ワーキングプア 日本を蝕む病(ポプラ文庫) (ポプラ文庫 え 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591115459

作品紹介・あらすじ

働いても働いても報われない人々「ワーキングプア」。NHKスペシャル取材班が、放送では伝えきれなかった詳細を書籍化し、大反響を呼んだ。現代日本の象徴的な問題に我々はどう対処すべきか。渾身のノンフィクション、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 働いても報われない現実。先のまったく見えない未来。今、日本を急速に蝕んでいく「ワーキングプア」という病。この病が日本を覆っているうちは、まだまだ先行きは見えない。

    僕が東京に住んでいたころ、空き缶をいっぱいに詰めたガラ袋をいくつも抱えた自転車とすれ違ったことがあった。彼らがどこへ行くのかといえば、鉄くずやアルミを扱う『ヤード』と呼ばれる問屋で、彼らは空き缶を拾ってはそこへ行っていくばくかの日銭と交換するのである。僕がすれ違った自転車に乗っていた人は、50~60歳くらいの人が多かった、ような気がする。

    僕はある日、当時勤めていた会社の社長とケンカして会社を飛び出した後。とおりを歩いていて、
    空き缶を多く詰め込んだガラ袋を自転車で運んでいてバランスをくずしたらしく、倒れた自転車を起こそうとしているおじさんを、気まぐれで手伝ったことがある。別れ際に彼は僕に何度もお礼をいていた。明日からは僕がそういうことをやらなければ口が干上がってしまうかもしれなかったのに。

    この本が出版されたのは、僕が大学生かなし崩しに社会人になってからのことだったかな、と思うんだけれども、日本がはっきりと『プア』なんて言葉を使って『貧困層』が明確に社会に顕在化してきたのはここ近年の話だと思う。急速にそういう風潮が広まった上に「リーマン・ショック」が
    さらに拍車をかけた。

    今だから言うけれども、僕はある程度こうなることを予測していて、家族とかにも
    「こういう風になりますよ」
    と何度も警告を送っていたけれどもまったく相手にされなかった。現在の日本は
    「一握りの金持ちと、その他大勢の食うや食わずの貧乏人」
    で構成される社会になった。

    残念ながら、この傾向はもっともっと進んでいくだろう。 僕はその中で、いったい何が出来るのだろうか…。

  • 能力がないとか、怠惰であるとかそんなレベルでは、話せない。働きたくても働けない人たち。大変でもプチ贅沢をできる仕事をしている人は、自分たちが恵まれていると感じるだろう。でも、どんな人もいつなんどきなるかもしれない過酷な事実がここに書いてある。

  • 書店で目にとまったので読んでみました。


    「ワーキングプアなんて自己責任」そういって貧しい人をバッサリと切り捨てるような若い人に読んで欲しい一冊。

    たしかに自己責任のワーキングプアもあるだろうけど、それと同列にしてはいけないワーキングプアもいるんだ。そういう事を考えてほしいです。
    この本には貧乏だけど、立派で素敵な誇りのある人が出てきます。

    東京という場所、大学という比較的経済的に恵まれた人が割合的に多い場所で生活していると見えない現実がここにあります。

  • 明日は我が身。そう思いながら数々のエピソードを読んだ。何年後、決して自分がワーキングプアにならないという保証はゼロ。いつどこで躓き、とことん落ちてしまうかはわからない。ワーキングプアの恐ろしさは、一度躓いてしまえば、よっぽどなことがないかぎり、どんどんどんどん深みに嵌ってしまうというところ。そういう恐ろしさの実例をふんだんに盛り込んだ、この書。働いても生活保護以下の生活しか送れない、という現実は確実に人間から働く意欲を失わせる。反面、生活保護でパチンコで遊ぶ人間もいる。日本の福祉と保障は、あまりにも非効率的で、悲しくなってしまう。

  • 考えても何もできない

  • 【速読】ワーキングプア入門として、その実態をNHK番組用に取材してきたというこちらの本を選びました。書き方もあるのでしょうが、涙なしには見られないケースもあり、自らの尊厳を守るべく貧困に陥り、自死したケースもあるなんて何ともやれない気持ちに…。それとは逆に人の尊厳を顧みず新卒社員を過剰に採用し振り分け法を犯す、いわゆるブラック企業というのはその対局にあるもので、憎まれっ子世に憚るといいますか。スタッフの「日本はパーフェクトな個人主義の人間だけで社会を構成しようとしている…」という言葉は正にその通りだと感じます。

  • そもそもワーキングプアって何を基準で
    決めているのだろう。

    調べてみたら年収200万円ぐらいがボーダーライン?

    または正社員並みにフルタイムで働いても
    (またはその意思があっても)生活保護水準以下の
    収入しか得られない就業者のこと。

    いい大学行って大手企業に就職すれば社員になって
    それなりの生活ができる。
    資格を取得すれば正社員で働ける場所もたくさんある。
    貧困になりたくなければ死にもの狂いになって勉強すればワーキングプアにならないと思う。

    その一方で病気や親の介護や母子家庭になって離職してしまう場合はまた違うんだけどね。

    自分の環境の変化はいつ起こるか分からない。
    そこは、うん。考えちゃうな。
    「自己責任」の一言で終わらないよね。

  • "この本は皆さんぜひ読むべき1冊だと思います。
    日本の地方の現状の厳しさ、更には非正規雇用の厳しさ。。
    ☆チャーリーオススメ!!
    今後更に厳しくなっていく現状。
    これが本当に深く理解できます。
    2007年に出版された本ですが、今読むと、更に現状が厳しくなっていることが理解できます。"

  • 読むのが辛かったです・・・。
    真面目に働いていても、豊かになれない社会構造。

    これを読んでいると、自分が正社員として働けていることは当たり前なんかじゃなくて、本当に有難いことなんだなぁと思います。
    しかし、女性の貧困はまったく他人事じゃなく、自分だって離婚して子どもが何人か居れば同じ身になる可能性があるんですよね。

    最近、若干景気が回復してきたとはいえ、またいつ何時不況に陥るかもしれません。

    近年、生活保護の不正受給の問題があり、金額の引き下げとかフードスタンプとかが議論されていますね。
    本当に必要なひとにちゃんと行き渡るセーフティネットの構築を切に願います。

    たまに、給与明細の控除額を見ると、なぜ、自分が頑張って働いたお金で他人を養わなければならないんだという気持ちになるときがありますけど・・・ちゃんと安定した職に就き、毎日文化的な生活を送れる程度に収入を得られている自分と、そうでないワーキングプアの人たちとの違いは、ほとんどは「運」だと思うのです。

    もちろん自分の努力ってのもあるかもしれませんけど、努力が実るような環境に生まれることができたというのは運がよかったと思うのです。

    だから、日本国民である限り、わたしにできる最低限のことは納税なんだなぁと思います。
    もちろん大切なお金を政府に無駄遣いはして欲しくないですけど。

    自らの生き方を省みるきっかけとなるよい本でした。

    ちなみに渦中の岐阜県民ですが、こんなことになっている企業があるとは恥ずかしながら存じておりませんでした。
    たしかに、出稼ぎ外国人は結構見ますねえ。難しい問題です。

  • 「人間が労働を生み出す商品のように扱われ、最低限の保護さえ受けられない」
    本末転倒だなあ、と。まるでモノがメインで、人間が道具みたい。注意しないと、こういう本末転倒ってこれに限らず色んなところでおこる。

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