転んでも、大丈夫: ぼくが義足を作る理由 (ポプラ社ノンフィクション)

著者 :
  • ポプラ社
3.60
  • (6)
  • (10)
  • (11)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 148
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591150726

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者は義肢装具士として義足を作る臼井二美男さん。日常用の義足はもちろん、スポーツ義足の第一人者としてパラリンピック選手の義足も作っています。そんな臼井さんが義足作りを始めたきっかけ、義足作りへの思い、患者さんとのエピソード、そしてその患者さんたちが語る言葉が入っています。

    2017年読書感想文コンクール課題本ということですが、これはとても良い本でした。
    病気や事故で足を失った人は、痛みや、病状の変化や、世間からの注目を恐れて引きこもりがちになってしまうこともあります。それでは義足装具士として患者さんにできることはなんだろう?患者さんに向かい合い、体のケアはもちろん心にも向き合わなければなりません。臼井さんの心構え、患者さんの要望を聞いて、患者さんが納得する方法を一緒に考えていきます。技術者として「ここまこうします」と押し付けすぎず、無理だなと思っても「それは無理じゃないかな、、」などの言葉は使わず、患者さんが試したいものを試して患者さんも技術者も納得する方法を目指していく。この気持ちは人と人が向かい合う姿勢としてとても大切で、自分はできてないので見習わねば!と思えました。

    そんななかで、臼井さんは海外では作られていたスポーツ義足に出会いました。「義足でもまた走れるようになる」それを示すことにより患者さんに目標が生まれることもあります。
    足を失うことは体も心も大変な負担で悩みだらけ。そんな患者さん達も気持ちはうちにこもってばかりでは有りません。義足でもお洒落をしようとファッションショーを開いたり、協議に挑戦してパラリンピックに出場したり自分自身のできることに挑戦したり発信していきます。
    そんな経験が、義足作りの臼井さん、その義足を作る患者さん双方の言葉で丁寧に語られています。

    義肢の人たち同士の交流の話も初めて知ることばかりでした。臼井さんが始めた義足ランナー練習会では、先輩ランナーが新しく入った人たちに義足の使い方や、気持ちの持ち方などを教えたり、見守ったりしています。
    心身のことなので、良いことばかりでは有りません。技術者同士の考えの違いが合ったり、昼夜を問わずに打ち込む臼井さん自身が倒れてしまったり、義足競技者も思うように体が動かせなかったり、一番つらいことには患者さんが亡くなってしまうこともあります。

    義足ランナーたちの話もあるので、義足を使うことの感覚も語られます。「スポーツ義足では義足のほうが体より先に飛んでしまうので慣れるまでは大変だった」というのはまさに生の感覚ですよね。

    題名の「転んでも、大丈夫」は、先輩義足ランナーや臼井さんのような技術者スタッフさん達が患者さんを見守る気持ちの現れの言葉です。義足の人たちは転ぶことへの恐怖心が強く、実際に転んだら大怪我したり、病状により義足の細かいケアが必要だったりと悩みがつきません。転んだら立ち上がればいい、一人で起き上がれるようになるのも練習。走るのも転ぶのも起き上がるのも上手になっていきます。「転んでも、大丈夫」

  • 『転んでも、大丈夫 ぼくが義足を作る理由』義肢装具士・臼井二美男さんイベントレポート | イベントレポート | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/article/537743

    『転んでも、大丈夫 ぼくが義足を作る理由』義肢装具士・臼井二美男さんインタビュー |インタビュー|トピックス|ポプラ社
    https://www.poplar.co.jp/topics/42410.html

    転んでも、大丈夫| ポプラ社ノンフィクション| 児童読み物(国内)| 本を探す|ポプラ社
    https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/4047026.html

  • 義肢装具士の臼井二美男さんのお話し。

    臼井さんは、ひょんなことから義肢装具士になり、一生の仕事としてのめり込む。

    臼井さんの、人をバックアップする姿勢(押し付けがましくなく、その人がやりたいことを優先する)、究めたいという職人気質が、義肢装具士を天職にしているのだなと、しみじみ感じる。

    スポーツ用の義足を作るのに試行錯誤していたとは。
    アメリカの写真を見ながら、作り方もわからない中、見よう見まねで作ったという逸話が、意外だった。

    もっと確立されている世界だと思っていたので。
    臼井さんと、義足を使う方々の並々ならぬ熱意が伝わってくる本でした。

  • これまで、義足を使っている人に巡り合ったことが無かった。東京オリンピックの招致スピーチで谷真海さんの紹介映像を見て、ああ綺麗だなと思った。「義肢装具士」ってどんな仕事なんだろう。そう思い、この本を読んだ。
    著者の臼井さんは、28歳で「一生の仕事」に巡り会い、現在に至る。私は色々な仕事をしてきたけれど、どの仕事もそれぞれに素晴らしい仕事でやり甲斐があったけれど、一つの仕事をずっと続けてくることが出来なかった。「一生の仕事」に巡り合うことが出来た人は、仕事に生き甲斐を見出すことが出来た人なのだろうな。臼井さんのことが羨ましい。
    「諦めない」を手助けしたいから、義足を作り続ける臼井さん。義肢装具士は、患者さんの可能性を生かすことも殺すこともできるという言葉が心に残った。教員も学校司書も同じだと思う。スポーツ義足にも、国の助成金が出るようになることを願う。
    人が義足になる理由は、血液の巡りによる病気が75%、次いで事故による怪我、腫瘍、その他となっている。残された人生、義足になる可能性もある。「生きる」ということ、「生き方」を考えさせられた本だった。

  • 義肢装具士(ぎしそうぐし)の臼井二美男(うすいふみお)さん。
    義肢装具士とは、生まれつき手足のない人や、病気や事故で手足をなくした人に、そのかわりになる義手や義足を作る仕事です。

    ブラジルのオリンピック、パラリンピックではオリンピック選手だけでなく、パラリンピックでの活を知りました。そして東京オリンピック、パラリンピックが2020年に開催されることもあって、テレビでもパラリンピックで活躍するアスリートたちの姿をよく目にするようになりました。
    そんなパラリンピックで活躍するアスリートを支えているのが、義手や義足です。

    臼井さんは、日本ではじめてカーボンファイバーを使った、板バネ式のスポーツにも対応した義足を作った人です。
    義手・義足が、手足を失った人の希望になる。
    多くのアスリートたちと義足を作ってきた臼井さんの、真摯な仕事ぶりと心根がいい。

  • 優しい義肢装具士の仙人の熱い気持ちと覚悟

  • 石膏や樹脂の削りかすまみれになりながら、それぞれのユーザーの思いに寄り添い、四六時中義足のことを考え、ニーズと使いやすさを追求し、血の通った義足を丁寧に作っているのがよくわかりました。

  • 義足をはくとはどんなことなのか、本書を読んで初めてわかりました。

  • 2017課題図書小学校高学年の部。

  • 手に職って、いいよな。

全13件中 1 - 10件を表示

臼井二美男の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
カーソン エリス
ドリュー・デイウ...
宮下奈都
福田 隆浩
R・J・パラシオ
ヨシタケシンスケ
三浦 しをん
F.エマーソン・...
鎌田 歩
大西 暢夫
アン・ブース
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×