社会という荒野を生きる。 (ベスト新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584125922

作品紹介・あらすじ

「いま私たちはどんな時代を生きているのか」「これからの時代で何を大切にして生きていくべきなのか」。
社会学者・宮台真司が日々のニュースや事件、社会現象をネタに、「そもそもなぜそれが起こったのか」を解説しながら、現代という社会、また、より良い生き方のスタンスについて詳しく丁寧に説いているラジオ番組「デイキャッチャーズ・ボイス宮台真司」。
「天皇と安倍総理」「民主主義と独裁」「沖縄問題のゆくえ」「ブラック企業」……。この社会の本当の「問題の本質」を解き明かす。宮台真司の「本質を見抜くニュースの読み方・考え方」が学べる書。
社会学的知見に基づいたフィールドワークを通して論考した宮台の現代批評は、不透明な時代の見晴らしを良くする武器となるはずだ。

感想・レビュー・書評

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  • 自説を述べる時に「誰々が言った事だが」と補強をするのは宮台真司だけに限らないが、こうした援用には、説明のショートカットと自らの責任回避が目的としてある。従い、認知の低い層を切って捨てる彼の態度と実は同根であり、自分の気づきとして理屈立てて説明するのが煩わしいのか不得手なのか、皆が忘れていた史実を錦の御旗に、とにかく定言命法のように「絶対的な情報」により攻守を固めながらマウントを取るという論法だ。

    宮台真司は天皇主義者であり、それは師匠の小室直樹から受け継いだもの、オウム真理教に基本的な洗脳手法を提供した自己啓発セミナーにも関わっていた、と権威に権威を重ね、完璧な鎧を纏った上に、性的にも強者であるかのようなエピソードをファッションのように身につけている。

    で、いつもながら、私はそれを不快には感じていない。スーパーマリオのクッパみたいにトゲトゲの甲羅を背負った論客による熱々の「絶対的(っぽい)情報」をハフハフ言いながら美味しく頂いているのだ。

    ー 国際連盟は委任統治領に軍事基地を作ることを禁止したが、日本は満州国建国をきっかけに国際連盟を脱退しており、パラオを初めとした委任統治領に軍事基地を作りまくった。

    ー 1954年の第五福竜丸被爆事件から一ヶ月後、ワシントンは日本に原発を建設させる前提として原子力平和利用博覧会を開く計画を立案。広島を含む日本全国11ヵ所で開催し、日本人の原子力アレルギーを取り除くと共に反米世論を抑え込む。博覧会終了直後の1957年、アメリカ製実験炉を東海村で稼働した。

    社会が荒野に見えるのは、その社会に立ち向かう無力さを感じたからか、低認知と折り合えずに感じる過度なストレス故か。威勢の良さの裏にあるものが透けて見える気がしてならない。

  • 本書はとても読みやすい。といって、内容が浅薄ということではない。宮台氏の鋭い舌鋒は本書でも健在だし、その裏付けとなる社会分析もいつもの重厚さを保っている。読みやすさは、専ら本書の言葉遣いが宮台氏の他の著書と比べて、平易であることに由来するのだろう。
    ここでも宮台氏はあくまで「正論」を端的に、かつ論理的に述べている。
    宮台氏は他の著書でも「社会の空洞化」を主張しておられる。本書は身近なトピックを扱っているだけに、社会の空洞化が「なぜ起きたのか」、そしてその結果「社会はどのように変化したのか」がより自分に近い次元で疑似体験できるのではないかと思う。ある時期を境に「ニート」と呼ばれる層が増加し、あるいは高学歴な人間が突飛な問題を起こして社会を賑わせたりしている。その理由(答え)も、本書を読めば理解できるだろう。
    日本の政治家の「劣化」が著しい。もともと米国の支配下での政治しかできない政治環境下で、まともな政治家の醸成を期待することが無理なのではないかとさえ思えてくるが、現状を見れば米国の顔色だけを窺い、政治家が本来目を向けるべき国民(市民)を顧みることすらしなくなった。米国さえ文句を言わなければあとはやりたい放題――それが我が国の現状だ。そして、空気を読み、結果として自分たちの利益のためにのみ動く官僚どもがそれに続く。「人事権」という首根っこを押さえられている役人たちは、もはや思考停止に陥っている感さえある。
    本書の中で、猿の命名にあたり「シャーロット」と名付けたことに端を発し、「勝手に」英国王室の意向を「忖度」したことについて書かれていた。それに対する英国王室の反応は、実に面白かった。ここでも宮台氏の説明は合理的である。「忖度」されて有頂天になり、恥の上塗りを続ける我が国の政治家たち。にもかかわらず、そうした莫迦をあがめる人たちが増えたこの社会は、本当に「生きづらい」。生きるのが辛くなったとき、改めて本書を読み返してみようと思う。

  • 時事ネタを社会学で解説するラジオのコーナーが文字起こしされたという。「おわりに」によると、ラジオ番組前に下調べを数時間かけるが基本的には即興とのこと。それでこのクオリティに仕上がるところに宮台さんの教養の広さと深さを感じるが、それでも彼が慣れしたんだ型を繰り返しているのがわかる。
    社会学と哲学の先人が切り開いたコンセプトを持ち出すか、日本社会の過去の事象を紹介して課題の共通点を列挙して他の論者の浅はかさをディスりつつ先頭に立って主導権を取る。この宮台さんの立ち回り方を観ながらいつも”もったいないなぁ”と思うのは、その教養と頭の良さを「マウントを取るための武器」にしてばかりいることだ。いったい誰と戦っているのだろう?と思うのだが「朝まで生テレビ!」に出過ぎたことが原因かもしれない。単にあの番組でのキャラが憑依してることもありそうだが、番組に出る度に増えていくアンチ層が彼の言動の揚げ足を取りにくるのでいつしかファイティングポーズを取るところまでが型となってしまったのかもしれない。

    本書では宮台さんの意見をザッと見渡すことができる。安倍政権、日本の民主主義、沖縄基地問題、原発、日本の中間層、忖度(空気ばかり読む)社会の問題、性愛、仕事、教育など、時事問題を考える上での補助線となる。

  •  恥ずかしながら、著者の宮台氏のことは例の事件の際に知った。そのときに、私は彼を大学で学生に講義して、論文を書いている典型的な学者だと思っていたので、タイトルだけ見て買ったこの本の内容は予期していたものと違った。氏がラジオやYoutubeなどの媒体でご活躍されていたのは全然知らなかった。本書のように対談など会話形式が内容の中心になっている本は嫌いではなくむしろ好きなのだが、社会学の専門的なことを知りたかったというのが正直な感想。
     筆者は本書で現在の日本社会のどうしようもなさを明らかにし、痛烈に批判している。私は彼の言っていることの9割以上に同意する。

  • 当時の時事問題に合わせた小論が続く。トピックが多いので、広く浅くの印象。
    社会という荒野を信頼できるコミュニティと共に生きろという考えには共感。

  • ラジオ番組でいつも聞いているので、本をみつけてすぐ買いました。期待通りでした。鋭くて深くて、そうなんだろうな、と思いつつ読みました。こちらには簡単に賛成できるほどの見識があるわけではないので、そうなんだろうな、どまりですが、とても心に残りました。

  • そういえば宮台氏の本ちゃんと読んだことなかったなと思いAudibleで。元はラジオのニュース批評のコーナーをNewsPiksで記事化したものを書籍化したという流れらしく、それをさらにオーディオで聴くという周りまわった視聴。色々な時事ネタに宮台節で吠えるという感じで、なるほどと思う箇所もあったのだけれど、聴いている最中に件のニュースが流れてきて、特に性にまつわる部分は強弁に聞こえてしまい何かもう笑ってしまった。とある話題に「法が許しても道義的責任があって社会が許さない場合がある」と切って捨ててたんだけど自身についてはどう統括するんだろう。

  • 今年の2冊目。
    面白かった。内容が理解できないところもあったけど他の本も読んでみたいと思った

  • 宮台さんの論理を知っている人でないと、読みにくいかも。

  • 2021I149 304/Mi
    配架場所:C2

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著者プロフィール

宮台真司:1959年宮城県生まれ。社会学者、映画評論家。東京都立大学教授。1993年からブルセラ、援助交際、オウム真理教などを論じる。著書に『まちづくりの哲学』(共著、2016年、ミネルヴァ書房)、『制服少女たちの選択』(1994年、講談社)、『終わりなき日常を生きろ』(1996年、筑摩書房)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(2014年、幻冬舎)など。インターネット放送局ビデオニュース・ドットコムでは、神保哲生とともに「マル激トーク・オン・ディマンド」のホストを務めている。

「2024年 『ルポ 日本異界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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