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- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582837643
感想・レビュー・書評
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こんなにも深く、世界を、人間を、生死を、見つめたひとは他にいないだろうと思う。
著者の石牟礼道子さんは誠に残念ながら2018年に亡くなりましたが、今の世界を見たらなんと仰っただろうかと考えた。
石牟礼さんは、四大公害病のひとつである水俣病に、ただひたすら向き合ったひとだ。
最所に水俣病の症状が発見されてから12年間、水俣で起こっている惨劇は、無いものにされていた。
工場が水俣湾に流し続けたメチル水銀が原因となり、沿岸に住む何万人もの人々の中枢神経が破壊され、手足が痺れ、舌はもつれ、視界は奪われた。
こんなことが起こってよいのかと思うほどの不条理。
石牟礼さんは、不条理な現実というよりむしろ、不条理そのものを見つめ、ひとの、世界の美しさを見つめた。優しさを、強さを、尊厳を、見つめていた。
メチル水銀を垂れ流していた工場や、近代化の犠牲を供養しようともしなかった日本政府を許していた。ただ水俣病の患者さん達と生き、ご自身も病を抱えて生き、不条理な死と生きていらっしゃった。
凄いものを読んだ。
なかなか感想がまとまらず、時間も経ってしまった。人間とは、尊厳とは、生きるとは、死ぬとは、許すとは。様々なことを考えた。
私も、ここまで深く世界を見つめることができるだろうか。
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18/04/22。
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