- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582768541
感想・レビュー・書評
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穂村弘さんの読書日記『図書館の外は嵐』(文藝春秋)で紹介されていて、気になったので読んでみました。
ブローティガンが1976年5月から1ヶ月半、日本に滞在しているあいだに日記のように書き綴った詩を集めた1冊。
詩、というよりも、Twitterのつぶやきのような、何気なくぽろっとこぼれた感じのものが多い印象。
パチンコに行ったり、バーに行ったり、女性とデートしたり…。
日本を楽しんでいる様子の節々に、言葉の通じない異国の地で一人過ごす寄る辺なさが感じられるのが、色っぽくもあるのです。
「カエルのいない日本」など、クスッと笑いたくなるようなものも。
最初はいくつかの詩を拾い読みしていたのですが、改めて「はじめに」から読んでみると印象が変わりました。
著者の叔父は、ミッドウェイ海戦で日本の落とした爆弾により負傷し、その後遺症がきっかけで若くして亡くなりました。
日本を憎む少年だった著者が、歳月とともに日本への関心を高め、ついに日本の地を踏むに至る。
その心の動きを追ったあとに読むと、彼が日本で本書に綴られたような時間を過ごせてよかったと、思わずにはいられないのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1976年に日本を訪れた際のブローティガンの詩による日記。第二次世界大戦で亡くなった叔父さんは、日本人に殺されたというショッキングな書き出し。そして、滞在中の日本女性への眼差し。不思議な感覚が残った。
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思潮社から出版されていた版ですでに読んでいたのだが、今回平凡社ライブラリーから再出版されたということで、購入。訳者によると、多少の手直しはしてあるとのこと。
僕は詩心というものを全くもっていないので、詩集なんて読んでもどう受け止めていいのか途方に暮れてしまうのだが、ブローティガンだけは別。
この詩集には、孤独や悲しみや疎外感がある。しかも今回はアメリカ人である彼が異国である日本に滞在中に書かれた詩なので、いつも以上にそのあたりが強く出ている。そしてそんな感情を、読者がそっと寄り添えるような雰囲気で提供してくれる。何気ない優しさがありユーモアがある。
改めて彼の経歴を読むと「ああ、そうか、49歳で自分の頭にピストルで穴を開けちゃったんだなぁ」とその若さに驚かされた。 -
初めて日本に滞在したブローティガンの日記のような詩であり詩のような日記。一瞬の情景、心の揺れがスナップ写真のように書き留められ心地良い。戦争下を少年として生きた頃の日本への思いが時を経て変化する様を衒いなくフラットに、どこまでも真摯に書き上げた序文は必読。素晴らしい。
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1976年の晩春、日本滞在中の詩のような日記のようなメモのような作品集。
旅行中の些細な日常を見つめたり、いろんな人を観察したり、孤独に浸ったり。
冒頭の「はじめに」に、どうやってブローティガンが日本にみちびかれていったのかが記されている。日本との戦争で叔父さんが亡くなってしまい、日本人をずっと憎んでいた少年は、歳月が流れ、日本の文化に触れて、しだいに日本に深い愛着の気持ちを持つようになる。行かなくてはならないと思うほどに。 -
静かでさらさらしたつぶやきのような詩。なんとなく寂しげな感じもする。
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【書誌情報】
『ブローティガン 東京日記』
原題:June 30th, June 30th. (Delacorte Press 1978)
著者:Richard Brautigan(1935-1984) 詩人、小説家。
訳者:福間 健二 (1949-) 詩人、映画監督。
シリーズ:平凡社ライブラリー;854
定価:1,430円(本体1,300円+税)
出版年月日:2017/04/10
ISBN:9784582768541
版型:B6変 208ページ
在庫:現在品切中
1976年5~6月、ブローティガンは1ヶ月半日本に滞在し、日記のように日々の思いや観察を詩に著した。平易な言葉の中に深いペーソスがあふれる最後の詩集、待望の再刊。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b281738.html
【簡易目次】
キティ・ホークのキモノ
ニワトリの声
日本の子どもたち
新宿の猫
ヒラリー急行
凧
日本人モデル
ロマンス
パチンコ・サムライ
日本
〔ほか〕 -
淋しいのわかる
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福間健二 訳
ブローディガン氏と、訳者・詩人である福間健二氏の言語感覚が、見事に調和しています。