- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585221968
作品紹介・あらすじ
耳が聞こえず孤立するなか、「伝説の独学」によってロケットの基礎となる理論を打ち立てたロシア人科学者コンスタンチン・エドゥアールドヴィッチ・ツィオルコフスキー。
人類みんなを宇宙に飛ばすことを夢見て、知性と理論による驚異的な未来予想で科学を発展させた「ロケット推進の父」の、日本ではじめての伝記。
感想・レビュー・書評
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語尾にスキーの名前と言えばドストエフスキーとチャイコフスキーくらいしか思いつかない。ツィオルコフスキーって初めて聞いた。第二次大戦前の1935年に78歳ですでに死んでいるし、ソ連の科学者だったのでアメリカべったりの日本にはその偉人伝は伝わってこなかった。だから当然自分もロケットの開発はフォン・ブラウンという天才が全部やったのかと思ってた。でもあの円錐形のロケットの形態や推進装置の理論を提起したのはツィオルコフスキーがはじめての人、ソ連では有名だったみたいだ。葬儀は国葬で執り行われた。
ガガーリンが宇宙を夢見たのも、きっかけはツィオルコフスキーの宇宙の話を知ってからだと、NHKの映像の世紀プレミアムでも言っていた。ガガーリンはツィオルコフスキーことをめちゃくちゃ持ち上げていた。月面をふわりふわりと飛び歩いくクレイアニメの映像も紹介されていたが、これはアポロが月面に行くよりもはるか前にツィオルコフスキーの理論を映像化したもの。確かな知識に裏打ちされていたことは、その後アメリカによって証明された。
本の前半は幼年時代から苦学時代のエピソードなので、そんなに面白くもないのだが、後半は結構面白い。SF作家のヴェルヌの描いた月世界旅行に刺激されたツィオルコフスキーのロケット理論の話や、気球を金属でつくることを最初に考えた話とか。とても真面目に考えて得られた結論で、今では当たり前の理論なのに、当時は馬鹿呼ばわりされて相手されないところがかわいそう。もしそばにいることができたら、馬鹿っていう人が馬鹿なんです!ってJSのような捨て台詞をアカデミーのお馬鹿連中にぶち込みたい。
でも、この人そんなに気にしてないんだよね。生き方がとっても清々しい。家族とも仲が良いし。たぶん宇宙のことを考えているうちに嫌なことを忘れちゃうんだろうな。永遠の科学少年というのはこういう人のことを言うんだなと思った。
ツィオルコフスキー死後の宇宙開発の歴史も、アメリカをひっくるめて最終章でまとめられているのでありがたい。
ツィオルコフスキーの書いたSF小説が何作か早川書房から1950年代に出ているようだが、どれだけその後の宇宙開発の歴史を予言していたのか、読んでみたい。図書館にあるかなぁ・・詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
JAXAの的川泰宣氏の「語り」のような伝記(実際、ところどころに寄席仕立てでエピソードを語るコーナーがある)。といっても、適当におもしろおかしく仕立てるのではなく、ちゃんと史料にあたりながらツィオルコフスキーの生涯をたどっていく。
さすがに、晩年、万物に心があるという「汎心論」に傾倒したところまでは描かれていなかったけど、幼いときに耳を悪くして高等教育を受けられず、図書館司書ニコライ・フョードロフのもとで学んだのを契機に独学たたきあげで人生を切りひらいていったことがよくわかった。
また、最終章で、ツィオルコフスキーの「聖火」を受けついだ人々のことも簡潔にしるされ、ロケットが本格的に開発されるようになったのは、まずは軍事用ミサイルとしてであったこともきちんと書かれている。 -
学びたいという意志,宇宙への夢,それに向かっての日々の積み重ね,もうただただ頭が下がります.ざっくりと世界の情勢も書かれていて,図録や写真も多くとてもわかりやすい.表紙の松本零士氏の絵はユーモラスで楽しい.