ふしぎ盆栽ホンノンボ

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591097021

感想・レビュー・書評

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  • ホンノンボ
    このどぎついピンクの表紙とは全く相容れない内容の
    ゆるさ。
    でも読んでいるとずんずん著者のペースに引き込まれていく。

    ただ、どこにいて、何して、
    アレがおもしろくて、コレがつまんない。
    そういう旅ではなくて、著者の旅は、
    ひたすら目指す対象に向かって突き進む。

    テーマはいいのに内容はイマイチなエッセイが
    世の中に氾濫する昨今、
    この本は相当おもしろい部類に属する。
    軽いタッチで書かれているものの、
    ポイントははずしていない。

    盆栽に興味がなくとも是非ご一読をお薦めする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「著者のペースに引き込まれていく。 」
      宮田珠己の独り言?なのに、ゲラゲラ笑ってしまう。どの本もメチャ面白くて、通勤途上では読めない本です。...
      「著者のペースに引き込まれていく。 」
      宮田珠己の独り言?なのに、ゲラゲラ笑ってしまう。どの本もメチャ面白くて、通勤途上では読めない本です。。。
      2013/07/19
  •  なんだか、間抜けな盆栽ホンノンボにみせられ、ベトナムのあちこちを駆け回る作者の旅行記。

     ホンノンボ、とは「山のシルエット」を意味するベトナムの盆栽である。
     特徴は
    ・本体が岩(石)
    ・ミニチュアが載っている(太公望、碁を打つ老人(実は北斗七星と南斗七星)、西遊記が人気)
    ・水を張った鉢の中にある
     の3点である。

    <span style="color:#0033ff;"> ホンノンボの最大の魅力は、なんといっても凸凹した地形がそこに現出しているところだ。それが秘密基地っぽさとでもいうような印象を高め、自分も小さくなってその中をさまよいたいと思わせるのである。</span>

     西遊記が道教的思想を色濃く反映していると知ったことも収穫。
     そういや、お経をもらいに行くだけなのに、なんであんな山ほど妖怪やらカミサマやらが出てくるんだ。
     そもそも仏教の根本思想は「無常」だけど、「え、ムジョーそれなに食べられんの?」といったぐあいの賑やかなお話。
     それはあの、にぎにぎしく山ほど神様が出てくる道教と近いっちゃ近い。

     日本の盆栽は木を愛でる。中国やベトナムは岩を愛でる。
     中国は日本ほど森はない。
     また、典型的な聖地は洞穴であり、それは岩山とも同一視される。
     中国大陸の洞穴(洞)は日本の森林(杜)みたいなものかもしれない。

     ベトナムのタムコックには複雑に入り組んだ洞窟の中を船で進むツアーがであったが桃源郷の様であった。

    <span style="color:#0066ff;">P163
     盆景を見る人は、そこにどこかにあるかもしれない風光明媚な自然を思い描く。その時そこに、一つの宇宙ができるが、残念ながら、それは美しくのどかな予定調和の世界であり、誰もが、大体同じような空想に浸ることになる。底では穏やかな気分が支配的である。
     ホンノンボはちょっと違う。
     盆景のように世界を作り出しながらも、その完成度が緩く、詰めが甘いために、予定調和から微妙にずれてしまうのだ。人間が五重塔よりデカかったり、大きな草の葉が東屋に覆いかぶさっていたり、人間が巨大な金魚を釣ろうとしていたり。
     盆景には、何が出てくるかわからない不安はないが、ホンノンボにはそれがある。そのことによって、ホンノンボはどこか妖怪的になる。その妖怪的な不安が、エキゾチックな快感を生む。
    P205.
     中国佛山のミニチュアに比べて、ベトナムのものはいい加減だと書いたけれど、そのいいかげんであることが、まさにここでは必要条件であるとでもいうような、効果的で的確な使用例であった。風景が見事に作り込まれているときに、ミニチュアまでも精密だと、かえって脆弱な印象を与えてしまうものだ。ラフだからこそ、全体を鷲掴みにするような力づyさ、闊達さが生まれ、風景が立ち上がってくる。言ってみればヘタウマの魅力である。ヘタウマな風景。
     なるほど、そうだったのか。
     わたしはここでベトナムのミニチュアの真髄を見た気がした。</span>

  • ヘンな岩発見!ベトナムの国民的文化といわれる「盆栽」とその謎を探る、紀行エッセイ。(アマゾン紹介文)

    巨大仏・ジェットコースター・ウミウシ(未読)に続く、テーマを持った紀行文。
    ベトナムの盆栽的なもの‘ホンノンボ‘を主題に据えているため、いつもの宮田節は少なめです。
    ただ、既読の二つよりは今回テーマのホンノンボに惹かれるところがあり、興味深く読み進められました。アバウトなジオラマを思わせる表紙も好みです。

  • 著者が述べているように、深く調べれば調べるほど「知識で解決しようとすると、感動を覚えた肝心のポイントは、かえって奥深く埋もれてしまってみえにくくなり」となるのだろう。何も知らずに感動できた最初の感激、驚きこそが大事だったのだぼくも思う。

  • 和んだ。
    盆栽・盆景・箱庭・稗蒔、何を思い出してもいいのだけれど、宮田さんのアンテナにひっかかるゆるい感じが面白い。
    惜しむらくは、初出のWEBマガジンの方が、写真が楽しかったろうなと。
    最初にいくつかまとめてカラーにしてあるのだけど、本文についてるのは全部モノクロだし、図版番号がわかりにくい。
    多分こうしないと高くついちゃうんだと思うんだけど……。

    装丁 / 木庭 貴信(オクターヴ)
    撮影 / 宮田 珠己(ホンノンボ)、細川 葉子(ミニチュア)
    初出 / ウェブマガジン「ポプラビーチ」2005年8月~2006年8月連載「~ふしぎな盆栽をめぐる旅~ ベトナムの小さな桃源郷ホンノンボ」に加筆修正

  • 中国とベトナムのミニチュアの精度ノ差…!(笑)

  • ベトナムの独自カルチャーであるホンノンボ。パッと見マヌケなミニチュア盆栽が、道教的宇宙観を内包している・・・?宗教的・地理的考察から実際にホンノンボ職人へのインタビューまで網羅している。筆者の軽妙な語り口も冴える。ホンノンボ史に残る一冊。たぶん。
    普通であれば見逃してしまいそうな小さなモノに対して真剣に考える姿勢、嫌いじゃない。

  • 盆栽の中に一つの世界がある。
    鉢の中に樹木とミニチュアの人や建造物が配置されて世界を形作るベトナムの盆栽『ホンノンボ』をタマキングが探して巡る旅の記録。
    ゆるくて笑えて癒されて、軽い文章なのにちゃんと後に何かが残るのだ。

  • 水を張ったかめに岩を置き、植物を植える。
    陶器のミニチュア人形を並べ、水草の陰に金魚が泳ぐ。
    桃源郷を表したようなジオラマ盆栽が、
    ベトナムではごく一般的に楽しまれている。

    日本とは少し違った盆栽「ホンノンボ」を巡る旅エッセイ。
    ベトナムではホンノンボ専用ミニチュア人形もたくさん売っていて、
    いつかマンション住まいを卒業して、金魚も飼えるようになって、
    ホンノンボセットを探す旅がしてみたい。

  • 「扇状地のような顔」って(笑)

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著者プロフィール

旅と散歩と石ころと変な生きものを愛し、いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追究している作家兼エッセイスト。その作風は、読めば仕事のやる気がゼロになると、働きたくない人たちの間で高く評価されている。主な著書は『いい感じの石ころを拾いに』(中公文庫)、『東京近郊スペクタクル散歩』(新潮社)、『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』(大福書林)、『明日ロト7が私を救う』(本の雑誌社)など。

「2023年 『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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