(051)父という病 (ポプラ新書 お 1-2)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 290
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591142806

作品紹介・あらすじ

「父親なんていらない」。そううそぶいても、心の底で父親を求めていませんか?
「不在の父親」に縛られないために――。精神科医による救済の書。

父親との関係は、社会適応や精神的な安定を左右するといいます。
人生の方向性や社会へのかかわり方に関係するのです。しかし、時代とともに、次第に父親の役割が変化し、かつ少なくなってきています。

父親との葛藤から解放された子どもたちは、母親との密着を強め、精神の安定を得るどころか、次第に人間関係の構築に支障をきたし始め……。

・プライドが高く、つまづくと投げやりに
・強そうに見えても、ストレスに敏感で傷つきやすい
・恋人やパートナーに依存し、独占欲が強い
・理想の父親像を求め、愛憎を繰り返す
・目上の人を過度に信奉したり、否定したりする
・子育てに関心が乏しく、夫や息子と対立しやすい

感想・レビュー・書評

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  • 父親は母親よりも子供にとって弱く繋がっている。
    だから父親は母親のサポート役に徹した方がいい。
    母親は本能的に父親から子供を遠ざけようとしてしまうのかもしれない。
    そんな時に母親が父親に対しての偏った見方を子供に伝えてはいけない。
    何よりも大切なのは父親と母親の仲が良いことだ。

    • だいさん
      >何よりも大切なのは

      私もそう思います。
      これが一番!
      >何よりも大切なのは

      私もそう思います。
      これが一番!
      2016/06/30
  • すばらし。

    P51 このタイプにとって、何より大切なのは自分であり、わが子といえども、自分の自由や楽しみを制限する不快さのタネとなるとき、腹立たしい邪魔者にすぎなくなる。自分の邪魔をする者には、罵声を浴びせ、暴力をふるうこともいとわない。自分のすることはすべて正しいと思っているので、おれの邪魔をし、おれを怒らせたほうが悪いとのだという理屈で自分を正当化し、自分を省みることはない。 こどもからすれば、自己中心的で、身がってな父親だそんなに自分のことが大事で、子供が邪魔なのなら、子供など最初から作らなければいいのにと、子供のほうが思ってしまうような父親だ。

    P128 父親が理想像として貧弱すぎ、失望の対象でしかないとき、その子は他者に対する尊敬や自分に対する尊敬をはぐくみにくく、冷笑的で、ニヒリスティックな人格になる。偉大な価値を信じ、それに向かって強い意志で進んでいくというエネルギーを持つことができない。

    P209 子どもをもつことを躊躇することも多い。親となったことを喜んでいても、父親として、どう振る舞えばいいかわからないと語るケースも多い。父親の不在によってエディプス段階を通過できていない人では、自分自身が親になることを受け止められず、パニックに近い強い不安を覚えることもある。夫婦だけの間は良好だった関係が、子供ができた途端にぎくしゃくしてしまうことも多い。子供ができるとパートナーを独占できないいことにより、子供をライバルのようにみなしてしまい、見捨てられたという思いにとらわれ、夫婦関係が破たんしてしまうケースもみられる。しかし、子供をもち、父親として子育てにかかわる体験を通して、自らの中の父親不在を克服するケースも少なくない。

    P290 否定的な父親像を植え込まれることは、男性の理想像を育みにくくする。代わりとなる身近な男性が、そうした役割を果たしてくれればよいが、うまく補われない場合、大人や他者への信頼感や自尊心の発達にも影響し、世界に対して否定的で悲観的な見方をし、誰に対しても斜に構えた態度をとるようになる。

    P300 依存的な結婚生活は、男性の側から見ると、思い通りになる女性、いつも自分の言うことだけを聞いてくれる女性、つまり理想の母親を手に入れるという意味を持っていることが多い。つまり、男性の側も母子融合の段階を引きずっていて、大人の男になりきれていなかったり、父親との葛藤を抱えていて、支配の関係でしか女性と関われない。

    P305 子どもは父親との葛藤がうまく乗り越えられず、父親に対する敵意や見下した態度を強めることで自分を守ろうとする。こうした傾向は、父親に対してだけでなく、他社全般、ことに長上の存在にたいしてぎくしゃくしたり、反発したり、信用できなかったりという事態につながりやすい。

    P326 父親は母親のように器用に子供にかかわることはできなかったかもしれない。うまく愛情を表現することもできなかったかもしれない。しかし、それは、必ずしも本当に愛情がなかったということではない。父親は、もっと控えめな仕方かもしれないが、子供を愛していることがほとんどだ。たとえ会うことが許されない状況であっても、父親は子供のことを思うものだ。
     ~~
     父親との小さな思い出、ちょっとしたかかわりを思い出してみることだ。父親があなたのためにしてくれていたことを、父親があなたに言った言葉を、父親からあなたに注がれていた眼差しを。
     ~~父親も一人の人間で、あなたと同じように、孤独や辛さや苦しみを抱えながら生きていたはずだ。あなたと同じように愛を求め、思い通りにならない状況の中で、もがいていたはずだ。
     あなたと同じ年のとき、父親は何をしていただろう。あなたと同じように、人生に悩んでいたかもしれない。あなたと同じように親との関係に苦しんでいたかもしれない。いや、そんなことさえ自覚できずに、ただやみくもに生きていたかもしれない。
     でも、あなたと同じように生きていたということは確かだ。父親も、何らあなたと変わらない存在なのだ。父親愛されたいと思い、誰かに認められたいと思っていきていた一人の人間なのだ。
     父親も拒絶されれば傷つき、自分を守るために、相手を傷つけてしまうこともあっただろう。父親にも弱いところがあり、こどものようなところだってあったかもしれない。でも、すべてが憎しみや嫌悪にしか値しない人間ではなかったことは確かだ。
     

  • 【308冊目】東大哲学科を卒業した後に、京大医学部を出て精神科医になった岡田さんの書。この方の著作はいつも面白い。今回も御自身が観察なさったケースや有名人・偉人のケースを、父親との関係という角度から多数紹介し、本人の人生にどう影響を与えたのか考察していく。

     2014年の著作だけど、極端なフェミニストの方が読んだら怒り出しそうなことが書き連ねてある(笑)編集部は苦情対応を無事こなせたのだろうか?(笑)子育てで影響が強いのは母、特に乳幼児期は母親とのつながりがめちゃくちゃ重要、とかね。父親の役割が重要になってくるのは思春期以降とかね。いずれも参考論文は紹介されているとしても、肌に合わない読者多数じゃなかろうか?(笑)
     とはいえ、著者は、母がカロリーなら父はビタミンで、結局どちらが欠けても子には悪影響があるとしている。また、父がいなくても、父親的機能が大切だとも言っている。

     私がこの本を手に取った動機は、自分自身が父親になったことから「父親としての自分」について何らかの示唆が得られるのではないかと思ったこと。
     この期待が裏切られることはなかったものの、読み進めていくうちにむしろ「かつて父親に愛された子としての自分」が気持ちの前面に出ていることに気がついた。
     たとえ父親が不在でも、あるいは弱々しく理想型として同一化できない父親であっても、子は心のどこかで理想の父親を求めている。そして、その気持ちが満たされなかったとき、子には愛着障害のような症状がみられ、自己肯定感が低くなったり、他者と安定的な人間関係を築くのが難しくなったりするとのこと。
     理想型の父親を求める子の気持ち、小学生の時に強く自覚していたなぁなどと思い出してしまった。とはいえ、我が家の幸福は、本書で紹介されている不幸なケースとは逆で、母親が父を肯定的に評価し、それを子である私にも伝えてくれていたこと。おかげで私の心の中には良い評価の父親がいる。

     かつての部下に「自分は母子家庭育ちなんです…」と秘密を打ち明けるように伝えられたことがあったけど、当時はその重大さがよく分からなかった。でも、本書を読むと、もしかしたら上長である私に何か求めていたのかもしれないし、もう少し違う接し方があったかなぁなどと、少し後悔の念。

  • この類の本を読む時私は、
    字面を追いながら、自分の深層心理が求めている言葉をひたすら探しているような気がする。
    自分の意志薄弱の原点を探るのに役立ったと思う。

  • この本で書かれている父親は、どちらかというと存在が薄い父親(「父親の不在」)という観点で書かれていることもあり(私の知る範囲の「父親」は、存在感バリバリな人ばかりなので)、私にとっては正直なところあまり参考にはなりませんでした。
    ただ、P52に「自己愛の強い父親は、自己愛の強いあらゆる人と同じく、優れたものや美しいものを好み、劣ったものや欠点を嫌う。わが子であろうと、優れた子どもを愛するが、劣った子どもや失敗した子どもには無関心だ。憎み、忌み、嫌うこともある。」とあって、身近に接した機能不全家族も正にこのパターンでした。
    ただ、P306のあたりを読むと、父親の不在や拒否は、母親の不在や拒否よりも克服しやすいそうです(父親との関係は、母親との関係よりも距離が遠いことが普通なので、その分、距離やダメージが小さくなるそうです)。父親の存在って・・・。

  • 勧められて読んだ本。時代が父という役割を薄めたり濃くしたりするという発想はなかったです。
    実在するかは別として、肯定的な父親像が心にあるのかどうかは大事みたい。

  • 良書。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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