- Amazon.co.jp ・本 (52ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591074459
感想・レビュー・書評
-
「仮名手本忠臣蔵」、実は長いお話です。簡潔でわかりやすい文章と美しく雰囲気のある絵で、全編の流れを紹介する絵本です。
忠臣蔵といえば、知っているような気がしていましたが、実は歌舞伎の仮名手本忠臣蔵の全編のあらすじって自分は知らない、ということにふと気付きました。よく演じられる場で、特に落語の題材になっているもの(「淀五郎」の「由良助か、待ちかねた」(四段目)、「中村仲蔵」の斧定九郎の場面(五段目)、「七段目」のお軽と兄の場面)を断片的に知っているだけ。本来ならば全11段の長い長いお話です。
この本は5冊シリーズの1冊目で、橋本治が簡潔で平易な言葉であらすじを紹介し、そこに岡田嘉夫の美麗な挿絵が付きます。
よくドラマや映画などになっている忠臣蔵は、赤穂藩、吉良上野介、浅野内匠頭、大石内蔵助等、史実に準じた名前で出てきますが、歌舞伎や人形浄瑠璃の場合はそうではなく、時代を移し、別名の高師直、塩谷判官、大星由良助等となっています。これは江戸時代当時、同時代の武家社会の事件を演じることが幕府によって禁じられていたためです。とはいえ、塩谷の「塩」で赤穂を連想させたり、大石から大星と少々捩っただけだったり、相当あからさまな置き換えです。
全体のあらすじを読んでみると、実際の討ち入り事件をベースにはしていますが、かなり練り上げられた印象を受ける筋立てです。
発端となる事件(師直が塩冶判官の妻に懸想する)から、最後の討ち入りに至るまで、いくつもの事件が絡み合う、緊密で重厚な構成のお話となっています。
親子・男女の情愛や、武士の志といった、情感に訴えるエピソードがこれでもかと盛り込まれています。
おそらくは一度見てこれで終わり、といったものではなく、何度も何度も見て、何度も何度も同じ場面で泣いたり笑ったりする、そんな楽しみ方を念頭においた作品なのではないかなぁ。というか、これ、一度見ただけではなかなかすっとは理解しにくいような。
本書は、子どもが読んでもわかるようになっている一方、大人も十分楽しめるすばらしさだと思います。おかげでようやくこういう話だったのかとわかりました。
物語を説明しつつも独特の雰囲気を醸す絵もすばらしい。師直を討ち果たした最後の場面に舞う蝶と椿の隠喩に唸りました。品がありつつ、妖艶です。
通しどころか、見たことがあるのもテレビで放送された劇場中継ばかりなのですが、いつか、本当のお芝居を通しで見てみたいなぁ・・・。
*年末の舞台のTV中継を先日見ました。早野勘平が誤解から悲劇的な結末を迎える六段目。「うわぁ、ちょっとその筵をめくって確認したら濡れ衣だってわかるのにぃぃ」と一人じたじたしてしまいました(^^;)。浄瑠璃の文句にも「いすかの嘴の食い違い」と入っているようですが、ちょっとしたことで行き違い、ままならぬ世の中よ、と多くの人が涙を流してきたのでしょう。
*このシリーズで「四谷怪談」も読んでみたいけれど、5冊で完結しているようです。「四谷怪談」は子ども向きのストーリーではないかもしれませんね。でもちょっと残念。 -
今年の読みたい3冊。最後の本。文楽見てから読んだ。文楽の舞台が瞼に浮かぶ、橋本さんの言葉。今年も3冊有言実行できた。
-
中野翠さんの本で知った、歌舞伎の物語絵本。
歌舞伎のストーリーって、解説本や番付(公演パンフレット)を読んでも、すっと理解するのが難しい。
やたらめったら人が死んだり、忠やら孝やらの精神が崇高すぎてついていけなかったり、無関係だと思っていた人物が実は兄弟だったり、騙したつもりが騙されてたと思ったらそれも計画のうちだったり、ややこしいのが多いのです。
私は、劇場で鑑賞するにあたっては、もうその辺はついていこうとするのはやめて、かっこいいなーとか派手だなーとかいうことを楽しむことにしてます。が、やはり古典作品の常識は知っていた方が、なにかと面白い。例えば、新作歌舞伎でパロディされていたり、歌舞伎エッセイ的な本を読んだときに、「あれのあの場面で~」という記述があったりするので。
そこで、中野翠さんいわく、「歌舞伎のストーリーがもっともよくわかる」というこの絵本シリーズ。
絵は、バッチリ趣味ど真ん中!ではないが、美しいとは思います。文字も、ページによって、斜めとか渦巻きみたいに並んでいたりして、凝ってます。
そして何より文章が、良いです。筋自体がこんがらがっていることは、原作がそうなのでどうしようもないわけですが、橋本治さんはそれをわかった上で、「この人、悪い人」「この人、かわいそうな人」という色付けを鮮やかにしてくれています。まじめな解説本だとそうまで割りきれないところを、ずばっと。「高師直は顔世御前にいやらしい手紙を渡しました。顔世御前は、へんなことはやめてください、と返事を書きました」とか(笑)。この調子の文が要所要所に入っていて、遊び心が素敵です。
仮名手本忠臣蔵と、義経千本桜は、歌舞伎で見たことがあったので読みましたが、この絵本シリーズのその他の作品も、鑑賞する機会に合わせて読んでいこうと思います。 -
絵がきれいだしとても分かりやすかった
-
歌舞伎の仮名手本忠臣蔵を観ているかのような絵本。
挿絵が丁寧で豪華な絵巻物のようで、抑えた色調に歌舞伎っぽさを感じる。
雨のシーンでは物語の文が。まるで雨そのものになっていたり、討ち入り後に主君のお墓に浪士が向かうシーンが紋の入った蝶で表現されているのが印象的だった。
文字が小さく読みにくいが、ストーリーは分かりやすい。
お軽が身売りする場面で、フーゾクという言葉が、唐突すぎて違和感を感じた。(子供向けの本だから、そういう表現にしたのかは分からないが、全体的に大人向けの本だと思う)その後は、遊女になったという表現だったので、最初からそ、表現で良かったように思う。 -
原作/竹田出雲、三好松洛、並木千柳
見返し文字/坂野雄一
裝幀・本文デザイン/中島かほる -
高師直が出てくる忠臣蔵
-
ほんとの忠臣蔵をそのままなぞった話だと思ってたのでびっくり!小浪が嫁入りに来るところの絵が好き。
-
歌舞伎の物語は、いつかちゃんと知りたいと思いつつ、中々そうもいかないと思っていたところ、とても分かりやすく、簡潔に物語を知ることが出来る。
これは大人に重宝する絵本だ。
華やかで美しく、それでいて外連味のある絵がとてもいい。
メリハリのあるハッキリした色使いなのに、ゴテゴテしくないのも流石。粋なのかねえ。
歌舞伎の舞台世界に入り込んでいるような気分にさせてくれる。 -
12月14日は
忠臣蔵の日
吉良邸討ち入りの日。歌舞伎作品としても長年愛されている忠臣蔵、その世界を絵本に再現するシリーズ。
ひゃあ。それは残念すぎますね(><)。
お芝居はやはり舞台をゆっくりみるのが一番なのでしょうね。
しか...
ひゃあ。それは残念すぎますね(><)。
お芝居はやはり舞台をゆっくりみるのが一番なのでしょうね。
しかし、歌舞伎の上演時間って長いんですよねぇ・・・。
歌舞伎ではよくあるパターンだそうです。
丁度時間となりました、って何が丁度なんだろう。
曽我...
歌舞伎ではよくあるパターンだそうです。
丁度時間となりました、って何が丁度なんだろう。
曽我兄弟でも敵役、工藤祐経都の対面があって、5月の巻き狩りで再会して「まずは、それまで」「方々さらば」で幕。兄弟と工藤の3人で蓬莱山の見得、山の形を作るのだそうです。橋本さんの本からの知識ですが、ドラマと思っちゃいけないのかも。
それも演出のうち、ということでしょうか。
「寿曽我対面」もそういえばテレビで見ました。ああいうのは型を見せるものなのかも...
それも演出のうち、ということでしょうか。
「寿曽我対面」もそういえばテレビで見ました。ああいうのは型を見せるものなのかもしれませんね。
「暫」なんかもそうかな・・・?
さまざまな経緯で今のような形になっているけれども、予備知識がないとわかりにくい演目も多いのでしょうね。
・・・てなことを考えていると、やっぱりいきなり舞台を見に行くのは少々ハードル高いな(^^;)。