。タイの昔話に、西洋恋愛怪談の『レノーレ』。乱歩が見出した幻の書『情史類略』…。怪談の起源を探る中で見えてきたのは、実は人間とお化けは仲良くなれるし、恋だってできるという、衝撃の価値観だった―。この本を読めば、あなたも「あの世」に行きたくなるかも?

    目次
    まえがき
    第1章 お化け愛の始まり―日本に登場した新しい怪談
    第2章 馮夢龍と「解放の怪談」
    第3章 怖い怪談の呪縛―日本の場合
    第4章 お化けとの恋愛が認められるまで
    第5章 日本に広がった「牡丹燈記」
    第6章 町人文学の大暴れ―『牡丹燈籠』から『聊斎志異』へ
    第7章 怪談愛の至高点『雨月物語』
    第8章 アジアへヨーロッパへ―『メー・ナーク』と『レノーレ』
    第9章 西洋でも、生死を越えた恋が成就した!
    第10章 圓朝版『牡丹燈籠』と文章変革
    第11章 駒下駄の音と新しい演出
    第12章 霊との共同生活、ついに実現!
    おわりに
    あとがき

  • お化けとの恋愛をテーマにお化けを掘り下げる本でした。
    中国の『剪燈新話』に収録された『牡丹燈記』がアジアに広がり、日本では『牡丹燈籠』となり幽霊と人との恋愛物語が受け入れられる様子や当時の社会から外れてしまった人々が現実を忘れるかのようにお化けに惹かれる話は面白かったです。
    『怪談牡丹燈籠』を聞いてみたくなりました。

  • 荒俣宏先生による最後となるかもしれない「お化け学」の本です。お化けを愛するという最高の愛情表現について、中国や日本の文化・文学を中心に東南アジアやヨーロッパにまで視野を広げて書かれています。「ゴースト/ニューヨークの幻」や「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」など死を乗り越えた男女の恋愛を描いた作品の源流といえるだろう中国や日本の古典を紐解きながら触れているうちに、だんだんあの世も良いところなんではないかと思うようになってきます。最近流行りのゾンビも実は昔から脈々と受け継がれてきているんですね。

  • 「愛されるお化け」についての本かと思ったら、お化けとの恋愛についての本だった。
    中国・日本・タイなどアジア圏の話が多い。
    西洋は最後に少しだけ出てくる。
    中国編は面白かったし、日本の『雨月物語』についての言及も面白かったが、思ってた内容と違ってたので瀕死状態で読んだ。
    欲を言えば西洋のページがもっと欲しかった。

  •  お化けの愛し方というより幽霊美女の愛し方。
     三遊亭圓朝『牡丹灯籠』では、美女お露の履き物の音を当初は「カラコロ」とし、幽霊と露見してからは「カランコロン」に変えている。さすがは稀代の噺家。怖さの勘どころを解っておいでだ。
     本書に触れられていないが、カランコロンと言えばゲゲゲの鬼太郎の下駄の音。水木先生は知ってか知らずか、圓朝のオノマトペを継承していた。

  •  古くは中国の怪奇譚から、それがいかに日本に伝わり、怪談として人の心をひいたのかを教えてくれる。怪談の原型もおもしろい。

     現実が満たされないから、幻想の世界で夢を見たいと思うのは、今も昔も変わらなぬ人の性なのだろうな。
     お化けを愛するものに悪い人はおるまいって気持ちになる。

  • これからの季節にはピッタリかも。
    荒俣さんの存在はずっとおもしろいと
    思っていて、著作をいつか読みたいと
    思っていたところに新書が出ていて読んでみた。
    お化けと聞くと怖い話だと単純に思ってしまうけど
    考えてみればどのお化けにも出てくる理由があり、
    元々生きていたのだからその理由にも人間味がある。
    それが恋愛怪談なるものならばストーリーも
    面白く、現代人でも楽しむことができる。
    怪談の歴史や解説に加えて『剪燈神話』や『牡丹燈籠』、
    『雨月物語』や『レノーレ』といった作品も
    載せられているから話を楽しみながら読める。
    それにしても時代だから仕方ないけれど
    当時の女性の扱いがひどい。

  • 「<現代の知の巨人〟荒俣宏が出した〝人生の答え〟とは!?>  
    お化けは「怖い」。そうしたイメージは、いつから生まれたのか。
    「牡丹燈篭」や「雨月物語」。タイの怪談に、西洋恋愛怪談の「レノーレ」。幻の書『情史類略』……。
    その起源を探る中で見えてきたのは、実は人間とお化けは仲良くなれるし、恋だってできるという、新たな価値観だった――。
    ジャンルを越えて語りつくす、これぞアラマタお化け学終着点の一冊!

    目次
    お化け愛の始まり―日本に登場した新しい怪談
    馮夢龍と「解放の怪談」
    怖い怪談の呪縛―日本の場合
    お化けとの恋愛が認められるまで
    日本に広がった「牡丹燈記」
    町人文学の大暴れ―『牡丹燈籠』から『聊斎志異』へ
    怪談愛の至高点『雨月物語』
    アジアへヨーロッパへ―『メー・ナーク』と『レノーレ』
    西洋でも、生死を越えた恋が成就した!
    圓朝版『牡丹燈籠』と文章変革
    駒下駄の音と新しい演出
    霊との共同生活、ついに実現!

    <プロフィール>
    荒俣宏(あらまた・ひろし)
    作家。博物学者。1947年東京生まれ。武蔵野美術大学客員教授・サイバー大学客員教授。『帝都物語』がベストセラーになり、日本SF大賞受賞。『世界大博物辞典』でサントリー学芸賞受賞。
    神秘学・博物学・風水等多分野にわたり精力的に執筆活動を続け、著書・訳書多数。」

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:新書/388/アラ
    資料番号:10239493
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著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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