不機嫌なメアリー・ポピンズ: イギリス小説と映画から読む「階級」 (平凡社新書 273)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582852738

作品紹介・あらすじ

われわれはイギリス小説を読む。その映画化作品も見る。だが、本当にその面白みを理解できているだろうか?スノッブで、イジワルで、「階級」にとらわれたイギリス人、その作家たちが書く文章には、「階級」にまつわる揶揄と皮肉が練り込まれ、行間には棘がひそんでいる。そして、映画ではそれらがどう変容され、また強調されているのか?小説と映画から、イギリス社会とイギリス人の心理に深く重く沈潜する「階級意識」を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • イギリス人の階級にまつわる意識をイギリス文学と映画からひもといたもの。
    特に、ミドル・クラスの中でも、さらに上中下と別れていて、その差異が作品中にいろいろな味付けをほどこしている例が、多々記されているのが興味深かった。
    また、映画版『ブリジット・ジョーンズの日記』は、『高慢と偏見』と共通する点が多いとか、イギリス人のアッパー・クラスが「インテリでない」ことに誇りを持つとか、初めて知ることも多く、とても勉強になった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「とても勉強になった」
      私もです。
      新井潤美の「自負と偏見のイギリス文化 J・オースティンの世界」も、オースティン読む時に、とても参考にな...
      「とても勉強になった」
      私もです。
      新井潤美の「自負と偏見のイギリス文化 J・オースティンの世界」も、オースティン読む時に、とても参考になりました。
      2012/09/05
  • 今までぼんやりとしかわかっていなかったイギリスの階級社会について、よく理解できた。名作から読み解く言葉の壁。日本で垢抜けない田舎者=東北弁で演じられたりするのと近いが、やはりブリティッシュ・イングリッシュはもっともっとはっきりしているのだなあと思った。

    今昔の階級についてもわかったが、やはり名作の解説が為になった。


    2013.05.30

  • かつては明確に、そして今も底流にしっかりと根付いているイギリスにおける階級。イギリス人の間では、アクセントや単語の選び方、住んでいる家等々でその人の階級が明確に分かってしまうらしい。
    本作は、そんなイギリスの階級について、日本でもよく知られている有名なイギリス文学、映画などを取り上げて解説してくれている一冊。

    ホンット面白かった!!
    小説を読むときや映画を観るとき、その作品が作られた国の人だったらみんな知ってる文化的背景を知っているのと知らないのとでは、作品に対する理解度がまるで違ってしまう。
    異国人にはどうしても難しいそれらの基礎知識をやさしく解説してくれる本はどの国のものであってもとても嬉しい。
    「ブリジット・ジョーンズ」や「メアリー・ポピンズ」、「ハリー・ポッター」といった作品の、随所にちりばめられた「分かる人にだけわかる」的なコンテクストを知りたい人は必読の一冊。

    この本を読んでいると、イギリス社会における階級はとてつもなく根強く、かつ厄介な存在だと思わされる。
    かつて海外地域研究(もどき)を学んでいた私はこういう本を読むたびに、その地域に暮らしたことのないがために「勘」が身についていない自分に失望し、自分の知見のなさに恥ずかしさを感じてしまう…うーん、まだまだだなぁ。

  • NDC930
    [われわれはイギリス小説を読む。その映画化作品も見る。だが、本当にその面白みを理解できているだろうか?スノッブで、イジワルで、「階級」にとらわれたイギリス人、その作家たちが書く文章には、「階級」にまつわる揶揄と皮肉が練り込まれ、行間には棘がひそんでいる。そして、映画ではそれらがどう変容され、また強調されているのか?小説と映画から、イギリス社会とイギリス人の心理に深く重く沈潜する「階級意識」を読み解く。]

    目次
    1 ラヴ・コメディ今昔(嫌われるヒロイン?―ジェイン・オースティン『エマ』;エリザベス・ベネットが九〇年代のロンドンにいたなら?―ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』)
    2 働く女たち(逆境の淑女、ガヴァネス―シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』;なぜナニーは不機嫌なのか―P・L・トラヴァーズ『メアリー・ポピンズ』 ほか)
    3 階級と男たち(ジェントルマンと教育―チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』;愛を勝ちとる「格下の男」―E・M・フォースター『眺めのいい部屋』 ほか)
    4 イギリス人が異世界を描けば(「ユートピア」は階級社会の行く末?―H・G・ウェルズ『タイム・マシン』;悪の権化はなぜ「フツーの人」になったのか?―アントニー・バージェス『時計じかけのオレンジ』 ほか)
    5 マイノリティたちのイギリス(日系作家の描いた「古きよきイギリス」―カズオ・イシグロ『日の名残り』;「新しいイギリス人」と越境する新世代―ハニーフ・クレイシ『郊外のブッダ』ほか)

    著者等紹介
    新井潤美[アライメグミ]
    1961年生まれ。香港、日本、オランダおよびイギリスで教育を受け、東京大学大学院博士課程満期退学

  • マイフェアレディ

  • 社会
    映画
    文学

  • イシグロの「日の名残り」読んで、
    ピンとこないとこが多々あったので、
    なんか英国の階級システムもちょっと知りたいと思って。

    オースティン『エマ』、
    フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』、
    ブロンテ『ジェイン・エア』、
    トラヴァーズ『メアリー・ポピンズ』、
    モーリア『レベッカ』、
    ディケンズ『大いなる遺産』、
    フォースター『眺めのいい部屋』、

    まだまだ。割とポピュラーな作品が選ばれてて読みやすいんだけど。最初は「ふんふん、へーっ」だったのが、だんだん「もういいよー」と ^^;;

    ファウルズ『コレクター』やウェルズ『タイム・マシーン』まで俎上に上げてるのにはびっくり。ちょっと牽強付会じゃないのかなあ~

  • タイトルのメアリーポピンズに惹かれ手にとったら、イギリスの階級社会のことがよく分かってとても面白かった。アッパークラスはインテリかと思っていた。読みたい小説、観たい映画がまた増えた!

  • これ本当に面白かった。ここからイギリス文学にはまりだした。イギリス階級についてなるほどなあと思った。とりあえずこの一連のイギリス文学ブームを終えたらもう一度読んで再認識したい。

  • イギリスの外から見たらよくわからない階級社会や意識について、身近な文学とか映画で解説した本。
    タイタニックもハリー・ポッターも、この本を読んでから改めて見てみると変わった印象が得られるかも。

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著者プロフィール

上智大学文学部教授

「2015年 『英国近代郵便の成立 ~19世紀文献集成~ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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