瓶に入れた手紙 (文研じゅべにーる)

  • 文研出版
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784580823891

感想・レビュー・書評

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  • エルサレムに住む17歳の少女タルは、近所のカフェで起きた自爆テロに強いショックを受けたが周囲に気を遣わせないために、自分の気持ちを書くことにした。そしてそれを、パレスチナ側の人に読んでもらおうと思いつき、返信用のメールアドレスを書いた手紙を添えて瓶に入れ、ガザ地区で兵役についている兄のエイタンに、ガザの海に投げてもらうよう依頼した。2週間後、ガザマンと名乗る男性から辛辣で、これでさようならだというメールが届くが、タルは、その内容に厚意を読み取り、辛抱強くやり取りを呼びかける。やがてガザマンも自分の状況と気持ちを綴ったメールで送り、ふたりは、共通の出来事を異なった立場から見て、その想いに共感し始める。

    偶然から知り合ったふたりが、敵味方の枠を超え、思いを共有していく様子を、ふたりの交わすメールの内容で描いた物語。




    *******ここからはネタバレ*******

    ふたりが交わすメールの内容から、イスラエルの、身近でテロが起きる日常や、18歳で男女問わず兵役が課せられる環境、パレスチナの「天井のない監獄」と呼ばれる自由のない生活、双方の、お互いに平和を望みながらも実現できない状況等、時々目にするニュースだけでは想像の及ばない現実が伝わります。
    17歳と20歳の彼らが、会ったこともないのに互いに惹かれ合う様子は、まさに自分の内面の深いところを分かち合ったからなのでしょう。

    でも、なぜナイームは、カナダへ留学できると決まったときに、タルを「過去」と決めつけ、ふたりの関係も終わらせようとしたのでしょう?
    返事の書けないメールで、3年後の日付と場所を指定しても、行けなかったらどうやって連絡するの? ← 私がロマンチックじゃなさ過ぎ???

    エイタンは、なぜ信頼できる人に手紙を拾ってもらうために、瓶を埋めたのでしょう?毎日見に行っても、自分がいないときに拾われるとか、自分の気に食わない人が持っていってしまっても止められないとか、考えなかったのでしょうか?

    17歳のタルの口調が少し幼いように感じますが、これはきっと訳者の判断でしょうか?彼女が温かい家庭で過ごしたため?ガザマンから「憎しみの海に浮かぶ希望」と呼ばれるため?

    読み始めてすぐ、表紙絵から受けるイメージと物語の内容が異なることに気づきました。この表紙絵の男女は、私には大人のように見えるから。


    「オスロ合意」とか「ラビン首相の暗殺」とか「インティファーダ」とか、歴史的事実の理解が必要だし、酷くはないけれどテロの描写もある。中学生以上からの読書をオススメします。

  • エルサレムに住むユダヤ教徒のタルとガザ地区に住むイスラム教徒のナイーム。
    敵対しているイスラエルとパレスチナの二人がメールのやり取りを通してお互いの事を知っていく物語。
    パレスチナ、イスラエル問題は、過去からの問題が複雑に絡み合ってて解りにくい。だからこそ、こんな本が若い子向けにあることが嬉しい。戦争も紛争も問題が大きすぎて漠然として掴みきれないけど、物語は個人に目を向け人と人との繋がりで描かれるから、そこからなら近づける、寄り添える気がする。

    最後、ナムールがカナダに行く事で希望を描いている。年表を見ると2004年以降、パレスチナは大変な状態になっているから、現実はもっと厳しいのだろう。
    その結末をストーリーの甘さとみる向きもあるけれど、希望で終わる児童文学は必要だと思う。

    このあと、イスラエルがパレスチナを一方的に侵略するようになって行く中で、タルは何を思うだろうと考えてしまった。

  • 戦争、テロが当たり前の日常を少し身近に感じるかもしれない。物語。
    やや難しいので、中学.高校向けか。

    関連書に「はるかなるアフガニスタン」「アハメドくんのいのちのリレー」
    「生きのびるために」
    「なぜあらそうの?」
    「中学生から知りたいウクライナのこと」

  • ヴァレリー・ゼナッティのアトリエ|アンスティチュ・フランセ関西
    https://www.institutfrancais.jp/kansai/agenda/zenattiatelier/

    ヴァレリー・ゼナッティを迎えて|アンスティチュ・フランセ関西
    https://www.institutfrancais.jp/kansai/agenda/zenattigaidai2/

    瓶に入れた手紙 | 文研出版 - 新興出版社啓林館
    https://shinko-bunken.shinko-keirin.co.jp/bunken/book/9784580823891/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      “戦争の中にいる一人ひとりと、その暮らしを考える”トークイベント | 教文館ナルニア国(2024年3月22日)
      https://x.gd/N...
      “戦争の中にいる一人ひとりと、その暮らしを考える”トークイベント | 教文館ナルニア国(2024年3月22日)
      https://x.gd/Nx1d4
      2024/03/11
  • #中高生

  • 「イスラエルに暮らす少女、タル。ある日、彼女の家の近くで、パレスチナ人による自爆テロが起こる。これをきっかけに、タルは、「憎しみ」ではなく「希望」を見出すため、あふれる思いをしたためて、パレスチナ人に送ろうと考えた。ガザの海で、瓶に入ったその手紙を受け取ったのは…。」

  •  イスラエルに住む少女タルは、パレスチナ自治区のガザに住む見知らぬ誰かに宛てた手紙を瓶に入れ、兵士である兄に託した。
     瓶入りの手紙は、ガザで少年に拾われた。それから二人の間でメールのやり取りが始まったが、最初はガザの少年がタルをバカにした内容からだった。それでもタルは嬉しかった。

     敵同士である互いの立場に複雑な思いをはせる二人が、言葉を紡ぐことで理解し合えるようになっていく。

  • 2003年エルサレムに住む少女タムは、自爆テロが続く日々に恐怖を感じていた。一方で、ガザに住むパレスチナの人々と分かり合いたいとも思っていた。そこで、兵役でガザへ行く兄にメールのアドレスを書いた手紙を詰めた瓶を海に投げてほしいと頼む。はたして、ガザの海辺で瓶を拾ったパレスチナの青年からメールが届いた…。

    イスラエルとパレスチナ、歴史の教科書やニュースの中でしか知らない世界。そこで生きる若者を主人公に語らせているのだが、なかなか難しい。簡単に共感できる状況ではない。中高生を対象としていると思うのだが、日本の中高生はどう思うのか。
    訳者のあとがきや年表があるのは理解の助けになっている。

  • イスラエルとパレスチナ。
    紛争のニュースしか入ってこないので、想像するのも難しいが、ここで生まれ育つ子供たちもいるのだ。
    生まれたときから紛争。生活に政治が関与しないことはなく、家族の喜びも悲しみも、国のトップの判断に大きく左右される。
    この本は作り話だけれど、両国の若者たちの思いに触れることができた。

  • 世界にはさまざまに厳しいところで生きている人たちがいる。
    これはイスラエルとパレスチナの話。
    若い人たちが手をつなげば、もちろんフィクションではあるけれど
    希望はあるんじゃないかと。
    夢を持ち続けようと。
    きちんとした年表と地図が載っていてよかった。

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