暮らしのなかのニセ科学 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582858471

感想・レビュー・書評

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  • 知らないでは済まされない。信奉する前に、真実を知ろう。世の中にはびこる似非科学。ニセ科学は非常に厄介で、学校の中にもはびこっているという現実にちょっとゲンナリ。自分だけは騙されないというのは思い込みで、人間は都合よく騙されるようにできているということを前提に考えないとダメだね。学校支援の仕事をしていた時に直面した課題も描かれていて、共感できる部分が多かった。続編も読みたい。

  • 2023年8月読了。

  • 以前左巻健男さんの「陰謀論とニセ科学」を読み、とても興味を引いたが、本書も「目から鱗」の内容が多かった。
    水とEM菌に関しては、かぶって紹介しているので、かなり気にされていることが分かる。確かに毎日飲む水であり、水道水よりミネラルウォーターの方が美味しく(と錯覚してる?)、安全でミネラルが入っているのだろうと思ってしまうが、実は違うと言うこと。EM菌の開発者はEM菌の効能を放射能を除染できるとか、1200度の高温にも耐えられるとか、使用することで幸せが訪れるなど、科学信奉者でなくても、普通に考えればつい引いてしまうようなことを主張している方らしいが、政治家と結びつき(統一教会の如く)、日本の学校等で使用を推奨されているところがあるようだ。う~ん・・・

    その他、一般的に信じられている或いはそう主張する医師がいる、気合で治療するようながん対処法や食事療法(スティーブジョブズ氏もこれにはまった)。さも健康に良いと宣伝されるサプリ、マイナスイオン発生装置。ホメオパシー、血液サラサラ食品、経皮毒、足裏デトックスのウソ。さも恐ろしいと一部書籍で指摘される食品添加物と、逆に背反がないように語られる無農薬野菜のウソと本当。ダイエットは本当に必要か?など、認識を新たにする内容が多かった。

  • 健康や医療の分野に絞って、科学的根拠がないものについて論じている。健康食品やサプリメントも取り上げられているので興味を持った。

    塩分濃度の高い食事は胃がんと関連があり、動物性脂肪と大腸がん、乳がん、子宮体がんなどと関連がある。がんの2割近くは、細菌感染やウイルス感染が原因。

    アガリスクの抗がん作用は仮説にすぎず、肝機能障害などの健康被害が多い。フコイダンやプロポリスの抗がん作用は、人を対象にした臨床試験の根拠がない。βカロテンは、むしろ肺がんの発生率を高める。焦げの発がん作用は、サンマ2万尾を毎日10年くらい食べてできる程度で、「がんを防ぐための新12か条」からも削除された。

    1994年にアメリカでダイエタリー・サプリメントの法律が制定され、その市場開放圧力によって、日本でも1997年以降にサプリメントが認められた。健康食品に法的な区別はなく、有効性と安全性の科学的根拠がなくても販売できるが、効能や効果を表示することはできない。クロレラやウコンは健康被害報告が最も多い。グルコサミンとコンドロイチンは、口から摂っても体内で分解される。ひざなどの軟骨部にはあまり血管がなく、大規模研究では関節の痛みに効く結果は得られていない。ヒアルロン酸、コラーゲンも体内で分解される。コエンザイムQ10、シジミエキス、ローヤルゼリー、ブルーベリー、黒酢なども科学的根拠は得られていない。

    脂肪は主に筋肉で使われ、有酸素運動で筋肉を動かすことによって減る。

    ホメオパシーとは、植物、動物組織、鉱物などを水で100倍に希釈して振蕩する作業を10~30回繰り返したものを砂糖玉に浸み込ませたレメディーを用いる。

    食品添加物は、動物実験で得られた最大無作用量の100分の1に設定した1日摂取許容量(ADI)を十分下回るように使用基準を定めている。

    ミネラルウォーターの水質基準は水道水よりも項目が少なく、基準値も甘い。

    水滴が分割されると、大きい方の水滴はプラスの電気を帯び、小さい方はマイナスの電気を帯びるため、滝のしぶきの微小な水滴はマイナスに帯電している(レナルト効果)。これを負イオンと呼ぶが、健康にいいとは言われていない。フジテレビ系の「発掘!あるある大事典」が2000年前後にマイナスイオンを特集した後、さまざまな商品が出現した。2003年に景品表示法が改正され、商品・サービスの効果・性能の合理的な根拠を示す資料が要求されるようになった。

    シャープのプラズマクラスター発生装置を組み込んだ掃除機は、消費者庁から景品表示法違反の措置命令を受けた。シャープは、空気清浄機のような常時動かすものではプラズマクラスターの性能はあると説明しているが、否定的な研究結果も発表されている。

    EMとは有用微生物群で、世界救世教という信仰宗教が関係する組織が製造している。土を改良する農業資材だが、効果は証明されていない。琉球大学の比嘉照夫が「地球を救う大変革」で書き、経営コンサルタントの船井幸雄が応援して話題になった。船井幸雄は、ニセ科学の普及に貢献した人物。マーケティング論を活用して、人を4つのタイプに分け、先覚者を動かし、素直な人を同調させ、普通の人が追随することでブームを起こす手法を用いた。

    ホメオパシー、水ビジネス、マイナスイオンなどはいわゆる「トンデモ」の類だが、健康食品やサプリメントも科学的に証明されていないことを知らない人は少なくないだろう。特に、タンパク質や炭水化物は経口摂取しても分解されてしまうのに、テレビCMでも宣伝されているのは詐欺の野放し状態だと思う。

    国立健康・栄養研究所:健康食品の安全性、有効性情報
    https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/indiv.html

  • 「なぜ騙されてしまうのか、と問うより、なぜ騙されない人がいるのかと考える方が適切」というのがしっくり来た。特殊詐欺に対するのと同じ考えなのかもしれない。
    「科学者は、ニセ科学はあまりにも荒唐無稽だから相手にしたくないという気持ちを持っていることが多い」というのにも。時々ニセ科学を信じる人に完全な善意で勧められることがあるのだけど、やんわりと逃げてしまうから。分かりやすい批判本や論説がないのもきっとそうなんだろうなぁ。

    思想は自由、とはいうけれど、近しい人の実害は見たくないなぁ。最近は多いよね、時勢的に。陰謀論とか、ワクチン忌避とか。 

  • 単なる「騙された人が購入する商品」という話だけでなく、EM菌が政権にまで食い込んでトンデモを学校で教えていたということがおそろしかった。
    科学の「いい・悪い」は、あくまで使う人が判断しているだけのものであり、全てにおいて「都合のいい」科学などは存在しないのだという疑いは持っておきたい。

  • ●スティーブ・ジョブズがハマったカルト療法。彼の膵臓癌は「膵臓神経内分泌腫瘍」と言う珍しいタイプで、あちこちに移転する前に手術すれば生存確率も上がるタイプだった。彼は、新鮮なにんじんとフルーツジュースを大量に取ると言う絶対菜食主義を実践しました。ハーブ薬なども併用し、心霊治療の専門家などに勧められた療法も試しました。診断から9ヶ月続きました。結局肝臓に3カ所の移転が見つかり、現実と向き合うしかなくなった。
    ●なぜ騙されてしまうのか、と問うより、なぜ騙されない人がいるのかと考える方が適切ですよ。
    ●脳は「事実」と「フィクション」を区別することが非常に苦手です。人間は記憶を脳内でなめらかに編集している。人生の中で重要かつ劇的な瞬間は、いつまでも記憶に焼きついていると考えがちですが、そうではありません。実際にあった出来事が、嘘の記憶によって簡単に作り替えられてしまうのです。
    ●近藤誠氏のがんもどき。
    ●焦げた部分を食べると癌になる?
    ●ホメオパシーは、西洋医学的医療に対する代替医療の1つです。同種療法あるいは類似療法と訳されています症状には症状を訂正する。症状を起こすものを非常に薄めて砂糖玉に染み込ませたレメディーを使うことにより、体に悪影響与えることなく、症状だけをとっていくもの。

  • 私の周りに、本書で「ニセ科学」と取り上げられているもの「ホメオパシー」「EM」を利用している人がたくさんいる。我が家には「プラズマクラスター」製品が複数ある。「経皮毒」について大真面目にアピールしている人もいる。(合成洗剤とかの毒素が皮膚から体内に吸収されますよとかいうやつ)
    普段から「ちょっとオカシイ」とは思っていたので読んでみた。
    結論から言えば、「○○ですぐ健康になれる」とかいうのはだいたいデタラメだということ(そりゃそうだ)。クロレラだかウコンだかサメの軟骨だかなんだか知らないけど、サプリメントで健康になったりしないし、本当に健康になりたければバランスの良い食生活と適度な運動がなにより(そりゃそうだ)。科学的根拠もないのに口コミで「良い」とされて、自分も取り入れたら健康になった!というのはまぁ、気のせい(そりゃそうだ)。
    という内容です。
    多くの人がけっこう信じちゃってる「血液サラサラ」の嘘がテレビから作られた、という章は面白かった。テレビの影響って大きい。血液がドロドロで血管を通らない!みたいな映像を見せられたら、視聴者は衝撃を受けて信じてしまうけど、それも本書によれば、科学的には嘘ばっかりな内容だったらしい。
    メディアの情報や口コミを安易に信じず、科学的思考をしてホンモノを見抜く知識をきちんと持ちたいものだ、と思いました。
    あと、けっこう高い値段で売られているペットボトルの「ミネラルウォーター」もあんまり価値がないという説明があって、まぁ浄水器つけてるし、そっか、水道水でいいんだ!と思いました!

  • どうして騙される人がいるのか、ではなくてどうして騙されない人がいるのかを知るべきという言葉に驚いた。
    私たちの脳は自分に都合の良いことを信じるようにできていたり、
    動物は、原始時代から茂みに隠れている獲物を探すため、また天敵から逃れるため見えない部分を脳で補ってきた。
    だから非常に騙されやすい、偽の科学であっても信じやすい造りになっているとのこと。

  • こういった側面から物事を考えたことはあまりなかった。政治や経済がニセ科学を蔓延させようと学校現場に介入していると言うことは危惧しなければならない。

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著者プロフィール

左巻健男
1949年生まれ。東京大学非常勤講師。元法政大学教授。『RikaTan(理科の探検)』誌編集長。
千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究
科理科教育専攻物理化学講座を修了。
専門は理科教育、科学コミュニケーション。
主な著書に、ベストセラー『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤ
モンド社)ほか、『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)、『おもしろ理科授業の極意: 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業』(東京書籍)、『面白くて眠れなくなる物理』(PHP研究所)、『中学生にもわかる化学史』(筑摩書房)などがある。

「2022年 『世界が驚く日本のすごい科学と技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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