男と女の台所

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582620627

感想・レビュー・書評

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  •  まずは、雰囲気のある、"表紙" "題名" に惹かれ、読後は、登場した人々に、大平一枝さんに魅了されていた。

    結婚五十四年の夫婦、
    路上生活夫婦の規則正しい日常、
    震災により揺れた夫婦仲、
    男性経営者の古民家台所、
    二十八歳彼が四十一歳彼女に作る豚の角煮、
    彼女と彼女の食卓、  等々。


     何通りもある、幸せのあり方を見せてくれる。
    それは、"正しく生きる"ことではない、と教えてくれた。
     その人オンリーの台所・ストーリー!
    素敵に見える他人のストーリーをチョイス・
    チェンジしなくていい。 それよりも、わたしのオリジナルストーリーを受け入れ、愛する方がいいのだ、と真摯な気持ちになれる。


    『男のプライドは厄介です』

    『あ、この人も弱いんだって気づきました。・・・夫婦って長く一緒にいるほど、この人はこうとわかった気になって決めつけてしまう。・・・でも本当にそうだろうかと考える必要がある。・・・』

    『私といたらこの人はだめになる。ふたりが互いに自分の足で立って歩いていくために、別れよう』

    『無理をしてまでやったことなど善意にはなりません。病後は、自分がハッピーでいられるためにはどうしたらいいだろうといちばんに考えるようになりました』

     筆が立つ、大平一枝さんの文章が沁みる。

    『見えづらくて、つかみづらい幸せというやつの手がかりを、十九の物語から見つけてほしい。』

    『互いの違いや、すべてを分かり合えることなどないと受け入れたら、夫婦の間に流れる風も変わる。全部わかったような気持ちになることのほうが怖いことなのかもしれない。』


    最後に素敵な夫婦の会話を!

    夫「きのう見た夢に虹が出てきてきれいだったよ」
    妻「それ、わたしも見たかったわ」
    夫「君も見たよ、その夢の中に君もいたもん」』

  • 料理や道具の話かと思ったら…騙された。人生の縮図の話で、良い意味で騙された✨ 素敵な本でした✨

  • 大平さんの描くエッセイは、その中に物語があって、ときに鼻の奥がツーンとなる。
    本人も気づかなかった感情を自然に口に出してしまうのは、大平さんの取材力によるものなんだろうな。

  • 男と女の台所。
    タイトルには「男と女」、そして「愛」をテーマに台所を描いたとある。内容は男女を超え、愛も情もないまぜの人間味に溢れている。そう、「キッチン」ではなく「台所」。
    この住まいの奥の院で交わされるすれ違い、痛み、癒し。それぞれの人生が筆者のていねいな聴き取りによって垣間見え、思わず自分も台所という日常すぎる場所がどうしてこんなに特別なのかと考えた。きっと五感をフル活用する場所だから、感情や思い出が生々しく想起されるんだと思う。

  • いろんな台所を使う人の日常インタビュー。
    台所にはたくさん物語があるのが分かる。そんなにいろんなことある?ってぐらいあるらしい。でもどの台所も丁寧に使われていて、とても絵になる。
    うちなんか普通の台所だと思うけど、話を聞いてもらったら物語が生まれるだろうか。

  • 今年1番読んでよかった本。台所が最もその家庭の生活スタイルがリアルに表れる場所。台所という舞台を通して、色んな夫婦や家族の形が垣間見れた。
    ひとつの話が長くなく、隙間時間にサクっと読めますが、1話1話ちゃんと気持ちが動かされるポイントがあって、満足感がありました。

  • P92
    女は、あちこち頭をぶつけ、ころんだり、起き上がったり、歩いたり、戻ったりしながら、だんだんお母さんになり、ようやくコツをつかみ、一人前の母になれたと思ったころには子どもが巣立っている。
    P102
    人は、ひとつ屋根の下にいても、どうしようもなくひとりぼっちを感じるときがある。心が寄り添っていないと、一緒にいても孤独なのだ。

  • 19のお家の台所の物語。
    ノンフィクションのインタビュー本、という仕様。
    そこには仲睦まじく暮らす夫婦もあれば、別れを決めた2人もいたり、誰かと別れた後に新たなパートナーを得た人もいる。
    台所という場所はその家の聖域のようなもので、なかなか他人に見せることはないし、他人の家のそれをじっくり見ることも何となく憚られる。
    主に使う人にとって使い勝手が良いように段々と出来上がっていくその場所では、日々欠かせない“食べる”ことに根差した活動がなされていて、家族と食べる食事にはたくさんの思い出が宿る。

    同性同士のカップルや、ホームレスの夫婦の台所(立派な台所でびっくり!)、従業員たちが集まる合宿所のような家を持つ男性経営者など、少し変化球の台所も紹介されていて興味深く読めた。
    人と人の関係、暮らす家、台所、ともに食べる料理。出逢いと別れ、そして再びの出逢い。そこにはたくさんのドラマがあって、悲しみや喜びや苦労を内包した時間が流れている。

    こういう本、好きだな、とシンプルに思った。ドキュメント72時間を観ているような感覚で読めて。
    私も昔よりは今の方がたくさん料理をするから、台所に対して日々「こうだったらいいな」という理想を思ったりするし、料理に対しても自分の得意が分かってきたように思う。
    そしてずっと食べてきた母の料理に対する思い出もあったりする。
    ほんの少しのことでも、その家の“奥の院”のドラマになるのだな、と思った。

  • 2023.02.17

    すらすらっと読めてしまった。
    台所を通した人生模様。いろいろな人間関係と人生の一部分が垣間見えて面白くてすぐ読み終えてしまった。当たり前だけどみんな自分とは全く価値観が違ってて面白い。

  • 男女の料理という一つの価値観を軸に、どう一緒に過ごしていくか
    相手を受け入れないといけないことを受け入れるところからだ。
    相手の価値観をすべて受け入れるというわけではない、理解し、受け入れ、ともに尊重し合いながら過ごしていく

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著者プロフィール

大平 一枝:作家、エッセイスト。長野県生まれ。大量生産、大量消費の社会からこぼれ落ちるもの・
こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビ
ニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』(誠
文堂新光社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)ほか。
「東京の台所2」(朝日新聞デジタル&w)、金曜エッセイ「あ、それ忘れてました(汗)」
(北欧、暮らしの道具店)、「令和・かぞくの肖像」(OIL MAGAZINE)など連載多数。


「2021年 『ただしい暮らし、なんてなかった。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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