すぐそばにある「貧困」

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591146569

作品紹介・あらすじ

■6人に1人が貧困?
GDP世界第3位、豊かな日本の見えない貧困に迫る!

「兄ちゃん、あんたはまだ若い。俺たちみたいにはなるなよ」(第1章 路上)
「あんた……そんな理由で偽名を使ったのか……?」(第4章 不正受給)
「このまま殺されたほうがラクなんじゃないかとさえ、思ったんです」(第6章 若者)
「どうして私はこうなっちゃったんだろう」(第8章 家族)
「私たちは、恥ずかしい存在なのでしょうか?」(第10章 バッシング)

2006年、当時の総務大臣は次のような発言をした(同年6月16日付『朝日新聞』)。
「社会的に解決しないといけない大問題としての貧困はこの国にはないと思います」

では本当に、日本に貧困問題は存在しなったのだろうか?
もしそうだとして、じゃあ、いま目の前で、困っているこの人たちはなんなのだろう?

いま、僕たちと貧困を隔てる壁は、限りなく薄く、もろく、そして見えづらくなっている。
もはや「貧困」は、別の誰かの話じゃない。
誰の身にもふりかかる、すぐそばにあるものなのだ……。

■20代にしてNPO法人「もやい」理事長、初の書き下ろし!

ホームレス問題、若年失業者、DV被害者の苦悩、元暴力団員の更正、
生活保護の不正受給や役所の水際作戦の実態――
日本の生活困窮者支援の最前線を担うNPO法人「もやい」理事長の著者が直面した、
生活に困窮してしまった人たちの人生や支援現場での葛藤をありのままに描く衝撃のノンフィクション。

エピソードメインなので、今までの貧困本は難しくて読めなかった、という人にも読みやすく、
「生活保護ってどんな制度?」「不正受給ってどれくらいあるの?」といったテーマ別のコラムも充実。
子どもや女性といった特定のテーマにとどまらない、
日本の貧困問題の全体像を把握するのに最適な1冊となっている。

■大西連(おおにし・れん)
1987年東京生まれ。
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿ごはんプラス共同代表。
生活困窮者への相談支援活動に携わりながら、
日本国内の貧困問題、生活保護や社会保障制度について、
現場からの声を発信、政策提言している。
Twitter:@ohnishiren

感想・レビュー・書評

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  • 身近にある多くの要因が重なり働きたくても働けない状況から住む場所を持つ事ができない人がいる事が分かった。
    そして簡単では無いけど、大西さんの活動により、困った人が一人でも社会保障にたどり着ければとも思った。
    もう一つは、人には居場所が必要なんだなぁ
    2021.8.22

  • 積読解消プロジェクト遂行中。

    本書の中に出てくる湯浅誠さんのお話を伺う機会があり、確かそれをきっかけに手に取った本だったと記憶してます。ずいぶんと積読してしまいました。

    貧困は、日本に、しかもかなり身近に存在しています。それは間違いありません。
    それを直視できるかどうか。身近な、あるいは我が事として考えられるかどうか。

    我が家は、世帯収入だけ見れば貧困にはあたりません。
    だからと言って裕福な家庭とは言えないし、収支で見ればかなり厳しいやりくりを強いられています。一時期は心療内科の症状で病休も取り、ますます厳しさも増しました。
    そういう状態で読んでいるからか、全く他人事とは思えません。むしろ、恐怖さえ感じます。

    我が家は、私は、大丈夫なのだろうか。

  • 経済大国ニッポン!
    などと言われつつも実は日本人の6人に1人は「貧困」に陥っているという

    その「貧困」の現実はよくわかっていない人が多い

    「生活保護をうけるということ」
    「なぜホームレスの人は簡易宿泊所を紹介されても行かないのか?」
    「働けるのに働かないってなまけものなんじゃない?」
    とか…

    「貧困」を知らない人はその現実を知らない。
    いや、考えていないし、知る必要もないと思っているのかもしれない。
    とエラそうに書いている私もその一人なのかもしれない

    病気や近親者の暴力、リストラなど…
    ふとしたことから人は「貧困」に陥る
    そしてその可能性がある
    それは誰にでもあり
    他人事ではない

    この本はそんな貧困の現実、生の声を教えてくれる

    大西さんたちもやいのスタッフやボランティアの皆さんの活動のすごさに頭が下がる
    その反面、心身ともに削るように活動している大西さんたちが心配になった

    人は一人では生きていけない…

    「さびしかった…」というクロダさんの言葉がしみた

  • とても書きあぐねて書かれたという状態が伝わってくる文体です。それは内容の重さもさることながら、著者が本来文章を書くことを生業の一つとされていないことも大きかったのでしょうね。若い人の文章だなぁと感じました。
    それが一層内容をリアルに感じさせられます。

    タイトルどおり貧困は案外近くにあるものなのだなと思います。誰でも状況が変われば簡単に貧困になってしまう社会なのですね。その社会のあり方はたしかに問題です。

    でも著者が「貧困」にどっぷりと関わってゆくことになったのは使命感でしょうか、興味からでしょうか。
    私には興味から入っていったと映りました。そういう入り方もあるでしょう。

    様々な事情から貧困になってしまった様々な立場の人々を描きながら、貧困に対してボランティアで立ち向かう人、行政の立場で対応する人もここには見えます。
    その範囲内で出来るだけのことをしようとしてくれる人、あくまで決められたことをきっちり守ろうとする人、そこも様々なようです。
    私はそちら側の、救済する側の人も気になりました。

    例えば著者はまだとてもお若い。自分のポケットマネーで、貧困にあえぐ人の治療代を支払った著者もまた貧困への道筋を歩んでいるように感じられたのです。
    こういう人がこの先苦しむようなことがある社会ではやり切れません。
    彼の行き先はどこなのか、ということが一番読後に私は気になりました。

  • 生活保護をめぐる問題や子供の貧困。ニュースは日々あれこれと耳にするけど、「貧困」って具体的にどういう状態なのか? 
    生活困窮者の自立サポートを目的とするNPO法人「もやい」理事長が、支援に携わるまでの自らの道のり、そして実際にサポートした人たちの事例を綴る1冊である。

    肩書は理事長だが、1987年生まれ、20代の若者である。しかもどちらかというと、信念に燃えた熱血漢というわけではなく、ごくフツーの青年のように感じられる。
    不登校で町をふらふらしていた高校時代、著者はホームレスの人たちに親切にしてもらったことがあり、そのときのことがどこか、心に引っかかっていた。高校卒業後、フリーターとして働く中、友人に誘われて参加した炊き出しをきっかけに、徐々に支援の世界に深く足を踏み入れていくことになる。

    著者が携わる「もやい」の仕事の中心は、生活困窮状態にある人の相談に乗り、行政との橋渡しを務め、自立生活を送れるように支援することである。夜回りのパトロールをしてホームレスの人たちに声を掛け、相談会を開いて個別の事情を聞き、生活保護の申請に同行する。時間も不規則だし、ときには困窮者が緊急的に宿泊する際の代金を肩代わりすることもある、いってみれば、割に合わない仕事である。

    貧困者とひと言で言っても、なぜ支援を必要とするほど困窮したか、その原因は人それぞれだ。
    父親からのDVに遭って家を飛び出してきた若者。老親の介護のために退職した後、自身も病気に倒れた人。精神疾患を持つ家族に暴力を受け、心身のバランスを崩した人。暴力団から一度抜け出て再起を図ったが、淋しさからまた元の世界に舞い戻ってしまった人。
    そうしたそれぞれの状況に合わせ、一方でまた、行政の側の事情に合わせて、適切な支援を引き出し、当てはめていくためには、双方を知る仲介役が必要になってくる。

    深刻な問題ではあるが、著者はこうした事例を、非常に読みやすく、わかりやすくまとめている。貧困者という名札の向こう側に、血の通った人の姿が見えてくる。支援対象者・行政・著者のそれぞれの視点を丁寧に記すことで、まるで短編小説のように、支援対象者の来し方や現状が描き出される。
    合間に挟まれる貧困者を巡るデータもわかりやすい。
    読み進むにつれて、貧困を取り巻く日本の「今」が、徐々に浮かび上がってくる。

    人が貧困に陥る場合、多くは複合的な要因が絡む。身体の病気、過労、DV、借金、依存症、孤立。1つの問題は、往々にして、別の問題の芽となっていく。複数の問題が複雑に絡み合った場合、1つの問題を解決すればよいというものではなくなる。
    ひとたび貧困に陥ったら、抜け出すことはそう簡単ではない。一方で、貧困への入口そう
    狭くない。本書の事例はそれを物語る。

    困窮者のための支援として生活保護があるわけだが、不正支給に対するバッシングに代表されるように、世間の目は厳しい。だが現場に関わる人の感覚としては、不正受給の率は、ゼロではないが、相当に低いというのが実感であるという。

    全般に、高みから見下ろして糾弾したり、批判したりという色合いがない。
    義憤がないわけではない。問題があると感じてはいる。が、拳を振り上げて闘うというよりも、今現在、困っている人に寄り添い、ともに考える姿勢がある。
    そこにはこれが「他人事」ではないという実感がある。同時に、この問題がいつか解決されるはずだという静かな希望もある。
    貧困を考えるさまざまな視点をくれる1冊である。

  • 2018年58冊目。

    寒さが増し、路上生活の方々の状況がより気になり始めるこの季節。著者の目と体験を通してエピソード形式で日本の貧困の様々な形を描いてくれるこの本は読みやすく、最初の一冊としてとてもいいと思った。特に、福祉を受けるまでの過程は、制度全体の課題も感じさせる。各エピソードの間に、見開きくらいでデータを用いて背景説明を入れてくれているのも親切。

  • まだ若い著者が燃え尽きてしまいそうで読んでて心配になった。

  • 貧困している人は、情報を正しく手に入れられないことが多いっていうのは聞いたことがある。
    然るべきところに然るべき支援が届くといい。

  • 軽い気持ちから始めたホームレスの人たちへの炊き出しから、少しずつ幅を広げながらホームレス支援に取り組んでいく著者の体験。いろいろなケースがあり、生活保護を受けるのも善し悪し、支援する側は理想をあれこれ抱くかもしれないけど現実はうまくいかないことも多く、社会としてどうしていくか、支援の難しさなどいろいろ考えさせられた。

  • こういう内容の本は、以前から何冊か読んでる。
    貧困に陥った人の実態を知っただけでは、その人たちを助ける人たちのことを知っただけでは、ダメな気がする。知らない、知ろうとしないのも悪いけど、知ってて何もしないというのは、もっと悪いような気がする。自分のできることを考えたい。

    生活保護の受給者をバカにしたりする人は、自分もいつかそうなるかもしれないという状況を想像できないのだろうか。自分は大丈夫だと信じきっている愚かさ。なんて傲慢なんだろう。

    社会は一番弱い立場、苦しい立場にある人が人間らしく生きていけるようなものであってほしい。そうでないと誰も安心して生きられないではないか。

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