- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582838312
作品紹介・あらすじ
奄美の陋屋で死を迎え、このまま歴史の波間に埋没する運命にあった田中一村。異端の日本画家は死後いかにして見出されたか。その生前から下支えした無名の人たちの物語。
感想・レビュー・書評
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田中一村さんの名を知ったのは
もう20年以上も前になるでしょうか、
当時、
自分たちが歌いたい歌は
自分たちが創ればいいのだ、
と 日本全国を「自分の歌」を持って
駆けまわっていたフォークシンガー笠木透さん
に出逢った頃でした
コンサートの終わった後、
「いゃあ どえらい絵描きだわ」
と笠木さんが熱っぽく語っておられた。
その時以来
田中一村さんは
私の中では特別な存在となっている。
NHK出版の「田中一村画集」を
始めとして、
「田中一村 豊饒の奄美」大矢 鞆音
「 アダンの画帖田中一村伝」南日本新聞社
「評伝 田中一村」大矢 鞆音
などなど
むさぼるように
手にしてしまうこととなった
この大野芳さんの一冊には
それらの全てが盛り込まれた
実に興味深い、魅力的な一冊に
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田中一村が好きで、奄美の旅行をした後に読みました。
田中一村の生涯についての本かと思っていたら、その周辺の人々の経歴や今までの人生まで説明している、なんでだろう?と思っていたけど、
田中一村を応援したり、支えた人、興味を持って優しくした人、可能性を感じて世に出そうと奔走した人、そういう名もなき人々がいて、「田中一村」という世間的にはなんの肩書きも称号も評価も受けていなかった画家が世の中で知られるようになったというお話でした。
奇跡的な偶然が人の縁をつないでいく様を見ました。それの発端には田中一村という人の、自分の描きたい絵を描きたいままに描くという烈しい熱があったからであって。それがなければ人は動かないと思います。
1番良かったのは
第八章
274-275ページ
装飾的で画面全部にピントが合いすぎているという美術家からの評価に対し、
大島支局の記者さんの記事
「南の自然は、それ自体が装飾的。(中略) 視界の中のすべてが百パーセントの自分を主張し、そのどれもにピントが合ってしまうような光景。」
奄美に行って見てきたのでその情景が浮かんで、そうだよねえと思った部分でした。
奄美の綺麗な風景や海を楽しむだけでなく、こういう人の人生も知って、厚みのある旅にしてほしいと思いました。