ふだん着の寺田寅彦

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 52
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582838411

作品紹介・あらすじ

胃を悪くしても甘いものや煙草、コーヒーが止められず、医者が嫌いで、子どもに対しては異常なほど心配性……。寺田寅彦の背中を追い続けてきた著者が描くとっておきの姿。

感想・レビュー・書評

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  • ふだん着の寺田寅彦 池内了著:東京新聞 TOKYO Web
    ◆人間らしい弱さを存分に
    [評]瀧澤美奈子(科学ジャーナリスト)
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/53419?rct=book

    ふだん着の寺田寅彦 - 平凡社
    https://www.heibonsha.co.jp/book/b506984.html

  • 物理学者の池内氏が、同じ物理学者の寺田寅彦の姿を論じる。学術的な面ではなく、家族とのこと、持病のことなどを寅彦の全集や周囲の人たちの残した文章などから描き出す。
    寅彦の死因は、若い頃にX線回析実験をしたことが原因かもしれない。という独自の推測もかかがている。

  • (借.新宿区立図書館)
    周辺や日記・書簡などから見た寺田寅彦。極端な甘いもの好き、たばこ好き、医者嫌いなどなど。随筆などから見られる姿とはかなり違う寅彦像が見える。特に本人及び家族の病気関係が詳しい。ただ、少々著者池内了氏の見方が出過ぎている感も。
    漱石の『猫』に出てくる甘木先生は「某」のもじりだけでなく、本名が尼子だったんだ。

  • ふだん着の寺田寅彦

    著者:池内了
    発行:202年5月20日
       平凡社

    日経新聞朝刊の連載小説は夏目漱石を描いた「ミチクサ先生」(伊集院静著)だが、数日前から熊本の五校時代の寺田寅彦が登場し、俳句で弟子入りした夏目漱石先生とのやりとりが始まっている。寺田はその後帝大へ進学し、日本の物理学者として歴史上の人物にもなった。随筆家としても有名。そんな寺田寅彦について、手紙などの資料から素顔を分析しているのがこの本。著者の池内了氏も、二つの国立大学の名誉教授でもある有名な物理学者にして、文章の達人でもある。お兄さんは昨年他界したドイツ文学者の池内紀氏。

    1878(明治11)年生まれの寺田寅彦は、1935(昭和10)年、50代で死んでいるが、まず1919年に胃潰瘍で吐血し、長年の慢性化により胃がんになり、頭蓋骨は脊椎骨、肋骨、骨盤とうに転移し、「転移性骨腫瘍」で命を落としたと医師はみたてている。3度、病床に伏せって苦しんだが、最後まで甘い物、コーヒー、煙草がやめられなかった。医師から控えるように進められても、例えば、「煙草の味を感じるのは、舌や口蓋や鼻腔粘膜などよりも、もっと奥の方の咽喉の感覚で、謂わば煙覚とでも名づくべきもののような気がする」「人間は煙草意外にいろいろな煙を作る動物であって、これが他のあらゆる動物と人間とを区別する目標になる」と屁理屈を言ってはやめなかったらしい。

    医学も医師もあてにならない、と公言しての医師嫌いがたたった面もあった。当時、日本では物理学に比べてまだまだ医学は遅れていたらしいが、がんを本人告知しない時代だったが、医学を信頼していなかったのか、本当のことを知りたくなかったのか、真相は謎の部分もあるようだ。なお、はじめは夏目漱石の主治医である尼子医師に診てもらっていたようだ。

    妻とは2度の死別を経験し、3人の妻との間に5人の子供がいたが、子供にはとても心配をし、あれはだめ、これはだめ、男は、女は、という普段とは矛盾するダブルスタンダードがあったそうだ。

    ゴリゴリの物理学者の人間くささには、微笑ましい点も多々あった。

    *******

    「ねえ君、不思議だと思いませんか?」という彼のおなじみの問いかけは、彼の新しい物好き=先見性の現れであると言えるのではないか。

    池内了氏は、寺田のがんと放射能との因果関係についてはまるきり荒唐無稽でもないと考えている。寺田は医療機関で使わなくなったレントゲンをもらってきて改良し、X線回折実験を行った。当時、X線と健康に関することはまだあまり分かっておらず、その因果関係は否定しきれないれないという。

    天皇崇拝や家父長制、女性差別に関しては何らの疑いも持たなかったし、生粋の愛国者であり、ナショナリストだった。彼がリベラリストであったのは科学や防災に関わる分野だった。
    ただし、反戦ではなかったが、積極的には戦わない「非戦」ではあった。

  • 池内先生が等身大の寺田寅彦の姿を炙り出そうとするもの。良くも悪くも人間らしさが伝わってきて、とてもよかったです。
    違った寺田寅彦の姿を垣間見ることができました。

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著者プロフィール

1944年兵庫県姫路市生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後同大学大学院へ。1975年に理学博士。北海道大学助教授、国立天文台、名古屋大学大学院の教授を経て現在名古屋大学名誉教授。観測データを用いて宇宙の進化を理論的に解明する研究を行う。『寺田寅彦と現代』(みすず書房)『ふだん着の寺田寅彦』(平凡社)など寺田寅彦に関する著書を発表。『科学と科学者のはなし』(岩波少年文庫)『なぜ科学を学ぶのか』(ちくまプリマー新書)など高校生向きの本もある。

「2021年 『寺田寅彦と物理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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