([お]3-1)優しい子よ (ポプラ文庫 お 3-1)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591111925

作品紹介・あらすじ

身近に起きた命の煌きを活写した感動の私小説。重い病に冒されながらも、気高き優しさを失わぬ「優しい子よ」、名プロデューサーとの心の交流と喪失を描いた「テレビの虚空」「故郷」、生まれる我が子への想いを綴った「誕生」、感涙の全四篇。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の壮絶な痛みよりも、他人の痛みを感じて必死に祈ってくれる人がいる。愛や憧憬と呼ぶにもまだ早い、生まれたままの真っ新な素直な、優しさという贈り物。その感情がある限り、人生には価値がある。儚く花が散っても、青葉を実らせそしてまた美しく咲く、そんな桜の木を思い浮かべながら、人が起き上がる逞しさ、強さもそういうものなのだろうと感じました。神様でも運でもなく、人の優しさに感情の雫が溢れ出したのは、そこに確かな温度があるからだと思います。人は誰かがいて生きていける。大切な人を守る為の強さ、辛い時ただ静かに寄り添ってくれる柔らかさ、それらすべても人が人を想う優しさで繋がれていました。

  • 絶対に泣いてしまうので人前では読めない本。
    「優しい子よ」は本当に優しくて気高くて純粋で心が締め付けられる。「テレビの虚空」「故郷」は、目には見えないし証明することもできないけれど、縁やつながりというものは確実に存在しているんだなと感じさせられる。「誕生」は奥さんの強さや周りの人の優しさが感じられる作品。
    あとがきも興味深く、白内障で字が読めなくなってしまった父に母が作者の本を読んで聞かせるという件が笑えました。

  • 2004年春、著者・大崎氏の妻、高橋和女流二段(当時)の元に届く一通のファンレター。送り主は治る見込みのまったくない血液の病気に侵された9歳の少年、茂樹。彼は病床で苦しむ最中にも、高橋女流二段が子どものころ交通事故で傷めた足を健気に気遣う。

    「ぼくはいたいけど、あしはいたくないですか。いたくならないようにおいのりしています」

    高橋女流二段に強く憧れ、いつか会えることを切望しながらも、一度も会うことなく逝ってしまった少年の短い人生。その最後の三か月の軌跡を描く表題作「優しい子よ」。
    『聖の青春』ドラマ化に奔走した名プロデューサー・萩元晴彦は2001年夏に脳梗塞で倒れ、70日後に息を引き取った。大崎氏は萩元氏の故郷、長野県飯田市を訪れ、彼と出会ってからの2年間を回顧し、自分が萩元氏に最後に投げつけた言葉に苦しむ。萩元氏が昏睡した70日間の意味を問う「テレビの虚空」「故郷」。
    そして茂樹少年の死の翌年、大崎氏夫妻のもとに訪う新しい命。生まれてくる息子へと伝えたい勇気と優しさの記憶を綴る「誕生」の4篇。

    茂樹少年の手紙は9歳の子どもが書いたとは思えないほどの表現力が備わっている。大崎氏もこう表現している。

    “それにしても少年の編む文章の透き通るような素直さや、美しさはいったい何なのだろう。天性のものを感じざるを得ない。”

    茂樹少年と高橋女流二段の文通は3か月ほど。そして、彼らは一度も会うことはなかった。けれど少年の存在は、その後の大崎氏夫妻の生活を照らし出す光となっていく。
    萩元晴彦氏は、大崎氏よりも約30歳も年上だった。ふたりの交流は萩元氏の人生の最後の2年ほど。当時の老プロデューサーと新米作家を結び付けた縁の不思議を思う。『将棋の子』を上梓後、『パイロットフィッシュ』の執筆に苦しんでいた大崎氏が思わず棘のある言葉を萩元氏に投げつけた。それが直接交わした最後の言葉だという事実が辛い。後日萩元氏は大崎氏宅の留守電に「近々二人でまた一杯やりましょう。また連絡します」とメッセージを残したけれど、叶わなかったことが悲しい。
    大崎氏に大きな影響を与えたであろう、出会いと別れを描く4篇はどれもこれも読んでいて思わず貰い泣く。逝ってしまった人たちが遺した、神のように深い優しさと鮮烈な人生の足跡に胸をしめつけられる私小説集。

  • 最初の章だけ読んだ。私小説なのでリアリティーがあって感動した。2章目以降は、なんとなく話の内容が掴みづらく、没頭できなかったので、読むのを途中で断念。

  • 小説はけっこう読んでいるけどノンフィクション、私小説は初めて。小説とはちょっとイメージが違った。大事な人の生と死。泣けた。そして考えた。自分が大変な時に人に優しくでできるってすごいなと思う。ずっとそんな生き方ができたら、自分の子供がそんな風に育ってくれたらほんと嬉しいんだろうな。

  • 一人の少年と出会ったことで
    人生が、考え方が変わる話。

    <私小説>っていう括りがわかりづらい。

    人との出会いってほとんどが
    多かれ少なかれ人生に影響してくると思います。

  •  じぶんをよわいとおもわず力いっぱい今をいっしょうけんめいに生きていきます。



    「優しい子よ」は電車の中で読まないことをお勧めします。
    泣いてしまいますので。
    作者はこれを小説かノンフィクションかと問うていたが
    まぎれもなくノンフィクション。
    少年の優しさを私は何にたとえよう。

  • 久しぶりに、分かりやすく、露骨に感動する本だった。
    じんわり涙がでる。

    生きることと、死ぬことと、生まれることと、運命と。
    この本がノンフィクションなのか、私小説なのか、わたしには分からないけど、そんなのは正直どっちだっていい。
    「マンハッタンのようだった」とか、「赤い色をした泥の水」とか、自分にない表現が好きだ。

    大崎さんがいうように、言葉が感情の死骸だとしたら、もっといとしくなってしまうなあ。

  • 心が温かくなる本でした。 これをきっかけに 大崎善生さんの本を たくさん読みました。

  • とにかく泣けて仕方なかった。周りに人がいない所で読むべし。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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