村上春樹の読みかた

制作 : 菅野 昭正 
  • 平凡社
3.30
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本棚登録 : 63
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835809

作品紹介・あらすじ

石原千秋、亀山郁夫、三浦雅士、藤井省三、加藤典洋、5人の講師陣と編者が村上ワールドの秘密に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • ある程度の数読んだから、手に取ってみた

    こういう「外から」見た意見を読むのは本人のエッセイ以外初めてだったので、共感するとこもあれば目から鱗のこと、何それ?って思うことがあったりして面白かった

    こんな深い読み方できるようになりたい

  • 読む上で他の同様のものと比較しながら選んだのだけど、面白かった。

    石原千秋氏。
    作家を論の枠組みから敢えて外す「テクスト論」からの読み。
    セックスと「僕って何」と「正しさ」の繋がりについて論じている。男性主導、家主導ではなくなった恋愛において、お互いが受け容れ合う行為にスポットが当てられてきた。
    受容がやがて、自分自身の存在意義にも繋がり、それが倫理観と対応して「正しいセックス」「正しくないセックス」に至るところが面白い。

    亀山郁夫氏。ロシア文学者。
    村上春樹の提示するモチーフから、読者の持つ記憶に入り込んでいく(井戸、イド)手法について言及している。

    三浦雅士氏。文芸評論家。
    『風の歌を聴け』の主人公「僕」の冷たさについて。
    自殺した彼女との時間経過、また指が4本のガールフレンドとの不自然な会話回避を論じている。

    生きている作家を扱うのは、やりにくいと思うのだけど、村上春樹の持つ普遍的な魅力に少し触れられたように思う。

  •  東京の世田谷文学館で昨年の秋に開催された連続講座の記録。5人の論者が村上春樹について語っている。そのうち、藤井省三と加藤典洋の二人が村上春樹と中国の関係に言及している。村上春樹は9月26日、尖閣諸島をめぐる問題について朝日新聞にコメントを寄せたばかりということもあって、いろいろ考えさせられた。
     藤井は、中国での村上春樹の受容のされ方について論じており、村上春樹は、中国絡みの作品に限って何度も書き換えを行っているという重要な指摘をしている。さらに、十数年前に台湾の新聞社のインタビューで「僕は神戸の人間で、中国人は僕にとってはたいへん自然なものでした。僕の父は戦争中に徴兵されて中国大陸に行きました。中国は僕の人生における重要な記号です」と語っていることも紹介されている。
     また、加藤典洋は、村上春樹の短編小説を徹底的に読み込むことから見えてくるものについて論じている。特に、村上春樹の短編小説第一作である『中国行きのスロウ・ボート』に注目している。ここでも村上春樹はアメリカの雑誌のインタビューを受けて、自分は中華料理を食べられないが、それは徴兵で中国に渡った父親の体験が影響している、と答えていることが紹介されている。また、『中国行きのスロウ・ボート』と同じモチーフが2004年の長編小説『アフターダーク』でも繰り返されていることも指摘している。その上で、加藤は「村上春樹は、中国に対して罪責感ないし良心の呵責ということを強く感じていた。村上春樹が、作家人生の最初の短編に、中国人とのすれ違いの思い出を書いたということは、日本(人)は中国に対していまなお謝るべきところをしっかり謝りきっていない、そのことが自分には耐えられないほど、苦しい、ということかもしれない」と、踏み込んだ発言をしている。
     今回の尖閣諸島問題についての「安酒に酔うことなく、魂の行き来する道筋を塞いではならない」という村上春樹のメッセージは、エルサレム講演などとは異なり、自らが手を挙げて発言した「寄稿」という形であるだけに、村上春樹本人にとって、止むに止まれぬ思いが込められていたことを痛感させられる。私たち日本人もこの言葉を噛みしめるとともに、村上春樹の思いが中国の人々にも届くことを祈りたい。

  • 作品ごとにまとめてくれたら読みやすかったのになと思う。結局何を伝えたいのかもわからなかった。

  • 2012年11月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    通常の配架場所: 2階開架
    請求記号: 910.268//I74

    【選書理由・おすすめコメント】
    「ノルウェイの森」を読んだことがありますが、理解できなかった部分をもっと研究したい。(経営学研究科1年)

  • フランス、中国文学者がそれぞれの国で春樹がどのように読まれているかを説明しているが、以下に世界中で愛読されているかがよく伝わる。、漱石の研究家による比較も面白いし、ロシア文学の亀山郁夫氏も現在嵌っているという。読み易い語り口と、ドストエフスキーにも比すべき深い哲学的テーマ、ヤナーチェックとマイケル・ジャクソンという言葉が暗号のよう春樹ワールドに引入れていくという説明もなぁるほど。また度々登場する謎かけのようなの意味、性的なことが多いがその深奥で意味するもの(例えば青豆の2つの乳房の大きさが違うなど)興味深い解説の数々でした。中国や韓国では「ノルウェイの森」、欧米では「羊をめぐる冒険」「ねじまき鳥クロニコル」が評価されるという違いに東洋の仏教的無常観の有無で説明しているところも、うなずけるところがあります。春樹がナイーブな中国に対する「しっかり謝っていない」という日本人としての罪悪感を漂わせており、それが中国に受け入れられているという説明も納得ですが、この日中関係の難しい時に中を取持つ重要な人物だと思います。

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】910.268||K【資料ID】91123493

  • 中国を中心にした「村上春樹の読まれ方」をこれまで読んだことがなかったので,その点はとても興味を持って読めた.

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