美少年尽くし (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582768268

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  • 美少年尽くし - 平凡社
    https://www.heibonsha.co.jp/book/b193091.html

  • 昔の日本人は男色についてどのような価値観をもっていたのかが分かる本。男色を異常性愛者のように扱うのではなく、男色をひとつの嗜みとして扱っており、男同士の恋愛がどのように考えられていたのかが分かる。

    序盤では「男色と女色(異性愛)のどちらがよいか?」という議論を交わしていた記録を取り上げている。男同士なら妊娠の心配ないから心置きなく恋愛できるとか、男社会のルールに則ってお互いに恋愛できるとか、お釈迦様も男色を好んだから男同士の恋愛は高尚な嗜みなんだとか…etc

    男色文化だけでなく、江戸の人たちの性や恋愛などの価値観についても学べる。

    文体が語り口調で分かりやすかったおかげで、日本史に疎く、古典アレルギーのある自分でも飽きずに最後まで読むことができた。

    まさに「BLの原点はここにあり!」といった感じの本だった。

  • 1992年、雑誌「太陽」連載を元に書籍化、2015年に平凡社ライブラリーへ。
    最近読んだ三島由紀夫『仮面の告白』についての章を目次で見つけて手に取る。

    基本的には江戸時代の衆道(美少年への愛)を『田夫物語』『色物語』『男色大鑑』『葉隠』を中心に引用しながら紹介する。

    『田夫物語』『色物語』では男色派・女色派の論戦がメインとなる。筆者はその論点を女性との関係が生活や子などの「実用的」側面で語られるのに対して男色はお洒落さ、風流、あとは古より〜的な語られ方がされていることに注目、女性蔑視的な考え方に基づくと指摘する。
    井原西鶴『男色大鑑』では出家について、遊女と若衆に求められる性格の近似、そして切腹の美学の称揚が紹介され、それは『葉隠』で武士における殉死や男色における価値観と同様のもの、と理解できる。
    そして、それらの価値観を近代に通じさせる三島由紀夫の文学(本書後半の、三島論は、私にとってすごくストンときた)。女性嫌悪(蔑視でなく嫌悪)、そして「父」の拒否、「男だけの小宇宙」…

    記憶に残すために、最近の読書傾向について書いておくと、
    ①以前からの趣味趣向でゴシック文学と澁澤龍彦が好き→高原英理『ゴシックハート』を読んでいたら『仮面の告白』について言及
    ②ここ数年、読書家の知人とよく対話していたが、その糸口が三島由紀夫だった
    ①②→『仮面の告白』読む
    ③職場に江戸文学を大学時代やっていた方がいる
    ④私にBLを勧めてきた人がいたから「何か読むよ」と言っちゃった
    ③④→『男色大鑑』の武士篇を読む
    ①②③④が全部結びついて、かつ偶然この本を取るところ(ブックカフェにあった)まで至ったのだから、もう出逢うべくして出逢ったのだなぁ奇跡だなぁと思ってしまいました。

  • 2015-3-3

  • 江戸時代の同性愛は公然と行われていたらしく、そんなもんなのかとこの本を手にした。
    男共が遊女を求めるのと美少年を求めるのは方向性が同じである、という解説にはそうなのか、となんとなく納得できるのだが、『葉隠』とか三島由紀夫の世界になると、どうもそうでもないらしい。
    結局、筆者(女性)が何をいいたいのか、よくわからないままに読了。

  • 「田夫物語」「男色大鏡」「葉隠」といった江戸期の書物を題材に、男色がどのようにとらえられていたかを紹介している。わりと知られていることだけど、当時は男色に背徳性はなく、むしろ通人の風俗の一つだった。ミソジニーの裏返し的に、さっぱりとした同志愛的な同性愛が横行していた(少なくとも建て前上は。本当はもっとドロドロやエロ目的だけもあったのだろうけど)。
    でも、これっていまだに日本の男たちが、「男ってのは……、それに引き替え女ってやつは……」って言いたがるわけで、構造的には同じなんじゃないのと思う。それなのに同性愛は忌避されたり、(最近は緩やかになってきているが)異常視されたりする。現代の他の国・地域と比べても、日本って前述のような状態でありながら、妙に男同士が触れ合うのを避けたり、気持ち悪がったりするよね。何か江戸期の自由さに比べて、枷を自らはめているような気がしてしまう。

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著者プロフィール

1961年生まれ。同志社大学大学院社会学研究科教授。専門は比較文化史。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。国際日本文化研究センター客員助教授等をへて、現職。著書に『遊女の文化史(中公新書)』、『「色」と「愛」の比較文化史』(第20回サントリー学芸賞、第24回山崎賞、岩波書店)、『「女装と男装」の文化史』(講談社選書メチエ)、『明治〈美人〉論』(NHKブックス)、『美少年尽くし』(改訂版、平凡社ライブラリー)、『男の絆の比較文化史』(岩波書店)ほか。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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