- Amazon.co.jp ・本 (97ページ)
- / ISBN・EAN: 9784579303403
感想・レビュー・書評
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世界を旅している恋人から、こんな素敵な手紙が届いたら…ため息
「行く先々でぼくは景色や人々の中にきみのおもかげを見るだろう。きみはぼくの経由した自画像をたくさん受けとるだろう。旅をしているのが自分であり、見られている景色が自分であり、この星全体が自分なのだと知るだろう」
旅に出たくなる。
旅先から誰かを思って手紙を書きたくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2012.04.06読了)(拝借)
東日本大震災関連の本を次々と読んでいて、ちょっと息抜きに文章の少ない本を選んでみました。
ものすごく精密に描かれた絵のようなエルンスト・ハースの写真に池澤夏樹がその写真から思い浮かべた物語を旅先から恋人に宛てた手紙という形式で添えている。
2頁の見開きのカラー写真があり、次の見開き2頁に池澤夏樹の物語が続く。
辻邦生にも似た作品がある。辻さんの場合は、写真じゃなくて、絵画だったけど。
この本を読んでいて、地球上には、こんな風景もあるんだと嬉しくなりました。どこの風景なのかはわかりませんが、実際行ってみることができなくても、写真で十分豊かな気になれそうです。
【目次】
最初の手紙
朝焼けコレクター
花を踏まない馬
風景を洗う
向こう側へ行く人たち
魔法使いの家
考えが走る
ゆっくりと飛ぶ鳥
蛍の木
夜間飛行
フラミンゴたち
心のガラス窓
パピルス
宝を探す人々
海から逃げる光
大事なものは空に
丘の上の家に住む日
あふれ出した鳥
最後の馬車
長い長い物語
雪迎え
神様の本当の名
ワンピースの化石
●花を踏まない馬
花があまり綺麗だから、馬はそれを踏むのが嫌で、足を地面につけないように歩いている。そんなことができる馬のことをぼくはすごく尊敬した。
●風景を洗う
降った雨が川になって、滝になって、風景全体を洗う。みずみずしい木々の緑が日の光を受けてキラキラ輝くように埃を洗い流す。そのおかげで地球は太陽系でいちばん清潔な星でいられるんだから、雨の日を嫌ってはいけない。
●宝を探す人々
金かとか宝石とか、そういう宝じゃないんだ。昔々の予言者の呪文を書いた文書で、その言葉をとなえると誰でもすぐに幸福になれるって言うんだけど、信じられるかい?
●最後の馬車
ぼくは出発する方だったから、残される側にいたきみの気持はわからない。なるべき早く帰るからときみに言って旅立った。それだって、辛かった。見送るのはもっと辛いよね。丘の向こうへ行ってしまう馬車を見送っているって、世界でいちばん寂しいことだ。
●神様の本当の名
彼らは、人間が幸福でないのは、神様の本当の名を知らないからだと信じている。それさえわかれば、世界全体がすっかり幸福になるんだって。
☆池澤夏樹の本(既読)
「タマリンドの木」池澤夏樹著、文芸春秋、1991.09.25
「メランコリア」池澤夏樹著・阿部真理子絵、光琳社出版、1998.12.10
「イラクの小さな橋を渡って」池澤夏樹著・本橋成一写真、光文社、2003.01.25
「春を恨んだりはしない」池澤夏樹著、中央公論新社、2011.09.11
(2012年4月6日・記) -
愛する人へ、旅先から手紙を送る。こんな旅がしてみたかったな。
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素敵です
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旅立ちからはじまり、旅先を想像させる美しい景色の写真に合わせて、遠く離れた場所から愛しい人に手紙を送る。詩のようにもエッセイのようにも読める。言明されているわけではないが、どことなく実体験にフィクションを交えたような印象を受けた。綺麗な写真と言葉に触れて、心の疲れがとれてゆく。とくに「心のガラス窓」がじんわりと胸に響いた。旅へ出たきりにならず、ちゃんと待つ人のもとへ帰ろうとしているところも好き。
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世界中を旅する主人公が愛おしい人へ宛てた手紙が写真と共に綴られている。文章は全て心に残るものばかり。写真はそれぞれの手紙の内容を具現化するものになっていて、想像しながら写真を見るのも面白い。
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感性が足りないのか、良さがよく分からなかった。。。
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「きみ」に宛てた手紙と写真で構成されている本。
写真に触発されて書かれるイメージは面白いのだけど、ちょっと「きみ」に対して身勝手さが強く感じられてしまったなぁ…。