- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582858914
感想・レビュー・書評
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文革五〇年目の亡霊
革命の夢―北京‐ジャカルタ枢軸
革命勃発―9・30クーデター事件
革命失敗―赤狩りと華僑弾圧
マオの革命―文化大革命の嵐
革命連鎖―西側に飛び火した文革
反革命―台湾発アメリカ行き「東京クラブ」
遠距離革命―西カリマンタン武装蜂起
革命無残―ユートピアの終焉
革命残響―夢が消えたあとに
過ぎ去らぬ「革命の亡霊」
著者:馬場公彦(1958-、伊那市、東アジア論) -
文化大革命は中国では研究禁止なんだそうな。思い出すことを許さないことで、二度と同じ轍を踏まないようにということらしい。
中国においても失敗だったと結論づけられているのだけど、その影響を受けた国々ではそうもいかないよね。プロレタリアート独裁と造反有理を叫び、社会革命に突き進むところで、本家は看板をおろしただけでなく開放政策という資本主義的属性を持ったわけだからさ。
今の世界の貧富の差を考えると、階級闘争という名の幽霊に足が生えてもおかしくないよね。 -
新鮮な視点だったが、インドネシア共産党の記述が大部分を占めることに書名とのズレを感じる。インドネシア共産党は中国共産党から「示唆・指導と物質的かつ精神的援助」を受けており、9.30事件自体にも中国の直接関与とまでは言わずとも影響はあったというのが本書の立場である。同事件後のインドネシア共産党の遊撃戦にも中国の間接的影響が見える。
書名に則した部分で言えば、スハルト体制となり、加えて第2回AA会議の流会、日本共産党との対立、等の中国を取り巻く国際環境の悪化も、著者は文革発生の大きな要因としている。加えて、下からの大衆動員という方式も、9.30事件の教訓を活かしたものだという。また文革が第三世界や発展途上国の共産党の、更には仏の五月革命のような西側諸国の、それぞれの運動に影響を与えたり共鳴したりもしたことも書かれている。
9.30事件後の華僑迫害の記述が多い。文革中の暴力と悲劇は言わずもがなだ。暴力的な政治変動の中での人々の苦しみを考えてみる。