- Amazon.co.jp ・本 (52ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591088104
作品紹介・あらすじ
源義経と静御前、そして武蔵坊弁慶と戦いで死んだはずの平家の貴公子たち。彼らが登場する『義経千本桜』は、『仮名手本忠臣蔵』とならぶ、とても有名な歌舞伎です。嵐の大物の浦で、桜が満開の吉野山で、兄の頼朝と仲が悪くなった義経は、どんな事件とであうのでしょう。
感想・レビュー・書評
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絵本屋さんのご主人が、絵本って表紙を飾っておくだけでもインテリアになると話していたことがあるが、この作品などその最右翼だろう。
どのページもそれはそれは美しく、絢爛豪華な絵巻物の様相にため息が出そうだ。
歌舞伎の物語と史実との違いを知りたくて読んだのだが、途中でそんなことは忘れてしまった。
橋本治さんらしく、思わずひるんでしまうほど文字数が多い。
でもめげずに読み進むと、お芝居の面白さにハマる快感がある。
人の世のはかなさ、人間の持つ悲しさなどが圧倒的に胸に迫ってくるのだ。
1747年が初演だったというから、江戸の頃の庶民がこれを観てどれほど熱狂したかなんてことを、想像するとまた楽しい。
「判官びいき」という言葉を生んだ「源義経」の、都落ちの話。
そこに、壇ノ浦で滅びたはずの平家の武将たちが絡み、更にそれに巻き込まれた者たちの悲劇も描かれて、重厚な味わいを出している。
登場人物も多いし筋書きも凝っていて、見せ場も多い。
歌舞伎の舞台も、さぞかし見ごたえのあるものなのだろう。
このタイトルだけに、話は義経寄りに展開し、頼朝側はややヒールに描かれている。
異母兄弟で生まれも育ちも別々だったとは言え、人間てこの頃から話し合いでは解決できないことだらけだったのね(笑)。
と言うより、義経は戦の才能にはたけていても政治的センスはどうやらまるで無さそうだったから、頼朝さんがどれほど懇切丁寧に説明しても理解は出来なかったかも。
悲劇と言えば、そこが一番の悲劇。
北海道でひそかに生きながらえたという節まである義経の短い人生。
現代に生きる私たちは、そこから何を学べるだろう。
「公」に生きることを理解の外に押しやって堂々と「個」を主張し、それが最良の生き方でさえあるかのような錯覚をする今に。
ひとつだけ惜しいのは、橋本さんの文章があまりにもくだけすぎであること。
読みやすくという配慮からかもしれないが、軽さが際立ってしまっている。
でもこれも好みの問題かもしれないので、ここでやめておく。
大人向けの、豊饒な文化の香りのする一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「義経千本桜」を「目で見る」ように描かれています。
絵巻という作りの為まさに「絵」が絢爛豪奢で、文字もイラストというか絵の一部のようにうねったりまわったりしています。
字は相当小さいし、元の話から省略しているので、まずはちゃんと読んだり観たりしてから参考に絵巻を読んだ方が分かりやすいかも。
池澤夏樹「日本文学全集10」
https://booklog.jp/item/1/4309728804
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壇ノ浦にて平家を滅ぼした義経だが、兄の頼朝に追われることになる。
義経の正室卿の君の犠牲、暴れる武蔵弁慶、義経を慕う静御前、そして忠臣の佐藤忠信。
捕る者逃げる者らの思惑を経て、義経一行は北上する。
海の上で義経以降は、壇ノ浦に沈んだはずの平知盛の襲撃に逢う。
知盛は壇ノ浦を逃げ延び、安徳天皇を擁し再起を図っていた。
宿敵との戦いは、共通の目的を持ち…
清盛の直径でありながら、平一門からはぐれた平維盛は、 正室若葉の内侍はわが子六代との再会を目指し、身を潜めていた。
そしてやはり壇ノ浦から逃れた平教経との邂逅…
後白河法皇から賜った鼓に情を寄せる狐の思慕、
男女、親子、そして主従の情景が絡み合い…
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「●●は生きていた!」「▲▲は実は※※だった!」などなど、想像を広げまくって自由闊達に書かれた脚本ですが、
こちらの絵巻では全体的に深刻で、最後には「戦とは空しい」という教訓が直接的に書かれます。 -
目にも綾な岡田さんの素敵な装画とともに義経千本桜を堪能しました。
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わかりやすい文章と綺麗な絵。文楽で見てみたいと思う。
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歌舞伎を見たことがないから、本作がどこまでその世界観を表しているのか、っていう根本的な評価が出来ない。歌舞伎経験の有無によって、おそらく見方がだいぶ変わってくると思うんだけど、少なくとも個人的には、同じ内容を普通の絵本的に表現してもらった方が、より楽しめた気がする。彩り豊かだし、地の分はさすがだし、楽しめることには間違いないけど、手放しに感動のレベルには至らなかった。あ、これも『12歳読書』から。
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ぽんきちさんの仮名手本忠臣蔵レビューを見て、購入。忠臣蔵は赤穂浪人達が起こした実際の事件に共感できないし、妹背山婦女庭訓は納得し難いだろうと思い、本書にした。
1991年に出版された橋本治画集を持っている。演劇界に連載されたという絵を含め、歌舞伎の役者絵はかなりの点数。橋本さんの本では「大江戸歌舞伎はこんなもの」や最近では文楽についての本だが、「浄瑠璃を読もう」も読んでいる。
橋本さんのファンで、歌舞伎のことを語る橋本さんが好きだ。だが、正直、歌舞伎はよく判らない。
絵本という体裁だが、岡田さんの絵は子供向けじゃないと思う。燕と桜の花びらがどのイラストにもあしらわれているが、何の意匠だろうか。
生きていた平家の公達。結局、歴史に近い形で死んでいく。わざわざ生きていたという設定に何の意味があったんだろう。慰霊ということなのか。
どうも歌舞伎に苦手意識が出来ちゃっているかな。 -
義経千本桜を紹介する歌舞伎絵本。
知盛と義経の騙し合い、いがみの権太、知盛の最期、狐の忠信など歌舞伎の見どころがギュッと詰まっている。
この話の中では、血気盛んな弁慶のせいで度々義経が窮地に追いやられている印象を受ける。
知盛は入水、維盛は出家したが、教盛と安徳天皇は結局どうなったのか気になった。
文字が小さく、背景の色の組み合わせで読みづらい部分やカタカナの現代風言葉遣いに違和感もあるが、文字を含め大胆な色使いと構図でページをめくる楽しみがある。 -
義経が頼朝からにげているときに、いろいろな平家の落武者と出会って戦う話で、『平家物語』とかと全然ちがってびっくりした。最後は、頼朝の誤解も解けて、東北へ旅立った。
こういうお話があるんだな。かぶきを見てみたい。
絵が、はなやかですごい。文字も、小さい文字がびっしりで、曲がっていたり、横になっていたりいろいろだった。(小5) -
すなおに面白い筋立てだ
歌舞伎絵巻で読むのははじめて
いしいしんじ訳をもう一度読みたい -
こんな話だったとは知らなんだ。
なかなかに奇想天外。面白かった。
桜と燕がモチーフになっているのに気づいて、忠臣蔵を見返したら、銀杏と蝶がモチーフだった。
この動的な流れが全体を繋いで、世界観を強調して感じさせてくれているのだろうか。
さらに、文字組みがより自由になっていて、ますます画として引き込まれた。
残りの3冊も読んでみたい。