韓国 内なる分断: 葛藤する政治、疲弊する国民 (平凡社新書 917)

著者 :
  • 平凡社
4.00
  • (10)
  • (18)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 127
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582859171

作品紹介・あらすじ

日本との関係にも影響を及ぼす、韓国国内の激しい権力闘争。その根底にある保守派・進歩派による「南南葛藤」の実態を描く。「国交正常化以降で最悪の関係」はなぜ生まれたか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NHKソウル支局長を務め、今はBS1「国際報道」キャスターである池畑氏による韓国政治分析。保守派と進歩派との「南南葛藤」と、両派の何れかに基盤を置く「帝王的大統領」という観点が明快な好著。朴槿恵人気やその任期前半での進歩派弾圧など、すっかり忘れていた事実も思い出すことができた。

    現在の文政権もあくまでも「反保守派」であり、「反日」ではないというのが筆者の
    理解。もっとも、出版はあくまでも日本の半導体禁輸措置以前なので、それ以後の評価についても聞いてみたいところではある。

  • 韓国内の保守派と進歩派の間の政策の最大の違いは、北朝鮮と敵対か融和かの違いだという。
    朴槿恵も保守として頑張っていたが、占い師との不適切な関係が明らかにされた結果、民衆の絶望==> 進歩派への政権交代へとつながった。
    現在の文政権はあくまで「反保守派」であり、「反日」ではないというのが筆者の理解のようだ。
    光州事件の背後には、北朝鮮によるトンネルを通じた韓国への侵略作戦という、時代背景があったという話。

  • NHKソウル支局長を勤めた著者による韓国近現代史。文在寅が大統領に就任して以降、日韓基本条約締結以来最悪と言われる最近の日韓関係悪化の原因を韓国国内の進歩派・保守派対立に求める。

    韓国現代史の中で政権の奪還 + 報復を繰り返して来た進歩派・保守派の歴史を踏まえ、現在の韓国国内に見られる反日も「行き過ぎた保守派否定」の結果に過ぎないと説くのだが、さすがにそれは無理があるのではないかという印象。事実、文在寅の親北政策は今や単なる茶番に終わり、反日・反米・経済政策と合わせて単に能力がなかった指導者という解釈の方が自然。とは言うものの、現代韓国を理解するために非常に示唆に富んだ一冊で、韓流ファンも嫌韓派も必読の一冊。

  • 弾圧に対するロウソク革命で政権をとった親北・進歩派の文在寅は、保守派の政策や体制を一掃し、自分たちの価値観や理念で韓国を染めようとしてきた。反日はその過程における派生。保守派・進歩派双方が革命をめざす韓国の分断は深い。

    二大政党による交代制が理想とよく言われますが、双方が革命を目指しているというのも、問題ありなのだなと思いました。

  • 冷静に、多くの知識を持って物事を見るのはとても大切なんだ。
    改めて思い知らされる。

  • 韓国国内の保守派・進歩派による深刻な争いと葛藤が、韓国の北朝鮮、日本への対し方の背景にあるという趣旨。激しい争いで、どうしてそこまで行き過ぎるのか、と感じる点が多いが。

    韓国国内の保守派と進歩派の苛烈な潰し合いは「南南葛藤」と呼ばれる。現在の文在寅大統領は進歩派、前大統領の朴槿恵は保守派。前政権の政策を全否定するのは、アメリカのトランプ政権も同じ、日本でも安倍首相が民主党政権について述べることもあるが、韓国はかなり極端。相手を徹底的に叩き潰す背景には、時の大統領に多大な人事権があり、強大な忖度が多くの権力やメディア、企業にまで働くことがあるらしい。

    保守派も進歩派も南北統一を目標としているが、アプローチが違う。大統領の任期は5年、再選が無いために任期の後半になるとレームダック化するらしい。朴槿恵の退陣も任期の後半。朴槿恵を利用した崔順実が新興宗教の教祖という怪しさはあったものの、事が大きくなり退陣にまで至ったのは、求心力が下がってくる時期だったことも影響。

  • 保守派と進歩派間の「南南葛藤」とそれに起因する「帝王的大統領」の強さと儚さという2つの視点が新鮮で面白かった。日本のニュースでは日本と韓国という構図で語られることが多く、韓国内部の政局が報道されることは少ないが、これらの視点により韓国の論理も理解しやすくなると感じた。


  • 1.この本を一言で表すと?
    韓国の現代政治史をまとめた本。
    2.よかった点を 3~5 つ
    ・帝王的大統領(p34) →企業やマスコミまで大統領に忖度して人事を変えるのは驚き。
    ・カメラの死角で北朝鮮が謝罪(p130) →日本ではほとんど報道されていないように思う。今も朴槿恵政権が続いていたら北朝鮮もだいぶ変わっていたと思 う。
    ・朴槿恵、凋落への引き金(p152) →韓国国民にとっては衝撃的なのだろうけど、弾劾されるほどのことのようには当時は感じなかった。しかしエセ宗 教と言われると印象が異なる。
    ・積弊精算(p196) →文在寅大統領は保守派つぶしが最優先で日本のことはあまり考えていないことが理解できた。日本批判も国内の支 持率アップのため、保守派潰しの一環でしかないように感じた。
    ・第六章 変調、そして日韓激震 →大法院の判事がスキャンダルで脅かされて判決を忖度するとは、司法の独立は無いのも同然だと思う。
    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・著者によれば、文政権としては、日本との関係を自ら進んで傷つけようと考えているわけではなく、「日本とは未来 志向の良好な関係を構築したい」そうだが、本当なのだろうか? ・地域ごとの分断は詳しく書かれていないのでよくわからない。
    3.実践してみようとおもうこと
    ・韓国のニュースを見る時は、保革分断の視点を忘れないようにする。
    5.全体の感想・その他
    ・韓国内の保守・革新の政治対立は歴史的にも地域的にも複雑かつ深刻なのだとわかった。

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。92年東京外国語大学を卒業後、NHK入局。高松放送局、ジュネーブ支局長、中国総局(北京)、ソウル支局長、報道局国際部副部長などを経て、現在はBS1「国際報道2019」キャスターを務める。本書が初の著書となる。

「2019年 『韓国 内なる分断』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池畑修平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×