ロマンポルノと実録やくざ映画: 禁じられた70年代日本映画 (平凡社新書 476)
- 平凡社 (2009年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582854763
感想・レビュー・書評
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2-3 映画論
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残念ながらすでに鬼籍に入る神代辰巳・田中登・相米慎二をはじめ、曽根中生・根岸吉太郎・金子修介・滝田洋二郎・中原俊・小沼勝・石井隆・崔洋一・周防正行・森田芳光・那須博之など綺羅星のごとく居並ぶ名監督たちが、日活ロマンポルノ出身だということは、知られているようであまり知られていないのかもしれません。
カンヌでもベネチアでもベルリンでもハリウッドでも、それは彼らの汚点であるどころか、今や名誉の勲章といっても言いすぎではなく、胸を張って輝かしい経歴として誇るべきことのような気がします。
中学生の身で私は、団地妻昼下がりの情事とか痴漢電車なんとかとか、人に知られるとまずい内容の映画を、3人で集まって隠れキリシタンのように内緒で見て来ました。
これが幸か不幸か、単なる助平な奴が性欲のおもむくままに収集したのではなく、文学好きで映画好きの同好の仲間3人(私ともう一人が女子で、あと一人が男子)が、すべて日本映画の歴史的文脈の一つを知るためという大義名分のもとに、恥ずかしながら嫌々ながら(!)、研究のために鑑賞したのでした。
実際、単なるポルノフィルムよりストーリー性はあるとはいえ、いきなりじゃなくてもセックス場面が必ず挿入されている映画はどうしたものかと思ったものでした。
どうしても、性行為がそれほど人間にとって重要なものだとは、考えられなかったのです、まだ中学生には無理もありませんが。
・・・・・この稿 続きます -
[ 内容 ]
日本映画が洋画の後塵を拝し、斜陽のどん底に喘いだ七〇年代。
しかし、セックスとバイオレンスに活路を見出した日本映画は、若者たちの知的興奮を駆り立て、熱い共感を集めた。
映画表現の、その過激と破天荒は、新作映画が虚ろに賑わう現在を衝く。
いま、鮮烈に甦る、異形の「名画」、堂々の一一〇本立て。
[ 目次 ]
第1章 セックスとバイオレンスの饗宴(実録やくざ路線のバイオレンス ロマンポルノ路線の挑発と抒情 性が起爆させるバイオレンス)
第2章 狂い咲くジャンルの妙味(青春のニヒルな彷徨 アクションの新生面とカンフーブーム エロスと残酷の時代劇 スケバン戦闘少女の割拠 カーアクションの模索 メロドラマとラブロマンスの光芒 本格探偵ミステリと社会派サスペンスの競作 怪談からオカルトへ 洋画ふうソフィスティケーション おまけ短篇と編成の妙)
第3章 異文化と映画のスパーク(マンガ・劇画への挑戦 歌謡曲・演歌・ポップスの抒情 文芸作品の触発)
第4章 日本映画の世代交代(撮影所の外からの新しい波 時代を浮遊する女優たち)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
映画を観ているような気分にもなり、大変お得。日本映画の衰退の結果、徒花というか傑作というかといった作品が次々と生まれたことが分かる。何本か観たものもあったが、あの作品にはそのような背景があったのか!などと思うこともあった。広島に行くので車中でよんだのだが、まあ、広島と関係あるのは仁義なき戦いぐらいであったのでした。
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以前、同じ著者の「70年代日本の超大作映画」と言う本を読んだことがある。今回は、いわゆる超大作でない、二本立ての興行を支えた数多くの邦画の中から、魅力を感じた作品群を取り上げている。著者は私と同い年だが、小さい頃からずいぶん大人向けの作品を見ていたことに感心させられた。ついでに。脚本家の君塚良一氏も著書の中で褒めていた「野獣狩り」。CSでは放送されたらしいが、ソフト化はまだのようだ。今年監督デビューした木村大作氏の初カメラ作品だとか。ぜひ見てみたい。