東京日記4 不良になりました。

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 359
感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582836424

感想・レビュー・書評

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  • 東京日記も4冊目。
    この、地に足が着いてるのかどうか怪しい空気感、大好きです。

    今回はたびたび海外にも行っている川上さん。
    でも海外でも相変わらずお酒ばかり飲んでいて、ついついクスッと笑ってしまいます。
    泊まったホテルの従業員と手紙のやり取りをしたエピソードを、とてもすてきな話だなぁ…とじんわり温かい気持ちで読んでいたら、最後の最後、きれいにオチがついて爆笑。

    アカハライモリのオスが求愛の際に分泌するフェロモンが「ソデフリン」という名前で、額田王の「あかねさす~」の歌に由来する。
    …という話題に、「またまた~」と思いつつWikipediaで調べたら本当だったため愕然としました。
    衝撃を引きずったまま読了。
    第5弾も楽しみです。

  • 読まずにはいられない東京日記。この4作目が抜けていることに気づき読む。ずっと読んでいたい。

  • 東日本大震災、引っ越し、入院、手術……。2010年~2013年は、ほんとうに、いろいろなことがありました。カワカミ・ワールドのエッセンス。

    日記シリーズ、面白いからイッキ読み。
    震災や手術など、大変なことがあっても、川上さんの不思議な呑気さ?はそのままで、ホッとする。
    大変なときこそ、少しおとぼけなことで気を紛らわせるのは、生きていく上で大事だと思う。

  • 東京日記、お菓子みたいなちょっと嬉しいモノとして読んでいる。
    川上弘美さん、大好きなんだけれど諸手をあげて好きと言わせてくれないところが好きだなぁと本書を読んで気付いたことでした。

  • 『そ、それはもしかして、「かしこまりました」の間違いでは。と思うのだけれど、聞いているうちに、「かしこまいりました」の方が正しいように思えてくる』ー『うふびたにさん』

    ホンの何行かの、日記の体裁の文章に毎回ぐうとなる。何か訴えるようなことが書いてある訳でもないし、深淵なテーマが語られる風でもない。その多くは眉唾な話ですらある(デスラーある、と変換されて顔が青くなりました)。もちろんこの東京日記が創作でない訳はない。だから、眉唾な話、当たり前。と思いながら(わざわざ自分自身に断りながら)読むのだけれど(野田蹴れど、と変換されて今度は顔が赤くなりました)、ここに書き付けられた言葉に、どうしても川上弘美の声を聞いてしまう。それだけなら、ぐうとなるようなことではないのだけれど、毎回ぐうとなるのは、眉唾な話が絶妙なオチにつながるからで、そのオチの向こう側にも薄らとぼけた川上弘美のすました顔を見てしまうからで、いやいや自分は騙されまいぞ、と別に騙されている訳でもないのに、いちいち自分自身に言い聞かせずにはおられない。なので、急にまっさおなブラジャーの話が出てきたりすると、へどもどしそうになりながら、いやいやこれこそ川上弘美マジックなのだから、騙されまいぞ、騙されまいぞ、とお経のように繰り返しつぶやく羽目におちいる。

    だいたいが、単行本になる前に、収録されている日記は毎月こつこつ読んでいる訳だから、今更へどもどすることもない筈なのだけれど、この薄らとぼけた川上弘美マジックは、読むものを妙に無防備にさせる作用があるのである。そして時々、ソリティア断ちの話のようなどきっとするようなことも語られたりするので、急に神妙な気分におちいったりもして、少し厄介なのである。

    断っておくけれど、自分は川上弘美のファンである。まあ、断っておく必要はどこにもないのだけれど、ファンだから川上弘美がヒロミイズモンキーだったことも知っているし、新婚旅行でマダガスカルに行き猛烈に英語でまくし立てられるくらい英語で会話ができることも知っている。なので外国でぎゅっと目をつぶってやり過ごす話の七割くらいは川上弘美のサービス精神なのだと割り引いて読んではいるのだが、やっぱり残りの三割くらいは本当のことなんだろうなとも同時に思ってしまうのだ。イグアナを頭に巻いた女の人の話を読みながら、そんなことあるわけないだろう、とツッコミをいれつつも、腕にカメレオンを止まらせて笑みを浮かべていた川上弘美の写真を思い出したりして、まあきっとそう見えたということなんだよね、と気持ちを整理したりしながら読んでいるのである。それなのに、イグアナの本名が「ゆき」だったなどと、あとがきに書いてあったりするので、ええっ、じゃあ本当にあった話だったの?、と再び訳が分からなくなる。

    ここに至って、つまりこの訳が分からなくなってしまう感じこそ、東京日記を読むことの最大の魅力なのだな、と気づく。というか、川上弘美を読むことの魅力なのだ、と。もちろんセンセイの鞄も好きだけれど、やっぱり自分は蛇を踏んだりクマと河原にいく話のような、川上弘美にしか書けないような話が好きなのだ。そしてそういう寓話的な話の根源に、世の中が少しいびつに見えてしまう川上弘美の視線を読み取ったりして、何故かへどもどしたりする。高校の一年先輩で、背が高く髪がまっすぐ腰くらいまで伸び、弓道部所属で凛々しく袴をはいていて、選挙管理委員会ではなんだかとても大人に見える発言をしていた人のことを思い出したりするのである。そういえば、体制とか教師側とかそんな物騒な言葉を覚えたりしながら、全体主義に対する忌みを覚え始めたのもあの頃だったな、と思い出したりするのである。

    だから、クマの話が再び少し違った形で出版されることに必要以上に動揺する時、やはりあの高校の古い建物の中でガリ版を切っては何枚も檄文のようなものを刷っては配ったりしたことと川上弘美のファンであることには、きちんと繋がりがあることなのだと自分自身を整理できたりして、妙な安堵を覚えたりする。ただ、あわあわとした文章を読んで、にへらにへらしている訳じゃないのだ、と自分自身を肯定できたりする。

    でも、川上弘美の左右の視力が随分と違うことを知り、川上弘美の、そして自分自身の、世の中を少し斜に構えて見てしまう癖は、ひょっとしたら同じ理由があってのことなのかな、なんて考えて、やはりへどもどするんですけれどもね。

  • ほんと面白い。なんでこんななんてことない日常をこうも面白おかしくかけるんだろう。そしてなんてことなくない非日常を過ごしているのだろう。
    わたしも普通でなかった日常の一コマをメモるくせつけようかしら。吉祥寺の三菱東京UFJで電話越しにニューヨークにいると言っている女性とか。あるなーと思うけど川上さんが文字にするとこんなにもふわふわとなるのか。デスソースのくだりもオチが素晴らしい。ほんとにこんな店あったのかな、と疑いたくなる、創作なのかな、と。
    隣の家の干してある布団にくっついたイグアナにアイドリングと名付けたり、イグアナ一家が引っ越しだと思ったらのちに近所でイグアナをマフラーのように首に巻きつけた婦人を見かけたり、前髪作ったらムーミンのノンノン言われて落ち込んだり、海外で白く大きなパンツを忘れ、まっさおなブラジャー。
    どうやらわたしの近所にお住まいみたいであってみたいなーと思う。イグアナとかその他もろもろに。

  • やっぱり好きです、川上さん。笑えるのに、切ない日常、生きるって、ほんと大変!

  • 川上弘美さんのエッセイ「東京日記4 不良になりました。」、2014.2発行。①加齢臭と古本の匂いは、同じ成分であると聞いて、びっくりする。(私もびっくりしましたw)②「人間を知れば知るほど犬を素晴らしいと思う」って、エリック・サティが言ってるよと、突然こどもに言われる。(私もそう思いますw)③こどもに、ピアスの穴を自慢する。こどもは、じいっと穴を見つめたあと、小さな声で「かあさん、不良になったんだ」と、つぶやいた。

  • 東日本大震災、引っ越し、入院、手術…。2010〜2013年は、ほんとうに、いろいろなことがありました。ぼやぼやと生きる日々の記録。『WEB平凡』連載を単行本化。

    ソリティアはその後どうしているんだろう?

  • くすくす笑いが相変わらずとまらない。
    「デスソース」と「すてきなにせもの」で爆笑。

    菅直人が出てきたあたりで予感はあったけれど、ちょうど東日本大震災の時期が含まれる。後半では著者自身の手術入院の話もさらっと出てくる。

    あたりまえだけど、毎日いろいろあるから、いつもぼんやりゆるりとした日記はあり得ないけれど、こんな形でまとめてくれたことにありがたく思った。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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